【感想・ネタバレ】深く、しっかり息をして 川上未映子エッセイ集のレビュー

あらすじ

川上未映子、12年間の軌跡。
雑誌Hanakoの連載エッセイ「りぼんにお願い」が書籍化!


どれだけ時間が過ぎても言葉にできないことが
それぞれの胸にあるのだと思う
――川上未映子


2011年から2022年。小説『すべて真夜中の恋人たち』、『夏物語』、『黄色い家』を世に出し、さらには出産、育児、プロモーションやシンポジウムなど海外への渡航…。目まぐるしい変化の中で川上未映子さんは毎月、雑誌Hanakoでのエッセイ連載「りぼんにお願い」でそのときどきの喜びや悲しみ、悩み、読者へのエールを綴ってきました。「Hanako読者のことを想像しながら文章を書くことは、いつも、すごく楽しかった(中略)心と体も、移動するような気持ちになれた、暖かそうな、光がたまってる方面に」(あとがきより)。

メイクやファッションの悩みから、季節の移り変わり、社会の中での女性の変化について、ときにユーモラスに、ときに勇敢に、ときに暖かく、読者へと語りかけるように書かれたエッセイには、小説作品とはまた違った、著者自身の思いや12年間の変化が綴られています。

[コンテンツ紹介]
● 連載245回の中から厳選した、80のエッセイを収録。
● 新規書き下ろしとして、2011年から2022年まで、1年ごとの「当時の自分と社会」についての振り返りエッセイ

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Posted by ブクログ

ネタバレ

コロナ禍のせいか、ライフステージが変わりやすい年齢のせいか、ここ3年ほどで人との付き合い方がかなり変わった。
これまでは仲良くする人を選ぶ時に、正直にいうとメリット・デメリットを頭に浮かべて決めていた。
でも今は、「この人と今一緒にいたいか。話したいか」を軸にするようになった。
「誰にどう思われるか」「こうした方が得だ、評価される」という考えではなく、「自分がそうしたい」という気持ちをなるべく優先させたい。

■引用
・わたしたちはとにかく忘れてしまう生き物だから「今」で繋がっていないと、すぐに見えなくなってしまう。あっけないほどに忘れてしまう。だから大切な人とはできるだけ一緒に「今」を過ごすこと。それは「どれだけ長く一緒にいたか」を振り返って確認することじゃなくて、とにかく「今」を一緒にいること。
・ちなみに「夫さん」といっても「?」と聞き返されること必至なので、わたしは必要があるときは名前で呼ぶことにしています。というか、逆をいえば名前も知らない相手の配偶者のことに「旦那さんは元気?」なんて、そんなのべつに言及する必要なんてないってことなのだ。
・職場では色々な 軋轢 があるものだ。「なんでわたしが」と思ってしまうこともあるだろう。だからこの場合は、妊婦と、質問をしてくれた彼女が対立するのがおかしいのであって、会社側がこのふたつの立場をしっかりと受け止め、調停するべきなのだ。だからお互い、相手に不満を向かわせるのではなく、会社に申し立てること。ストレス解消ではない「解決」を望むなら、それしかありません。思いやりは必要ですが、あなたがたは、どちらも間違ってはいない。そのことも、お伝えした。

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2024年01月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

心に残ったのは、
別れのリトマス試験紙(この人を手放すことができるかどうか)
知り合い以上、友だち未満(第三者の価値観や嫉妬やイタズラ心で親友になれたかもしれない人との関係が終わってしまっていたかもしれない可能性)
見知らぬ町で(好きな人のことをずっと好きでいられて、会うたびにそれが確認できる喜び)

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2023年12月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日常生活のささいなことから、社会全体の構造にいたるまで、いろんなテーマに関する川上さんの思いがつまっている。
小説家の先生だから普段からすごいことを考えているのでは、と思っちゃうが、開いてみれば同じ人間同士一般人と大きな差はないのかもしれないなと思った。


いくつか心に残ったエッセイがあるが、一番刺さったのは「彼女のような人ならとくに」かなぁ…
トークショーで20代の女性から「妊婦だって仕事はきちんとしないといけないと思うが、自分もいつか子どもを産んだら、優しくなれるのか」という質問が投げかけられたことについてのエッセイだ。
私は質問者とまったく同じことを感じていて、この質問をするってどれだけ勇気がいっただろうと思ってしまう。筆者の川上さんも、質問者が感じている生きづらさを思いやるようなことを書かれたうえで、余裕がなくて人に優しくできないときもあるよね、それって会社がどうにかすべきじゃない?と答えたと綴られていた。

たしかに、妊婦かどうかに関わらず基本的に人には優しくすべきだ。ではなぜ質問者の彼女が妊婦に注目してしまったかでいうと、社会の中に妊婦には優しくすべきという風潮があること、また余裕がない中でも思いやりを強制される対象が、質問者の場合妊婦というケースに限られるからなのかなと思った。
そう思って顔をあげてみると、世の中には妊婦以外にも高齢者、子ども、障がい者、怪我人、病人などなど、ここには書ききれないくらい気をつかった方がいい人たちがたくさんいる。
気が遠くなる。正直そこまでやってらんないよ!って思ってしまうのは、私だけなのだろうか。
そして、そう思ってしまうのは、私が真面目で余裕がなくて生きづらさを抱えているからなんだろうか。そんな何も気遣うポイントがない私を気遣ってくれる家族や親以外の人は、この世の中にいるんだろうか。
会社だって、すべての従業員が100%気持ちよく働ける環境を用意するなんて難しい。人は足りてないのに仕事は山積み、そんななかでお休みに入る人がいるってなったら、マジか…勘弁してくれ…ってなっちゃうし、会社としてもじゃあ今から人を一人採用してそこに入れようなーんて簡単な話ではない。


といったように、うだうだぐちぐち書いてきたけど、絶対この本で推したいポイントってここじゃないのである。もっとほっこりするお話とかたくさん載っているのでぜひ読んでみてほしいです!!!

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2024年08月16日

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