あらすじ
むかしむかしあるところに、私たちが家族だった頃がある――。母と兄、そして父も、私をおいていなくなった。孤独な日常を送っていたとうこのもとに、ある日転がりこんできた従妹の瑠璃。母とともに別居する双子の兄・陸は時々とうこになりかわって暮らすことで、不安定な母の気持ちを落ち着かせていた。近所の廃屋にカフェを作るためにやってきた夫婦や、とうこの祖母。それぞれが大きな喪失を抱えながら、ゆっくり立ち上がっていく、少女とひと夏の物語。
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Posted by ブクログ
人それぞれが持っている、悲しみの深さなど、言葉で勇気づけることも必要だけど、相手の気持ちに合わせて行動し、悲しみを少しでも共有できる人間になりたいと再確認できたストーリーでした。
お話に出てくる廃屋だった家に住みつき、悲しみ心に空洞を持った人々にそっと寄り添っていた野良猫ちゃんのように。
Posted by ブクログ
最後にもの凄く、清々しい気持ちになれた本。
解説で角田光代さんが「大島真寿美さんの小説は、秘密基地を思わせる」と書かれていますが、ほんとうに正にそれだ!と思いました。
そう思わせるのは、遊子さんと茂さんの存在、瑠璃の存在、そして“かつて空き家だった、今は開店準備中のカフェ”があるからかもしれない。
始めの内は、とうこと一緒に、ずぶずぶと喪失と共に生きることについて考えをめぐらせてばかりいた。
けれどいつしか、私も彼女たちと共に、次の季節に顔をあげ、目を向けられるようになっていました。
Posted by ブクログ
透明なお話。喪失と再生、かな。
静に響いてくる感じ。
双子の兄弟が欲しくなる。
以前読んだ「宙(ソラ)の家」の作者だと
知ってなんか納得。
4/6
Posted by ブクログ
両親の離婚により、離れ離れになった双子。父親の死後、再会を描いた作品。お互いにそれぞれに様々な思いや苦労があって、でも全くそれをいい意味で感じさせないことで、余計にひしひしと伝わってくるものがあった。穏やかで透明感のあふれる作品でした。
Posted by ブクログ
【本の内容】
むかしむかしあるところに、私たちが家族だった頃がある―。
母と兄、そして父も、私をおいていなくなった。
孤独な日常を送っていたとうこのもとに、ある日転がりこんできた従妹の瑠璃。
母とともに別居する双子の兄・陸は時々とうこになりかわって暮らすことで、不安定な母の気持ちを落ち着かせていた。
近所の廃屋にカフェを作るためにやってきた夫婦や、とうこの祖母。
それぞれが大きな喪失を抱えながら、ゆっくり立ち上がっていく、少女とひと夏の物語。
[ 目次 ]
[ POP ]
父を亡くして以来、無気力になったとうこが少しずつ変化していく。
何か劇的な出来事がきっかけになるわけではない。
転がり込んできた従妹の瑠璃の何気ない言葉や行動。
近所の廃屋にある日突然やってきた夫婦。
説教めいたことも感動的な台詞も言わないが、黙って彼らを見たり聞いたりしているうちに、とうこの喪失は得体の知れない大きな重圧から自分の血肉になっていく。
おそらく本当に大きな傷は、自分でも気付かないようなささやかな変化を繰り返して癒えていくものなのだろう、と思わされた。
離れ離れになっていた双子の兄の陸と実際に会ってから、とうこはようやく自分が家族を失ったことを受け入れる。
逃げていた現実を受け入れる、と書くと陳腐に見えてしまうけれど、仰々しく変化しない様子がリアルで、まるでこちらまで一緒に成長したかのような錯覚を覚える。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
どこかに寂しさをかかえてる登場人物たち。でもみんな前向きで、これからはちょっとずついい方向に向かっていくんじゃないかなぁ。
全体的にふんわりのんびりしてる感じが、いいと言えばいいんだけどスピード感はないかも。
