あらすじ
光に照らされ君といたあの時間を、ひとは”闇”と呼ぶ――。かつてジュニアアイドルの活動をしていた雪那。少年漫画の夢小説にハマり、名前を空欄のまま読んでいる。第169回芥川賞候補作
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Posted by ブクログ
夢小説の文学だ!!?と思って読んだけどすごく計算されている話という印象を受けた
夢小説に名前入れないで読もうとすると##NAME##って出たよね 今もそうなのかな
ジュニアアイドルの問題に関する記事を読んだりするとこの小説のことを思い出す
母の強い意向でジュニアアイドルの仕事をしていた主人公だが、やめたあとも画像は名前とともにネット上に残り続け、検索すれば簡単に見つかるデジタルタトゥーに変わる
夢小説の名前を入力するという部分と、主人公が後半で名前を変えるという部分が伏線回収になる
ジュニアアイドルを続けていった友達との描写もよかったし、最後の新しい名前を母は知らないっていうのがよかった
Posted by ブクログ
モー娘。の「最kiyou」という曲の歌詞がすごく好きで、歌詞とリズムをマッチさせているところも好きで、そういえばモー娘。の歌詞を書く人が芥川賞候補になったよなーと思ったらこの方だった!
「特に美砂乃ちゃんは、今みたいに不自然なほど強引に話を変えた」
先に綴った会話を「今みたいに」って言う人初めて…
若い人が書く小説読まないから分からんけど、これって今わりと使われてる表現なんかな?
自分に喋りかけられてる感じがする、臨場感が出る
すごい
美砂乃ちゃんはお家の収入源でお金を稼ぎに行ってたのか…キッズモデルとかする人はそんな人っていっぱいいるのか
主人公と違って勉学を一番にしてないのは読んでてこの先を思って辛くなったけど…生まれってこんなに悲しいかねって本当思う
アイスキャンデーってそれの象徴なんだ…
美砂乃ちゃんとの日々が大事だったって、それが一番大事なことでいいんだ
「闇というのはそこにいる人々に出くわした時の、手に負えない現実を見切る時の呪文であり、未知に遭遇した興奮にはしゃぐ時のかけ声」
ね、簡単に闇深いって言うよね
界隈にいた人とかにとっては懐かしく嬉しい話なのか、いいなあそれもまた
ああ〜そっか〜ジャニーズもそれに近いのか…
だいぶ読みやすかった!
読みやすい長さと文体で集中しやすくなる一冊をガッと一気に読むのはかなりの気分転換になるし、それができることが分かってよかった
キッズグラビアっていう仕事のことも分かったし、最近の芥川賞候補を追っていったら最近の社会問題が知れるのもいいかもな
Posted by ブクログ
ジュニアアイドルとして小学生の頃から事務所に所属し放課後レッスンに通い、CMのオーディションを受けていると聞けば普通だけど、水着での撮影レッスンや、撮影後にアイスキャンディーを舐める様子まで写真に撮られるとなると、普通・・・ではない。
知らず知らずのうちに被害者になっていた彼女が、デジタルタトゥーに悩まされてゆく物語です。
と書くと、主人公は、過去は忌まわしいものとして葬りたいと思っているようですが実際には違います。
知らずに受けていた性被害は被害としてあるけれど、当時同じくレッスンに通う親友がいて、彼女との日々はかけがえのない楽しい日々だったのに、その思い出まで全否定されることに戸惑い、途方に暮れ、善意のコトバにも傷つく様が痛々しかったです。
こういう闇の需要はなくならないだろうから、巧妙な手口で今も被害者としての認識はなくアイドルを夢見る女の子が活動していると思うと胸が痛いです。
子どもでは判断が付けられないから親が悪いけど、物語に出てくる母親はある意味毒親なんだろうけど無理強いしているわけではないし、だったらただのバカなの?能天気なの?それともお金のためにグルだったの?だからこそなんか複雑でした。
また、ジャニーズ問題みたいな露骨な事件でも、被害者ひとりひとりが、他人には理解しがたい複雑な心境が交差して余計に苦しい思いをしている人がいるのかもしれないなと思って、改めて憤りを感じたりもしました。
結局、過去の楽しい思い出を葬るためではなく守るために改名を選択したので、うまく折り合いがつけられればいいなと思います。ガンバレ雪那ちゃん。
Posted by ブクログ
夢小説と改名。一貫して名前の物語になっていて、構造がとても綺麗だった。君が名付けた私の名前は、私のために鳴る最も短い歌。
そして児童ポルノを許さないという怒りの表明でもあった。るろ剣の作者の書類送検をきっかけに書かれた小説なのかも。あのとき確かに私も激しい嫌悪を抱いたはずなのに、毎日流れてくる気色悪いニュースに押し流されて記憶の片隅に追いやってしまってた。この児ポ大国で生きていく以上、絶対にあの怒りを忘れちゃいけないのに。虐待の被害者、特に子供が自分の言葉でうまく怒れないのなんて当たり前で、怒らなくちゃいけないのは私たち大人だ。その想いを強くしてくれた。
Posted by ブクログ
最後、主人公のひとりよがりな感じが否めず馴染めなかった。
引退したみさのちゃん、一般人として穏やかに暮らせるのかなと思ったけど、ママタレントになるルートもあるはず。
妊娠してグラドルはやめてもアカウントをそのままにSNSを更新しているのは、一般人ではなく夫と娘と自分の容姿と日常を消費しながら生きていく将来の可能性をみさのちゃん自身が否定していないからなのではと思う。
主人公はみさのちゃんとの再会を前向きに考えてるけど、みさのちゃんは呼んでほしいときに「みさ」と呼んでもらえず助けてくれなかった主人公のこと許せるのかな……被害者同士だからって関係が修復できるかどうかは別のように思う。