あらすじ
民芸運動の創始者として知られる柳宗悦.その生涯は,政治経済的弱者やマイノリティに対する温かい眼差しで一貫している.それはどのような考えからきたのだろうか? それは,「世界は単色ではありえない」という確信に由来するのではないか.文化の多様性と互いの学び,非暴力を重視し続けた平和思想家としての柳を浮彫りにする.
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Posted by ブクログ
民芸運動の旗手という狭い枠から柳を解き放ち、「複合の美」という観点からその平和思想的側面をあぶり出すという軸のもとに書かれた好著。
柳の思想的遍歴を辿りつつ、現代的諸課題への対応についての可能性を、著者は「複合の美」という視点から捉える。またキリスト教、禅宗、そして真宗への傾倒と時代を追って深まる柳の宗教思想家としての側面も大いにクローズアップされており、勉強になった。
Posted by ブクログ
「民芸運動」で知られる人物であるが、私的にはその思想に強く惹かれるものがある。彼が共鳴し、思想の根幹とも思われる二元論は今後の人間のあるべき姿を描き出しているようにも思われる。
Posted by ブクログ
伝記的な事柄を色々と勉強させていただきました。ただ、柳という人物を現代にいかに活かすか、という議論はあまりに紋切型で楽観的だったように思う。
肯定的に描くという戦略は意識的に採られたわけなんだが、その結果として論が一本調子になった面はあるだろう。
批判的な捉え方が欲しかったし、そちらの方が、人物の像としてふくらみが出たように思うんだ。
Posted by ブクログ
たんなる民芸運動の指導者に尽きることのない、柳宗悦の多彩な活動にひろく目くばりし、その中心にある「複合の美」の思想とその現代的意義について論じている本です。
著者は、柳の文章のなかに多く登場していないとはいうものの、クロポトキンの相互扶助の思想に彼が大きな共感をもっていたことを指摘します。さらに彼が、朝鮮の独立運動を支持し、沖縄の方言がうしなわれることに強い危機感をいだいていたこと、台湾に対する日本人の差別的なまなざしを告発したことなど、「周辺」文化についての柳の関心のありかたについて考察がおこなわれています。
一方で、柳が朝鮮の「悲哀の美」を強調したことや、沖縄の人びとが標準語を話せないために苦しんでいたことに対して、柳はじゅうぶんな配慮を欠いており、オリエンタリズムと同型の問題が見いだされてきたことにも、著者は目を向けています。また、日本政府が柳の主導する民芸運動をとり込み、戦争への動員に利用していたことに対して、柳が危うい立場をとっていたことにも注意しなければならないという指摘がなされます。
そのうえで著者は、世界を単一の価値によっておおい尽くすのではなく、多様性を認めあいそれぞれの文化的な特質を伸長することで、理想的な社会の実現をめざすことが、柳の思想の中心にあったと論じています。こうした思想が「複合の美」ということばで端的に表現され、その発想を混迷する現代の状況のなかで活かしていくことができるのではないかという展望が語られています。
Posted by ブクログ
柳宗悦の著作は未だ読んでいないが、もの作りをする者として知っていなければならぬ人物と思い、そのガイドとなるのではと思って本書を読み始めた。
僭越な言い方をすれば、これほどの人物も西洋に気触れ、日本のアイデンティティの模索を始めている。そこに僕自身の思考過程を重ねることが出来、親近感を持ちながら読んだ。
この本から受ける柳の印象は、論理の人であると思った。西洋に対する日本の論理の構築を目指している人であって、柳自身が民藝の中に見いだそうとしていた無心さえ、論理の西洋vs無心の日本を導こうと必死であった印象を受けた。時代は異なるが岡本太郎のように直観で日本を良さを見いだす人とは真逆であると思った。極端な言い方をすると、西洋コンプレックスから、消去法で民藝を見いだしたようにさえ思えた。
作家性を廃しギルドで手仕事を行うこと、社会主義的、アナーキーなところは今の僕らにはとても理想主義なところがある。資本主義の行き過ぎた社会のなかでは柳の思想はギャップがかなりある。ヒントはこの本を読んだだけでは見いだせない。
ただ少なくとも、柳は思案に留まることなく実践した者なのだから、素晴らしい。この本を入り口として柳宗悦の著作も読んでみて、引き続き自分なりのヒントを探してみたいと思った。