Posted by ブクログ
失った過去を父親の死というものをキーにいろいろなつながりを再生する物語・・・かな。ジャケットで手にしたんだけど、少し切なくも透明感があって良かったんだけど、後半に入ってからちょっと話を行き急いだのか話を詰め込み過ぎだろ感が否めないのがちと残念かな。
Posted by ブクログ
父を亡くしひとりになった主人公のところへ、家出癖のあるいとこが転がり込んでくる。
いとこの後押しをきっかけに、
子供の頃家を出た母とふたごの兄と再会しようとするお話。
カフェの開業準備をする夫婦との出会いがあったり、主人公のゆるやかな日常が主軸となっている。
初期の作品ということもあってか、全体的に浅い感じだけどその分瑞々しい、という表現がぴったりな作品。
読むタイミングや環境によっては深く刺さる気もするけれど爽やかで軽い分、感情移入できないと残るものが少ない気がする。
Posted by ブクログ
喪失と、そこからの再生を描いた、透明で澄んだ物語。
ふわっと、淡々と話は進むのですが、確かにそこにある現実と、にわかに現実とは思えない話とが折り重なるそれは、なんだか実態の掴めない蜃気楼のよう。
それはちょうど捉えようのない漠然とした孤独感とか、不安感に近いものなのでしょうか。
壊れてしまったものを元通りの形ににすることはできないけれど、元通りではなくても、また別の形にすることはできる。案外、それは元の形より良かったりするのかもしれません。
楽しいことは、自分で探す。楽しいところへは、自力で移動する。
Posted by ブクログ
幼いころ両親が離婚したことで、母親と双子の兄と離れて生活することになった20歳の女子大生が主人公です。一緒に暮らしていた父親が急死したことで、大学を休学し、けだるい日々を送る主人公。そんな時、子供のころから何度も家出を繰り返している従妹が、主人公の暮らすマンションに転がり込んできます。従妹はもう何年も実家に連絡を取っておらず、親からは死んだも同然とあきらめられているようです。家出癖のある従妹は、主人公の家の近所に昔からある廃屋を、将来自分の住処にしようと考えていたようですが、その廃屋に手を入れて、カフェにしようと目論む男女が現れます。自分たちの手で、少しずつ改修しているために、いつまでたってもオープンしないカフェ。けれどそこは、なんとなく落ち着ける場所。カフェの女性には、若いころ亡くした我が子の姿がいまも見えているようです。いろんな人に巡り会い、小さな経験を積む中で、しだいに主人公の心は解きほぐされていきます。
生きるってことは、たいせつなものを失っていくこと。傷を負い、負わせながら、それでも人は、飄々と何気なさそうに生きています。この物語の登場人物たちもそうです。一度壊れてしまったものを、もとに戻すことはできません。傷ついた心が癒されるなんてこともありません。けれど、その悲しみを受け入れたとき、人は一歩足を踏み出せるのかもしれませんネ。
Posted by ブクログ
喪失と再生の物語。
文中の「ああ楽しいっていう時間が増えるのがとにかく楽しいってことだよ」
と言う言葉に共感した。
楽しいことは、自分で探す。楽しいところへは、自力で移動する。
Posted by ブクログ
現実と夢のようなものがごっちゃになっていたりして、なんか不思議な話ですね。
離婚のときに母に置いて行かれ、自殺に近い死に方で父親を失ったとうこ。とうこを置いて出たことを悔やみ、精神を病みかけた母親。その母を支えるためにとうことの二役を演じる陸。息子に先立たれた祖母。厳しすぎ、身勝手な両親から逃れようと家出を繰り返す瑠璃。そして、小さな息子を亡くした喫茶店の奥さん。
様々な人たちの一種の再生物語なのですが、そうした物語に多い力強さは感じられず、どこかふんわりとした雰囲気です。
でもその雰囲気のためか、少々まとまりに欠け、焦点が会わない感じが残念です。