あらすじ
親族の死、政略結婚、跡継ぎ争い……。織田・豊臣の戦国の動乱を生き抜き、徳川将軍家最初の御台所として江戸城大奥の創設者となり、泰平の世・江戸三〇〇年の基礎を築いた江。その波乱に満ちた生涯は、家康・秀忠・家光、世にいう徳川三代と数奇な運命をたどるものだった──。
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Posted by ブクログ
主人公の江(ごう)は、浅井長政の三姉妹の末娘、徳川秀忠正室であるが、これまでドラマなどではあまり取り上げられることはなかった。どちらかといえば、秀吉に嫁いだ長女の茶々(淀君)、あるいは家光の乳母、春日局の陰に隠れた存在だった。
一方、本書に描かれた時代は、戦国から徳川の世へと移る大河ドラマでもおなじみの時代であり、歴史的事実そのものも、よく知られた話ばかりである。一見、地味な物語と思われがちだろう。
しかし、生涯で三度の結婚をし、三代将軍家光の生母となった江の一生という側面から見ると、また違った見方ができるから面白い。本書は江をはじめ、この時代のもう一つの主役だった女性たちの立場から見た織田、豊臣、徳川の「新しい」歴史を描きだす。
ともすれば、戦国から徳川政権成立期にかけての女性は、戦乱に巻き込まれた悲劇の存在として描かれることが多い。しかし、安藤氏は、その見方は一面であり、むしろ、たくましく生きる存在としての女性像に注目するのである。