あらすじ
「正しい原稿の持ち込み方」「内容三分割の法則」「二足の草鞋の履き方」…出版社が食いつく書き方・見せ方・全部教えます! はみ出し銀行マンが体験をもとに綴る作家デビューの方法。こんなことまで書いたんですか!?…担当編集者、困惑の怪作。
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Posted by ブクログ
「はみ出し」シリーズで有名な横田濱夫さん。この本は何故「はみ出し」シリーズを出すことになったのか、またどれだけ素人が本を出版することが大変で、それをクリアするのにはどうすればいいのか、横田さんの本質に近づける大変良著なのだ。
まず、横田さんは不良債権になることが分かってたのに、融資を実行した支店長に反抗して左遷され、閑職に追いやられた。彼は時間が有り余ることもあってか、暴露本の執筆を思い立つ。
原稿は書き上げ、30社くらいにいきなり郵便で送ったのだ。もちろん、何のリアクションもなし。たまりかねた横田さん、出版社に電話する。すると電話口で「ウチは依頼した方しか原稿は受け付けておりません。文学賞に応募してください」と冷たく言われたそう。
暴露本の出版社からも断られ、最終的に横田さんは「コネがないと無理かも」と思いつき、大学時代のゼミの同級生に頼む。彼はいわゆる取次という出版社と書店の中間の会社で働いていたのだ。
「俺本出したいんだけど、どこにも断られちゃってさ~困ってるんだよ」といきなり電話をかけたにも関わらず、彼は「面白そうじゃん。俺が出版社を当たってやるよ」とのポジティブな回答が返ってきた。
しかし、それからが長かった。半年以上音沙汰無し。横田さんも半分諦めていたところ、とつぜん彼から「おいっ、あの原稿出してくれる出版社見つかったぞ」という電話があった。
原因は、その二週間前、富士銀行(現・みずほ銀行)の暴露本を上記とは異なる出版社が出したところ、好評で重版が追いつかなかったそうだ。つまり二匹目のドジョウという構図だ。
知っている人は知っているだろうが、「はみ出し」シリーズはベストセラー。大野も読んだが腹がよじれるほど笑った。「港の見える丘銀行(注:横浜銀行の事を著書ではこう表現していた)スゲーぜ」って。大野は当時、銀行員一年目だった。
しかし銀行側も黙っていない。姑息な仕返しをしたのだ。再び左遷。即ち「事務管理部 公営資金課」に回される。この仕事は競輪競馬場で現金を回収したり、運んだりする仕事だが、仕事内容が死ぬほどキツイ。
一袋20キロもある、現金の詰まった麻袋を一日何百枚と担いで運ぶ仕事だった。同僚は職安から派遣された、日雇い労働者。おまけにレースは週末にあるから、休みは不規則。横田さん失職を余儀なくされたそうだ。
そこから横田さんの文筆業が始まるのだが、現在、彼は元エース銀行員という性質も手伝ってか印税で得た資金で投資家になり悠々自適の生活を送っているとのことだ。そんな横田さんから、本を出版する時のアドバイスを抽出する。
まず一番いいのが誰かに紹介してもらうことだそうだ。それも出来るだけ編集部の人間を直接知ってる人に頼むことという。
そんなコネがない人は、「当たって砕けろ」で出版社に電話をかけまくるしかない。それもやり方があるそうだ。まず簡単に名字だけ「○○と申しますが」という。交換のおねえちゃんから「どちらの○○様でしょうか?」と聞かれたら「フリーの○○です」と業界関係者と思わせることだそうだ。
その次に「それじゃ、原稿を送ってくれ」と言われても絶対郵送はダメだそうだ。そこは「それでは直接お持ちいたしますので」と切り返さないといけない。でも会ってくれるのは二十件に一件ぐらいなんだそう。
完成した原稿には必ず「梗概」を添えなければならない。「梗概」とは、簡単に言うと「要約」のこと。これはあらすじを四百字詰め用紙一枚にまとめたものなのだ。これは文学賞とかでも必ず提出が求められているものだそう。なぜなら基本的に相手は原稿なんか読みたくないから、それを覆すのにはマストだそうだ。また腕のいい編集者だと、この梗概を見ただけで大体の作者の才能が分かるとのことだ。
エッセイやビジネスものだったら、もう一つテクニックがある。仮に一冊分原稿ができたとしても、最初は五十枚とか百枚とか、最初は軽めの分量を出す。
すると向こうも「ま、このくらいの分量なら読んでやってもいいか。。。」となる可能性も高まるとのことだ。
と、ここまで書いたが本書は、本を出版するノウハウが横田さんの実証例をもとに書かれている。本を出版したい方は是非読んでほしい。あ、言っとくけど銀行員の方「倍返しだ」といって暴露本なんて書いたら、則失職ですよ。