あらすじ
大震災直後に最高値更新――その理由がわかりますか? 「財政赤字拡大で円安に」「人口減で円は売り」「為替相場は国力を反映する」――市場に溢れる誤った解説を一刀両断。為替相場を見る基本をやさしく解説。
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Posted by ブクログ
自分がいかに思い違いをしていたかわかった。本文中で誤解されているということを自分では信じていた。たとえば、為替は国家間の経済の差を反映しているとか、日本の少子化にともなって円安になるなど。実際には為替は二つの通貨の交換レートというだけのもので、このレートは中期的には資本の流れによって、長期的には物価の上昇率の差で決まるとのこと。身近でありながら曖昧な為替というものをわかりやすく知ることができる。
Posted by ブクログ
良書。
最近の為替レートの推移がよく理解できました。
Booklog評価が高いことからも、理解の容易さが分かりますね。
1章 円高と円安ーその本質を理解する
為替相場では、どの通貨を先に持ってくるか決まっている。
ユーロ→ポンド→豪ドル→NZドル→米ドル
<クロス円の動き>
①02年~04年のITバブル回復期の各通貨に対する円相場変動率。
→USD/JPYでみると、20%USD安だが、JPYは強かったわけではない。
AUD+19
EUR+18
CAD+3
JPY 0
USD-22
②08年~8-12月の米金融危機後
→USD/円でみると-20%安だが、AUD/USDでみると17%USD高となる。決してUSDが弱かったわけではない。
JPY 0
USD -20
EUR -23
CAD -30
AUD -35
すなわち、相場を理解するには、クロス円の動きの理解が必要。
①は、株価上昇時の動きと整合。資金が豊富にある国が積極的に自国通貨を売る。また、金利が低いので円キャリー取引のような取引が発生する。
②は、株価下落時の動きと整合している。日本は常に経常黒字なので、円売りが行われる。
日本の財政赤字とレート推移の関連は高くない。
日本は、海外から流入している投資資金が少ない。
Posted by ブクログ
資産運用する上で、為替相場の動きは避けて通れない。
これは2014年末に読んだ2011年出版の元日銀行員のアナリストの為替相場、特にドル円相場の動きの要因を持論を交えて解説した書である。
まずは、整理のために要約。
通貨の強弱は国力ではなく、通貨のフローの結果でしかなく、またその相関は2国間の金利差、特に2年物の国債金利との相関が強く、長期的な動向を見れば購買力平価との乖離を解消する方向に向かうといったもの。
また日本は経常収支が黒字(執筆時)であり、今後も、貿易収支が赤字になっても、それが所得収支の黒字を上回って、経常収支が赤字になることは当面想定されないことから、何もなくても円は買われ続け円高方向に向かうが(円高に理由はいらない)、景気が良くなれば、国内投資家の国内債券等の安全資産への投資から、国外の株式や債券のリスク資産への投資に移っていくことで円が売られ円安になる。
通貨の強弱をみる際は、ドル、円、ユーロ、豪ドル等の多通貨間の強弱関係が実質であって、ドル円の関係だけで円安円高と認識してはならない。
おおよそ、一般的な解説であるけれど、何点かは注意が必要だ。
購買力平価は、基準とする年をいつにするかによって、その乖離は大きく違ってくるし、あくまで一物一価が成り立つ世界での話であるので、実際に参考とする場合は相対購買力平価を用いる必要がある。
また金利差との相関は、分析期間をどう取るかで相関有無が違う。ここ10年弱は相関があっても、それ以上の期間でみると相関関係が変わる。2年物と10年物で分析期間が違うのはそれを隠しているように思える。結局はトレンドでしかない。
ただ、これらいくつかに注意すれば、為替の動向を理解する上で良書だと思う。