あらすじ
未解決事件班の責任者になったバラードはボッシュをチームに引き入れる。
優先すべきは約三十年前の女子校生殺人事件だったが、ボッシュは夫婦と子ども二人が砂漠に埋められた一家殺害事件に
没頭して言うことを聞かない。
班員には事物に触れて見えない事情を感じるという共感能力者もいてバラードを困らせる。
ハリー・ボッシュとレネイ・バラード共演第4弾。
「年間最高傑作の一冊として、読みだしたら止まらない体験を読者にもたらしてくれる」
──リアル・ブック・スパイ
「マイクル・コナリーは本書で頂点を極めた。簡潔明瞭な文体が登場人物の行動を促し、ロサンジェルスのリアルな街並みと荒涼とした美しい砂漠に読者を誘う。本作は胸を締めつける最後の意外な展開もあって、必読の書である」
──アップル・ブックス・2022年11月のベストブック
「長年のボッシュ・ファンは、本作のみごとなフィナーレのあとで、ため息を漏らすだろう」
──ブックリスト星付きレビュー
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
時は過ぎゆく。その感を作品毎に強くしてゆくのが、本シリーズのこのところの読後感である。若いベトナム帰りの辣腕刑事であったハリー・ボッシュは、今や警察を退官し老いた私立探偵となっている。その後も何作もシリーズを続けていること自体奇跡的なのだが、本書ではナイトシフトの警察官であったレネイ・バラードが未解決事件専門の新部門の責任者となった構図がシリーズに新しい風を与える。
さらにレネイ・バラードは、チームに退職者であるボッシュを迎え入れる。現役を退いてなお未解決事件に挑んできたボッシュの最新のヒストリーに、若き女性捜査官レネイ・バラードの運命を重ねることがシリーズの合体と継続とを奇跡的に成功させ、なおかつ成熟させているのだから、コナリー魔術とその奇蹟的世界設計に再々ながら驚かされた。
新しいチームに組み入れられた癖の強い新しい面々もそれぞれの個性が浮き立ち、カラフルかつ摩擦や緊張にも満ちていて本書の新しい読みどころとなっている。
本書では未解決事件に執念を見せるチームの面々も面白いところだが、彼らの一部の背景となる構造も、本書では二つの大きなうねりとなる同時並行的捜査に複雑な影となってついて回る。過去からの犯罪者を追跡しつつも、現在のチーム内に疑惑を呼び起こす奇妙なメンバーの動きなどもあって、内外ともに気が抜けないボッシュとバラードの様子が、物語全体に張りつめた緊張感を与えてゆく。
静かな捜査と大団円でのガンショット。犯罪はいつでも暴力に満ちたものだし、発生した場所や、犠牲になった人々の想い出は常に悲しくむごたらしい。それらを巻き起こしたネガティブな存在を、常に追跡し対決を挑み続ける私立探偵ハリー・ボッシュと、彼よりはるかに若いが人間的にも魅力的なレネイ・バラードという女性警察官のコンビネーションを本書からはシリーズとして新たに楽しめる。そんな期待値いっぱいの大団円を迎えながら、本書ではシリーズとしては少しショッキングなしこりのようなものが最後に残される。
ボッシュの娘である市警刑事マディと現在の相棒であるレネイ。ボッシュの正義は今、次世代に少しずつ継がれようとしている。そんな重要な局面に居合わせているような感覚を覚えるこの頃。ここのところの新作は、そういう意味でも一作一作に、まさに見逃してはならないという感覚を強烈に覚えている。次の作品が待たれると同時に、読むのが怖いような気さえしてくる。予断を許さぬシリーズ転換点に今ぼくら読者も立たされているのである。
Posted by ブクログ
マイクル・コナリー『正義の弧 (上)』講談社文庫。
レネイ・バラード&ハリー・ボッシュ共演作の第4弾。マイクル・コナリーの37冊目の長編。
時代の流れと共に警察捜査の手法は変わり、DNAの検出や比較、遺伝子系図学調査までが容易になった。そんな時代の流れの中でも、70歳になったハリー・ボッシュは刑事であり続ける。
もはやマイクル・コナリーの名人芸と読んで良いくらいの高みを極めた現代ハードボイルド小説の最高峰。
ロス市警の未解決事件班の責任者となったレネイ・バラードは、ハリー・ボッシュがロス市警でやり残した一家4人が殺害されたギャラガー事件の捜査をちらつかせ、ボッシュをチームに引き入れる。しかし、最優先で解決すべきは未解決事件班の立ち上げをバックアップした市会議員のジェイク・パールマンの妹が30年前に殺害されたサラ・パールマン事件の捜査だった。ボッシュの指摘により、新たに発見されたDNAからサラ・パールマン事件から11年後に起きたローラ・ウィルスン事件との関連が浮かび上がる。
次第に見えてくる事件の闇……
定価10,12円
★★★★★
Posted by ブクログ
ハリーボッシュとレネイバラードの共演作。今までのシリーズで1番だと思う。ボッシュの刑事や人間としての強さが強く描かれていて、本当に素晴らしいキャラクターになっている。ドラマを見たことはないが、本ほどは描けないのではないだろうか。唯一の苦言は日本語タイトル。本当にしょうもないタイトルを付けるものだ。「砂漠の星」の方がずっと良いと思う。
Posted by ブクログ
ボッシュ&バラードのコンビ。
ボッシュも70歳、ジジイとか言われながら、やるべきをやり言うべきを言う。
ボランティアという立場でありながら、時間も金も捜査のためには躊躇なく自腹を切って取り組んでいる。
使命感と、それを果たす自信の前には年齢なんぞ知った事かと云う姿勢、そんな物語を胸すく想いで読める幸せ。
まあでも、そんな簡単に犯人が割れるのか?
下巻が楽しみ。
Posted by ブクログ
ボッシュが未解決事件捜査班に復帰。市議の妹殺人事件と黒人女性殺人事件が関連して捜査が進む。一方砂漠での一家殺人事件という未解決事件もあり、経理者家族失踪後に会社の資材を売却し失踪した人物を捜査する上巻でした。下巻へ
Posted by ブクログ
ボッシュ&バラードの第五弾。
ボッシュとバラードで探偵事務所をやるはずだったのに、
結局バラードが警察に残って一年。
未解決事件班のリーダーになって、ボッシュをスカウトする。
ボランティアとして捜査に戻ることにしたボッシュは、
家族四人が殺され砂漠に埋められていた事件を追う。
同時に「政治的」な要求で市議会議員の妹が殺された事件も調査することに。
また警察で働くことになるとは。
バラードと出会った時にはこんな風に二人で働くことになるとは、
思ってもみなかった。
目の付けどころ、疑問の持ち方、証人の追い詰め方は、さすがボッシュ。
あっという間に犯人の目星をつけ、対峙し、銃で撃たれてしまうところまで。
なので、ラストでチームに戻らない、とボッシュが言っていたのは残念だった。
(下巻へ)