あらすじ
生活というのは“ずるいやつ”だから、我々を少しずつ蝕んでくるんです。そしてついに、日常がすべてになってしまう。詩的な写真を撮る行為とは、そういう日常から少し距離を置くということ。日常の営みを、斜め横、あるいは高みの視点から観察してみましょ──知的のひとつ上、大人のためのチョートク流「詩的なカメラ生活」指南。
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Posted by ブクログ
「知的な~」の続編というか、著者もあとがきで書いているように「二匹目のどぜう」を狙っての一冊。前著より、技術的なことより、写真と向き合う精神的なことを書いているようで、初心者としては楽しい一冊だった。 40年以上もカメラと付き合ってきた大ベテランなだけに、銀塩フィルムへのこだわりが垣間見えるけど、マイクロフォーサーズ登場(これを“地殻変動”と言ってるのがおかしい)以降のデジタルカメラ情勢も、決して否定的に見ていないところがいい。余裕ある大人の視点。
機能、スペックの詰め込みの昨今の風潮に苦言を呈し、メーカーの努力不足は、“ライフスタイルの提案”の欠如だという点は、非常に納得がいく。要は、なにごとも「過ぎたるは」の精神ってことか。 “持つ楽しみ”を感じさせないカメラは良くないというのも賛同。 今年、1台新調したけど、ライフスタイルに合わせて、携帯のしやすさを重視した判断も間違いなかったな、と思えた。
安倍公房の写真がつまらないと書いている箇所も面白かった。彼の写真は“文章に引き直せる”とある。要は、説明的なんだろうな。片や、沢木耕太郎の写真(写真集『天涯』)を「世界の何だかわからないものを、そのままつかみ出している」と絶賛している。 感性なんだろうし、画面から余分を引き算していくことの大切さなのかな、と。ここにも氏の“過ぎたるは”の思いが出ているのかもしれない。 『天涯』、見てみたい。
いろんな意味で、面白おかしく読めた1冊、いや、「知的」「詩的」合わせて2冊。