【感想・ネタバレ】ジェンダー格差 実証経済学は何を語るかのレビュー

あらすじ

歴史・文化・社会的に形成される男女の差異=ジェンダー。その差別には近年批判が強く集まる。本書は、実証経済学の成果から就業、教育、歴史、結婚、出産など様々な事柄を取り上げ、格差による影響、解消後の可能性について、国際的視点から描く。議員の女性枠導入=クォータ制が、質の低下より無能な男性議員排除に繫がる、女性への規範が弱い国ほど高学歴女性が出産するなどエビデンスを提示。旧来の慣習や制度を問う。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

ジェンダーとは、社会文化的に意味づけされた性別、名物学的な性別はセックス。
ジェンダー格差を測る指標=世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数。日本は146国中125位。東アジアの中でも最下位。
OECD諸国のうち、4大卒以上の割合が女性より男性が高い国は日本だけ。他の国は、女性のほうが高い。STEM分野(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マス)は特に男性が高い。
政治と経済の分野でさらに順位が低い。

格差があることを好都合と思っている女性もいる。専業主婦は奢侈財で根強い人気がある。

国連開発計画のジェンダー不平等指数だと170か国中22位。

インド農村で、女性の賃金上昇があったため働く女性が増えた。その結果、家事の担い手が女の子に写って教育が減った=将来の男女差を生む原因になる。
賃金上昇は不平等解消の結果、原因ではない。相関関係はあるが因果関係はない。
ランダム化比較試験は人為的に起こすのは倫理的に難しい。外部の要因でおきた区別を利用する。
RCTの限界=倫理的に許されない場合と、介入の内容が小さなことに限られる場合。

女性の労働参加と経済成長貧困削減には正の関係があるが、因果関係とは限らない。経済が発展すると女性の労働参加が増える。
男性は力仕事に比較優位、女性は頭脳労働に比較優位がある。比較優位の言葉を誤用しないこと。
経済が成長すると、頭脳労働が成長する。教育の収益性が高いため女性の教育水準が高くなる。
インドの低カーストでは、しがらみがないため女性のほうがオペレーターなどの新しい職業に就きやすい。その結果女性のほうが教育水準が高くなった。少なくともカースト下位の中では、比較的高賃金。

家電の価格が安くなる(普及する)と女性の労働参加が増える。因果関係があるとは限らない。家庭の豊かさや先進性が第三因子である可能性がある。単に経済の発展に伴って同時に起こっていることかもしれない。
水インフラの発展が女性の労働参加を促したか。これもエビデンスはない。DID(差分の差分法)による分析。

所得と女性の労働参加率はU字構造。所得が高くなると、家庭にいられるようになり、そのうち代替効果から、働くほうが有利になる。日本の高度成長時代に専業主婦が家庭を支えたのと同じ構造。
女性が男性なみに働くとGDPが7%増加するという試算がある。

STEM分野のほうが、給料が高い=女性が就きにくい職業。
衝立を立てて、オーケストラのオーディションをすると、女性の採用が増えた。

クォーター制は政治家では130カ国以上で法的に定めている。ノルウェーでは、経営陣の40%を義務づけた。
有能でない男性議員の排除に繋がる。
女性村長のもとで育つと、抵抗がなくなる=ロールモデル。
リケジョ、イクメン、という言葉が存在することがステレオタイプがある証拠。

アメリカの結婚退職制度の廃止は、公民権法1964年まで待たなければならなかった。アイルランドでも1973年に禁止されるまで存続していた。
先進国では、大卒女性ほど結婚して子どもを産む。離婚しても元の職場に戻れる環境がある。
夫よりも妻が稼ぐようになると、自主的に労働を抑制する。または離婚率が上がる。

結婚持参金(ダウリー)と婚資。
ダウリーは、生計費の持参というよりも、生前贈与の性格もある。インドでは男性の性比が高い。ダウリーの高騰もある。中絶を勧める産婦人科医の広告もある。
ダウリーは禁止されているが実態はある。相続権の補償や就業機会の創出、労働参加などが揃わないと禁止は女性に不利になる。

婚資は離婚への障害、人身売買に近いとして批判がある。が婚資が女性の教育水準を引き上げる=教育を与えれば結婚市場での価値が上がる。アメリカでも1970年代まで、女性の教育は就業のためではなく結婚のためだった。

ピルの合法化は、女性の教育水準を引き上げる。大学進学率が上がり格差是正にもなる。
中絶の合法化で黒人女性の進学率が上がった。犯罪率が下がった。

一夫多妻制のほうが、女性同士の競争があるため多産になる。アフリカの出生率が下がらない原因。子どものコントロールが男性側にある場合は、出生率は低下するはず。
男性が好まれる地域では、教育が高い女性ほど男性の性比が高い=出生前診断で女の子を避ける。
HIVは教育水準が低い方が感染率が高い。

育児休業は女性の負担を減らすか。
男性が育児休業を利用してキャリアを伸ばす、資格を取るなどの例があって、ジェンダー格差の解消には繋がらない例がある。

母になることによる賃金ペナルティー=4%ほどだが、教育水準が低いほど大きい。
三歳児神話は否定されている。

男女間の所得格差は、学歴、キャリアの中断、差別から生まれている。
すでに先進国では学歴の差はない(女性の方が高い)。
セクハラで、賃金水準が下がった職場に移ることがある。男性が多い職場の方が賃金が高いが、セクハラに遭うとそれを避けるため賃金水準が下がる。
通勤時間と賃金の代替水準が、じょせいのほうが低い。
自己評価が低く、賃金の交渉をしない。

0
2023年11月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

実証研究のエビデンスをふまえないと、良かれとおもってやった政策が思ってもみないマイナスの効果を生み出すというのは勉強になりました。
ジェンダー規範が女性のエンパワーメントを阻む要因になってるというのが、著書の主張のひとつかな?幸せ=エンパワーメント?人が輝いているのはエンパワーメントを行使しているとき?それだけではないかもとおもったり。専業主婦願望というネガティブなニュアンスをつかったりも。

女性の労働参加が少子化にはつながるわけでも無さそうというのも勉強になった。北欧の統計の例など。

0
2024年12月13日

「社会・政治」ランキング