あらすじ
それは、鉤爪や翼や魂が再びそなわった者たちの物語
奇病が流行った。ある者は角を失くし、ある者は翼を失くし、ある者は鉤爪を失くし、ある者は尾を失くし、ある者は鱗を失くし、ある者は毛皮を失くし、ある者は魂を失くした。
何千年の何千倍の時が経ち、突如として、失ったものを再び備える者たちが現れた。物語はそこから始まる――
妊婦に翼が生え、あちらこちらに赤子を産み落としていたその時代。森の木の上に産み落とされた赤子は、鉤爪を持つ者たちに助けられ、長じて〈天使総督〉となる。一方、池に落ちた赤子を助けたのは、「有角老女頭部」を抱えて文書館から逃げだした若い写字生だった。文字を読めぬ「文字無シ魚」として文書館に雇われ、腕の血管に金のペン先を突き刺しながら極秘文書を書き写していた写字生は、「有角老女頭部」に血のインクを飛ばしてしまったことから、老女の言葉を感じ取れるようになったのだ。写字生と老女は拾った赤子に金のペン先をくわえさせて養うが、それが「〈金のペン先〉連続殺人事件」の発端だった……
歌集『Lilith』、短篇集『無垢なる花たちのためのユートピア』、掌篇集『月面文字翻刻一例』の新鋭、初の幻想長編小説。
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Posted by ブクログ
たくさんの掌編が、少しずつ繋がっていく構成は好きだけど、ひとつひとつが短くて、どれがどれだっけ…となる。
文体はとても好き。
世界観は幻想的だけれど、現実を仮託しているようでときどき辛い。少年と少女のすれ違いが特に…
最後にたどりついた場所は、いつか帰るところだったんだろうか。
Posted by ブクログ
(以下あらすじをコピペ)
奇病が流行った。
ある者は角を失くし、ある者は翼を失くし、ある者は鉤爪を失くし、ある者は尾を失くし、ある者は鱗を失くし、ある者は毛皮を失くし、ある者は魂を失くした。
何千年の何千倍の時が経ち、突如として、失ったものを再び備える者たちが現れた。物語はそこから始まる――
妊婦に翼が生え、あちらこちらに赤子を産み落としていたその時代。
森の木の上に産み落とされた赤子は、鉤爪を持つ者たちに助けられ、長じて〈天使総督〉となる。
一方、池に落ちた赤子を助けたのは、「有角老女頭部」を抱えて文書館から逃げだした若い写字生だった。
文字を読めぬ「文字無シ魚」として文書館に雇われ、腕の血管に金のペン先を突き刺しながら極秘文書を書き写していた写字生は、「有角老女頭部」に血のインクを飛ばしてしまったことから、老女の言葉を感じ取れるようになったのだ。
写字生と老女は拾った赤子に金のペン先をくわえさせて養うが、それが「〈金のペン先〉連続殺人事件」の発端だった……
(コピペ以上)
と、いうあらすじをあまり気にせずに、半分くらいは掌編小説集として読んだ。
毎週末に限定して、ひとりで、矯めつ眇めつ、ゆっくりと、忘れたり思い出したりしながら。
そうしたら後半、いや掌編が、そして短篇が寄り集まることでできた、正しく長編小説なのだな、と全体の結構に嘆息。
具体的には何も言えないが、いい小説。
先日読んだ山尾悠子「仮面物語」が本格長編なのに対して、本作は「変格長編」……んな言葉ないけれど。
朝宮運河によるインタビューが深い水準に達していて、あ、この著者の作品だけでなく、インタビューやtwitterによる発信も、好きだな、と改めて思った。