あらすじ
戦争を冷徹な目で見つめた梅崎春生の出世作。
「ねえ、死ぬのね。どうやって死ぬの。よう。教えてよ。どんな死に方をするの」
米軍上陸が迫るなか、桜島の海軍通信基地に異動になった村上兵曹は、一夜をともにした女性に、そう詰められる。しかし、どういう死に方をすればいいのか、そのときになってみなければわからない。ただ、死が目前に迫っていることをひしひしと感じるだけだった。
生きることへの執着と諦観、どうせなら美しく死にたいという願望と、それはかなわないだろうという無力感……。背反する思いを抱えたまま散歩に出た村上に、グラマンの銃弾が降り注ぐ――。
出世作「桜島」に、戦地で自死同然に亡くなった弟の足跡を、双子の兄たちがたどっていく芸術選奨作「狂い凧」を併録。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「殺されること」って本来言葉にできない怖さがあるじゃない?でも平和な日本の私にはその怖さがわかるようでわからない。その怖さをわかってるふりしてもそれでもとても軽いんだ「殺される」ってことのイメージが。
戦争知らない世代が読んだらどれくらいこの怖さが伝わるだろうか?そう考えた時にこの長くない「桜島」はとてもよかった。じわじわと怖い。これか…的な。
戦争なんて人が壊れるだけで何も生まれないものまず基本だと改めて。
それから本書の描写の数々に自分をただ生かす(心を保ち生きる)だけでもこれほどまでに過酷かと忌々しくおもうリアリティある精神の1冊。