あらすじ
形はどこにあるのか、色は何でできているか、虫を拡大すると世界はどうなるのか、生物多様性とはなにか。
ただ面白いから一日中、虫を見ているだけ。
そうしているうちに、なにかがわかってしまう。
物事にすべて理由があるとは限らないのである――。
長年、虫と自然に教わってきた世界の見方を明解に楽しく語る養老孟司流の生きるヒント。
虫に憑りつかれた面々が虫好きの楽園・ラオスに集った命がけの採集記も収録。
文庫版オリジナルエッセイ付き。
『虫の虫』(廣済堂出版)を改題・再編集のうえ文庫化。
■目次
1 虫を見る
見ること/形はどこにあるか(一)/形はどこにあるか(二)/色を見る/虫の色/虫の大きさ/
拡大する/区別して分類する/五感と虫/虫を見てなにがわかるか(一)/虫を見てなにがわかるか(ニ)/それでも虫なのだ
2 ラオスで虫採り
タライいっぱいの虫/虫採りに抵抗のない国/懐かしい風景/似ているのに違う/二次林だという思い込み/
クチブトゾウムシはどこにいるか/行ってみなけりゃわからない/二〇〇八年春、シェンクワンへ/蛍光灯破損事件/
テングアゲハの聖地/チョウを呼ぶ色/ラオスヒノキ方式/原生林は虫が少ない/シダにつくクチブトゾウムシ/
瞬間移動する蝶人/虫屋とラオスに適応/いてはいけないチョウがいた/ヤシの実から出てきたゾウムシ/爺さんの災難/
ネジレバナという変な虫/完全変態の謎/一つの原理では説明できない/またもや新種発見/広がるトウモロコシ畑/
ラオスには研究拠点が必要/アシナガバチの攻撃/第三の事件
文庫版エッセイ:人が生きる理由とは
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
養老孟司のこういうところが好きだなーと改めて思った。彼の思考も言動も共感できるし尊敬する一方で、子供みたいで微笑ましくもあるところがなんとも言えず人間として魅力的な方だと思う。
いわゆる科学者である先生が、理屈ではないんだ、と言っていることに安心感を覚える。コスパやタイパを追い求める世の中への違和感や嫌悪感を抱えている自分のような人は多分大勢いると思うが、そういう人々に養老先生のような姿勢や思考は支持され歓迎されるだろう。
Posted by ブクログ
アシナガバチに刺された養老先生の横で、アシナガバチの巣から、ハチノコを食べるラオスの人。日本人から見ると奇異に映るが、ラオスの人にとっては、それが日常なのだろう。
Posted by ブクログ
虫好きで有名な養老さんのエッセイ。語り口から人柄が伝わってくる。そもそも虫に対峙したいのに、その時間を奪って執筆させることへの反感が微笑ましい。豊富な写真が収められていて、虫の不思議さやイメージを補ってくれる。虫好きの同好の士とのラオスでの採集の旅は現場を彷彿とさせる。藪から棒、ではないが、虫探しで藪をたたき、アシナガバチに刺された事件も、災難ではあるが、現地の人が巣の中にいる子を食べてしまうくだりには呆気に取られ、驚かされてしまう。現代は、何事にも理由を求めがちだが、理由がないものやその行為に価値観を与える考え方に、養老さんらしさがよく出ている。