【感想・ネタバレ】トヨタのEV戦争のレビュー

あらすじ

EV(電気自動車)が好きでも嫌いでも関係ない。負けられない戦いがここにある!

2023年4月、電撃的な社長交代を果たしたトヨタは、佐藤恒治新体制のもと新たなEV戦略を次々に発表している。マルチパスウェイ(全方位戦略)を維持するとしながらも、国、地域をあげた欧・米・中によるEV覇権争いに乗り遅れることはできないと、腹を括ったのだ。
「壮大なる消耗戦」の様相を呈してきたこの戦いに、トヨタはどう挑み、勝ち抜こうとしているのか? その戦略を詳細に分析するとともに、世界の自動車産業がこの先に進む、未来の姿も提示する。
日々、大胆に進む「100年に一度の変革」を、自動車産業No.1アナリスト・中西孝樹がダイナミックに、精緻に描く必見の書、緊急出版!

第1章:トヨタつまずきの本質論
第2章:CASE2.0と国内自動車産業の六重苦
第3章:世界のEV市場の現在地と未来図
第4章:トヨタのマルチパスウェイ戦略
第5章:10年に一度のサイクルで訪れるトヨタの危機
第6章:2020年に再来したトヨタ最大の危機
第7章:テスラの野望
第8章:次世代車SDVへの進化
第9章:トヨタ新体制の戦略
第10章:トヨタに求められる変革
最終章:国内自動車産業の未来

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Posted by ブクログ

ネタバレ

・ビークルOSの価値の説明と、各社での違い
・EV時代における各社の儲け方の違いとトヨタの収益予測
・2026年、30年などにおけるトヨタのEV販売動向の重要性
・Zへの切込み

この辺りは非常に面白かった。特に後者。トヨタはコネクテッドも踏まえた「バリューチェーン」という領域での儲けの文脈(ワンショット売り切りでなく1台あたりの価値を最大化する)での変動費の削減=HEV等でのアプローチから、欧州系OEMなどのハードウェアとしての固定費削減アプローチ、の順序と、その順序を踏まえた際にトヨタの販売台数予測と各国規制動向から受ける想定収益として、2030年前後に大きな崖ができる可能性。

特に「量産価格帯EV」については恐怖でもあり、確かにTeslaが販価を7%程度削って出しても利益が出るしバリューチェーン上でも儲けられる仕組みを整えているが、トヨタはその価格で出すと赤字だし、バリューチェーンの仕組みがまだ十分でないため負けてしまう。

このシナリオが一番ありうるのと、ロボタクも300万円を切っていたはず。と考えると現実性が高い。特に保有台数重視に切り替えているのであれば猶更。完全にITと同じビジネスの仕方。

他方Teslaも台数が増えた際のメンテナンス、品質地獄というところは確かにというか弱点になりうる。が、「誰かと組んでしまう=別にTeslaはそこで儲けなくてよい」ということであれば、方法がとれる。

執筆時より少しCo2削減基準などEPAでは低くなったが、1/10になったとかではないので、大きく数字に影響もないだろう。特にトヨタにとって26年のレクサス等での失敗は許されなくなりつつある。

そうなったときに別部署化したとはいえ、既存のZの哲学で育ってきた人たちが、EV需要を捉える商品性を作りこめるのだろうか。特にレクサス→既存車種展開時。これはコネクテッドでも同様だったが、その際はあくまでも「オマケ」的な位置づけだったが、今回はZの業務をダイレクトに変えてしまう。Zに触れている書籍はあまり見ないので、それだけでも貴重。車づくりにコネクテッドやMaaSが織り込まれていないから、バリューチェーン戦略でうまく利益が出せていないというのは納得。KINTOはそのあたりをぶち破ってきた感があるので、今後期待。トヨタ内部でもコネクティッドカンパニーは廃止になるなど、車両側へのコネクテッドの吸収を起こさせているが、これがどう転ぶか。パワーバランス的に「ものづくり>コトづくり」という勘違いを起こさせていなければ、と思う。イコールであるべき。

分社化すべきであろうというのは賛成。自動運転もトヨタから最近聞かないが、ここもバリューチェーンを太らせるには必要。E2EでAIが主流になりつつあるとの報道もあるが、トヨタ、デンソーはどう対峙していくのか。

その他、ASEAN、グローバルサウスでの戦略も含め検討してみてほしい。さらに、そのような環境下の中「日本独自の規格」である「軽EV」はどうなっていくのか(特にスズキ)。

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2024年11月04日

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