あらすじ
人生という長い旅路を行く大人たちへの祝福に満ちたエッセイ。EU離脱投票が原因で喧嘩になった妻への仲直りタトゥーが思わぬ意味になっていたおっさんや緊縮財政にも負けないおっさんの話など。笑って泣ける21編。第2章では世代・階級等について解説。『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』と本書は同じコインの両面だと著者が記す必読書。単行本10万部突破! 解説=梯久美子 推薦文=國分功一郎
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Posted by ブクログ
私が子どもの頃、イギリスは超福祉国家で、「ゆりかごから墓場まで」国が面倒を見てくれていた。
しかし、今のイギリスは、それまでもゆるゆると財政はひっ迫していたのだろうけれど、緊縮財政に舵を切って以降、雪崩を打つように社会の様相が激変してしまったらしい。
そもそも緊縮財政を謳って国家が持ち直したという国はあるのだろうか?
日本もイギリスに倣って行政で行っていたことを次々と民営化した。
これで私たちの払う税金が安くなるというのが売りだったけど、当時からそれは嘘だと思っていた。
案の定消費税は値上がりし、民営化されたサービスにお金を払い、利益を生まないサービスは消えて行った。
イギリスも、無料の医療システムはどんどん利用しにくくなる。
緊急を要するはずのがん患者でさえ、予約しても9か月待ち。予約のために行列を作る→予約のための窓口につながる為の予約を取る。
話を聞いてもらうだけで何度もトライし、一からやり直しをさせられ、予約の窓口に回してもらい、話を聞いてもらい、予約の権利を得る。
一日8時間働き、定年まで勤めあげたら悠々自適の老後を送ることができる私たち世代とは違い、ケガをしたり病気をすると一気に転落してしまう不安を抱えながら、何の保証もない雇用を目いっぱいこなしながら働き続ける若い世代。
EU離脱を臨んだ中高齢者に対して、残留を望んだ若い世代。
イギリスで暮らしていけなくなったら、他国へ出稼ぎに行く道を残したかったらしい。
日本も他人ごとではない。
移民に対して直接的に暴力的に敵意をむき出す若い世代。
今現在イギリスにいる移民に対しては、権利を守るべきとする中高年。
パブで飲んだくれるのを無上の喜びとする中高年は減少し、若い人たちは健康志向でパブに行くこともあまりない。
しかし、年齢や世代で細かく分断し、どれがどれより上だとか下だとかマスコミは言うけれど、分断すればするほど困窮するのは庶民たち。
そしてコロナの、ロックダウンが一層彼らを分断し、孤独と困窮が憎悪を生んでいる。
富裕層は困らない。
もともと金持ちは国のサービスなんて必要としていなかったから。
”政府がきっちり財政支出をして、若者たちに巨額の学生ローンを抱えさせたりせず、個人請負業やインターンという無給の仕事をさせたりしないように働き方を改革し、世界中の民間投資家が英国の住宅を買い漁って住宅価格が高騰しないように制度を整え、若者たちが手頃な家賃で住める公営住宅をたくさん立てるなどの、政治・経済的な取り組みで若者を生きやすくしていれば、下の世代が高齢者世代を経済的負担と考えて忌み嫌ったり(中略)、妬みに濁った眼で見ることもなくなるのである”
これ、まったく日本にも言えると思った。
Posted by ブクログ
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』と同時期に書かれたエッセイ。周囲の「おっさん」達が登場。
最近、イギリスにハマってて、そこに生きるおっさんたちの等身大の姿が描かれていて面白かった。
EU離脱とか、緊縮政策とか、中にいる人達の考え方に触れられて良かった。
ちょっと日本とにてるとこもあるよね~という感じ。
コロナ後のあとがきもとても興味深く読めた。
出来れば、コロナ中~後のおっさん達の色々も読んでみたい。
Posted by ブクログ
いわた書店さんの「一万円選書」でご選書いただいた一冊。「英国のおっさん事情」がポップに優しく哀しく…愛情たっぷりに綴られた一冊。「EU離脱」「国民保険」など(当然だが)日本と異なるお国事情に触れることができる。心に残った一節を。「あなたの世界はあなたが残してきたすべての小さなものたちにすぎない」(P218)自分は今年51歳を迎えた。日本で言うところの「第二次団塊世代」。英国では「ジェネレーションX世代」と言われるようだ。「いい時代を生きた声のデカい世代」と「覇気のないやる気のない世代」の間に存在している世代。「政情がどうであろうと時代がどう変わろうと俺たちはただ生き延びるだけ」(P308)1973年に生をこの世に受けた者同士、一緒に何とか生きていきたい。