【感想・ネタバレ】アフリカ史のレビュー

あらすじ

様々な学問分野を自由に越境し、「知ることの楽しさ」を生涯発信し続けた<知の道化師>、山口昌男。その学問の真髄とも言える「アフリカ」研究を、丸ごと1冊・通史に編纂。思いがけなくも豊かなアフリカの相貌、実験的とも言える日本との対比、自身が描いたスケッチや、貴重すぎる図版を193点も掲載! 彼の地で暮らし、深い人脈を得た泰斗だからこそ書けた本作は、参考文献すらただの文字情報に終わらない、圧巻の充実ぶり。没後10年。今こそ、目からウロコのアフリカ通史を、吟味する!


*本書は、『世界の歴史 第6巻 黒い大陸の栄光と悲惨』(講談社 1977年)を改題したものです。

目次
はじめに 人類史とアフリカ

1 アフリカの古代世界
1)アフリカにおける人類の起源
2)アフリカの古代的世界
3)黎明の輝き・
4)サヴァンナの帝国
5)東アフリカの王国
6)アフリカの王権文化――そのパラダイム

2 大発見の神話学
1)プレスター- ジョンの王国を求めて
2)アフリカの「黄金伝説」――ジンバブウェ遺跡とモノモタパ
3)探険ラッシュの世紀

3 伝統国家の栄光
1)草原の覇者たち
2)古都の盛衰
3)奴隷の故郷
4)アフリカと奴隷貿易

4 東海岸――交易都市の繁栄
1)世界へ開かれたアフリカ
2)制海権をめぐる争い

5 南アフリカのナポレオンたち
1)南アフリカの原住民たち
2) 南アフリカの清教徒たち
3)シャカ王のズールーランド
4)スワジ王国
5)バストランドのモシェシュ王
6)ムジリカジのンデベレ

6 ヨーロッパによる仮死
1)ヨーロッパ列強のアフリカ分割
2)開拓者たちの運命
3)アフリカ侵略の二つの型
4)セネガルーー仏領アフリカの優等生
5)最後の抵抗者サモリ= トゥレ

7 再生への胎動
1)マフディー運動
2)キリスト教的反抗

8 試行錯誤の現代史
1)両大戦間のアフリカ
2)エティオピアの反抗
3)第二次大戦後のアフリカ
4)コンゴ動乱
5)ナイジェリアの内戦
6)アンゴラの独立と内戦

おわりに
参考文献
年 表
図版参考資料一覧
索 引
解説 今福龍太

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

紀元前から1970年くらいまでのアフリカ通史。地中海に面する北アフリカは文化の流れが違うので、この本ではあまり触れられない。ヨーロッパから見たアフリカの歴史ではなく、民族に伝わる神話などから伝わる歴史。地名や民族の名前や人名なんかも耳馴染みがなくて読んでて楽しい。

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2025年10月30日

Posted by ブクログ

 あの山口さんが、歴史シリーズの一冊として ”アフリカの歴史に関する本” を書いていたとは全く知らなかった。元版刊行は1977年なので50年近く前のこと。今でも日本ではアフリカ史に関する本はあまり刊行されていないが、この当時ではなおさらだっただろう。
 著者は、「はじめに」でアフリカの歴史について次のように言う。「アフリカの歴史は、かりに、それがユニークな位置を、人類史の中で持つことができるとしたら、アニムスで固められた、他の諸大陸の文明史に対して、アニマの位置、つまり深層の歴史を垣間みせるところにある。いわば、論理とか、実証とか理性とか、機械的時間で固めて、人間の意識の真の土壌から切り離された精神が、病み疲弊したときに、これに安らぎの闇と恢復のための活力の源泉を提供する「母」の働きをけっして失っていない」
 こうした思想的背景を持って著者はアフリカの歴史を綴る。編年体の叙述方法が取られてはいるが、無批判にヨーロッパスタイルをアフリカの歴史に当て嵌めているのではないと言う。それが本書においてどの程度成功しているのか評価するだけの能力はないが、与えられた個々の条件の中で、アフリカの人々が何を成し遂げてきたかにスポットライトを当てた叙述がされていることは理解できたように思う。

 そして一口にアフリカと言っても、その地理的条件によって土地土地が隔絶されているため、それぞれ独自の歴史を歩んできたことが良く分かった。

 本書では、エジプト、アルジェリア等の地中海アフリカの諸国はほとんど取り上げられておらず、ナイジェリア、ベニン、ダホメ等のギニア湾沿岸に繁栄した国々や、南アフリカの原住民国家、そこに入り混んできたブーア人やイギリスとの関係などが比較的詳しく述べられていて、非常に興味深く読めた。

 なじみの少ないアフリカであり、王国名や地名、人名など固有名詞は初見のものがほとんどだったが、地図や絵、写真など豊富な図版が掲載されていて、理解を助けてもらえるのはありがたい。


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2023年10月02日

Posted by ブクログ

アフリカは暗黒大陸で近年まで未開のエリアというようなイメージを描きがちではあるが、ヨーロッパやアジア諸国同様、いろんな王国、帝国が興亡を繰り返し、地域独特の文化を育んできたことがわかる本である。

黒人奴隷というのも、単純にヨーロッパ敵国がアフリカの人々を浚って行ったのではなく、アフリカの列強が商品として奴隷を輸出していたと言う事もよく判る。

著者独特の語り口で読み物として面白い本だが、たんなる読み物ではなく、著者自身が描いたスケッチや詳細な図版が随所に挿入されており、本格的な歴史書になっている。フィールドワークで何度も現地を踏査している文化人類学者だから書けたものであろう。
また、ヨーロッパ史観で、文字に残された資料で歴史を見るのではなく、フィールドワークを積み重ねて構築する文化人類学のアプローチで描かれねばならない歴史があることも本書は教えてくれる。

著者没後10年で、原著は1977年に発刊されたものだそうだが、未だにアフリカの歴史を扱った書籍はあまりないので、その価値は未だに色あせないだろう。

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2023年08月19日

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