あらすじ
ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』の出版者として名高いパリのオデオン街の小さな書店の女主人・シルヴィア・ビーチが綴る20世紀文学の舞台裏。
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Posted by ブクログ
シルヴィア・ビーチ(1887-1962)の回想録。アメリカで生まれ育つ。牧師だった父親のパリ赴任に同行、この時14歳。第一次世界大戦直後、パリに英米文学の専門書店Shakespeare and Companyをオープン。そこに在パリの作家や評論家が集まった。もし彼女とその書店がパリになかったなら、英米文学の風景もいまとはかなり違ったものになっていただろう。
エズラ・パウンド、シャーウッド・アンダーソン、スコット・フィッツジェラルド、ヘンリー・ミラー、T.S.エリオット……なかでも、ジェイムス・ジョイスとヘミングウェイは特別だった。ジョイスの『ユリシーズ』は彼女のこの書店から出版された。作家修行時代のヘミングウェイの活動拠点はここだった(see『移動祝祭日』)。それに、ジョイスとヴァレリー・ラルボーが懇意になったのも、この書店でだった。
この一冊で、1世紀前のパリ、しかも租界のような一角(英語をしゃべる連中の界隈)にタイム・トリップ。まさに映画『ミッドナイト・イン・パリ』のそれ。登場人物も半分が重なっている。
原著は1959年、邦訳は1974年刊。2023年、河出文庫で復刊。訳者の中山末喜(1933-1982)はジョイスが専門。外務省職員として在パリ経験がある。