あらすじ
“首斬り浅右衛門(あさえむ)”の異名で天下に鳴り響き、罪人の首を斬り続けた山田家二百五十年の末路は、明治の維新体制に落伍しただけでなく、人の胆をとっては薬として売り、死体を斬り刻んできた閉鎖的な家門内に蠢く、暗い血の噴出であった。もはや斬首が廃止された世の中で、山田家の人間はどう生きればいいというのか。豊富な資料を駆使して時代の流れを迫力ある筆で描き、「歴史小説に新領域を拓いた」と絶讃を博した、第67回直木賞受賞の長篇大作。
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Posted by ブクログ
第67回直木賞。
江戸から明治に変わる時代の、死刑執行人の話。
当時の死刑執行は、刀による首斬り。腕のたつ山田家が代々それを家業として継いでいたが、仕事とはいえ人を切る生臭さ、周囲の目、技術の鍛錬など、山田一家にとって精神的・身体的な悩みは尽きない。しかも、家族間のいざこざ、明治の御一新で死刑の手段が絞首や銃殺へとって変わるなどが重なり、山田家は崩壊していく。
時代考察が細かく、ノンフィクションを読んでいるかのよう。実際、斬首した島田一郎(大久保利通の暗殺犯)の逸話などは実話のようだ。
斬られる人々や、山田家に仕え続けた浜田など、サブキャラクターが小説をより面白いものにしている。。タイトルの「斬」は内容を象徴していて、漢字一字で潔い。
Posted by ブクログ
死刑執行人山田浅右衛門一家の話。幕末、廃刀令などの時代背景の中、衰退して行く様を描く。
幕末の人々、世界が変わって行く様の描写も面白いし、それを肌で感じ翻弄されていく一家も読んでいて心に来るものがある。他の歴史小説とは異なる感じがした。時代背景は歴史を淡々と描き、主人公らには血が通った書き方をしているせいだろうか。最後も物悲しくて良い。