あらすじ
「犯人だって、好きで犯罪に走ろうとしているわけではありません。必ず迷いがあります。その段階でうちに来てもらえれば、犯罪の発生を未然に防ぐことができます」――そのNPO法人には、罪を犯すか悩む人が相談にやってくる。相談員はそんな犯罪者予備軍たる人々から聞き出した犯行計画の穴を次々と指摘していく。不備を突かれた者たちの殺意は、果たして本懐を遂げるのか。犯罪発生を未然に防ぐ!? 新しい形の倒叙ミステリ短編集!/【目次】「五線紙上の殺意」高校時代の同級生とコンビで音楽活動をする有馬駿。その相方に裏切られた恨みを晴らすために相手を殺すと心に決めている。/「夫の罪と妻の罪」夫が人を殺す瞬間を目撃した妻は、事件が発覚する前に夫を殺し「殺人犯の妻」となるのを避けようとする。/「ねじれの位置の殺人」服部建斗は思いを寄せていた女性を水難事故で失った。彼女が増水した河川敷から逃げ遅れた原因が双子の姉にあると考えた彼は、復讐を誓う。/「かなり具体的な提案」パートナーに暴力を振るわれていた英会話教室の講師を見捨てて死なせただけでなく、その責任を擦り付けてきた知人に、日下部渉は殺意を募らせる。/「完璧な計画」同性の恋人が世間の目を気にしてお見合い結婚をすることになった目黒恵利。見ず知らずの男性に恋人を奪われる現実に耐えられず彼女の殺害を目論む。
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Posted by ブクログ
面白かった〜!
最初は名探偵が殺人犯を追い詰めるように殺人を未然に止める話かと思いきや
初っ端から裏切られ
またしてもこう来たか、が続き
最後まで楽しめました!
含みのある言い方が、結局示唆してるようにしか感じられないけれど
これで本気で相談員が善意で殺人を止めた気になっていたらそれはそれで面白いな(笑)
Posted by ブクログ
自分が悩んでいるときに陥る視野の狭さや思い込みを思い出した。
相談者目線で話が進むので余計に思い出したのかもしれない。
タイトルはフラグだったな。
各話の途中でこうなるかもと推測できたりするけど、そうなってほしくない気持ちを抱えたまま読み進めた。
Posted by ブクログ
犯罪者予備軍の駆け込み寺
殺人の意思がある人のお話5選
人を殺しておいて、自分は今までどおりの暮らしを続けるっていうのは難しいんだねー
5つの話の中でも、計画がうまくいったのは自分にも被害があるパターン。
こちらが殺害を企んでいるとき、向こうもまた殺害を企んでいるのである…
真っ当に生きていくのがどれだけ幸せなことなのか
よくよくわかりました。
Posted by ブクログ
自分は本気で誰かを殺したいと思ったことはないし、もちろん殺したこともないが、計画的に人を殺すというのはかなりのエネルギーを要する行為だろうと想像する。だからこそ、この相談員は指摘する。あなたには、殺せません。
犯罪者予備軍が相談に訪れるというNPO法人。迷える犯罪者予備軍の話に相談員が耳を傾け、犯行を思いとどまらせるのだという。本作収録の5編は、いずれも殺人予備群が登場する。殺人願望に応対するのは、いつもあの男。
この相談員、バカなことはやめなさい、などと感情に訴える訳ではない。誰を殺したいのか? あなたとの関係は? 動機は? 殺害手段は? 淡々と聞き出した上で、計画の穴を指摘する。訪れた殺人予備群たちも、言葉に詰まる。
現実に、捕まることなく知り合いを殺すのは困難だろう。やっぱり無理ですね。相談者たちは納得する。おわかりいただけましたか。相談員は満足気に言う。そして迷える殺人予備群は帰っていく。めでたしめでたし…。
もちろん、石持作品であるから、そんなわきゃーないわけで…。
固定フォーマットという側面はあるものの、殺人予備群たちが、相談の結果、どう行動し、どんな結果を生むかにバリエーションがあるのがミソ。もう書いてしまうが、結局全員、殺人を実行に移す。どいつもこいつも、短慮でいいねえ。
登場人物の誰にも共感させない石持作品の持ち味を発揮しつつ、ピリリとひねりが効いているとでも言おうか。殺し屋シリーズのようなシリーズ化の需要があるのかどうか知らないが、続編が出るなら付き合ってもいいかな。
殺人専門(?)相談員の男が言う通り、殺人なんてやめておいた方がよい。しかし、この男、本当に殺人を思いとどまらせる気があるのか? この男、というよりこのNPO法人は、実は犯罪者予備軍の背中を押していたりして。
Posted by ブクログ
犯罪予備軍の駆け込み寺のNPO法人。その相談室「1」に案内されるのは「人を殺したい」という希望をもつ者だった。中にいる無表情な相談員。その室内でどのような会話がされているのか…
1 五線紙上の殺意
音楽活動で成功した有馬はパートナーの福留を殺したい。福留は有馬の作曲を盗んで才能を潰そうとしていることに気づいたからだ。有馬は福留を殺したいが、警察に捕まりたくはない。警察に捕まらずに済む福留の殺害方法を考えていくが、相談員に次々と反論される。殺害を思いとどまるしかないか、と思うが…
2 夫の罪と妻の罪
「わたし」は三ヶ月前から高校の恩師と不倫関係にあった。先日、夫が恩師を殺害したのを目撃。「わたし」は殺人犯の妻にならずにすむために夫の殺害を考えるようになった。駆け込み寺で相談したが、殺人ではない方法で夫の破滅に巻き込まれない方法を薦められた…
3 ねじれの位置の殺人
服部は同じサークル仲間の大学生同士で行ったキャンプで片想いだった花梨を事故で失う。花梨を死なせた切っ掛けを作った彼女の双子の姉妹 木乃美を殺そうと考える。しかし花梨が亡くなったことで疎遠になった木乃美と接触することも、人知れず殺害することも難しいと相談員に諭される。
窪田は木乃美のために服部を殺そうと考える。木乃美が花梨の死の切っ掛けと作ったことを服部が思い出したら、と考えたからだ。しかし人知れず服部を殺害することは難しいと相談員に諭された。
服部は窪田と木乃美を誘って、花梨の一周忌に事故現場に向かう…
4 かなり具体的な提案
日下部は以前、通っていた英会話教室で一緒に学んでいた岡垣を殺したいと考えている。英会話教室の教師だったアメリカ人女性をDVから救う活動から日下部が手を引いたと仲間に嘘を吹き込み、救うために託したお金を岡垣が着服し、そのために教師は死んだ。
日下部はなんとか岡垣を殺したいが、岡垣はボクシングをやっていて、まともにやれば勝てそうもない。
相談員は教師を救うために依頼していた弁護士に連絡をとり、岡垣からお金を貰っていないことを証明して貰って、岡垣の不実を当時の仲間に伝えて名誉を回復してはどうか、と話すが…
5 完璧な計画
同性愛者の恵利は恋人の佳央里を殺したい。佳央里が故郷で結婚することになったからだ。二人は釣りを趣味にしており、フグの毒で殺すことを恵利は考えている。よく練られた計画で、完璧な計画と言えるのだが、そういう時に限って人は視野が狭くなり、計画が崩れる、と相談員は釘を刺す。しかし恵利は時間をおくことなく、計画を実行してしまう…
石持さんの作品は激情に駆られて、犯行を犯す人間が少ないように思う。心理トリックを含めて、トリック重視の作風だと思う。
この作品の中で、うまくいった、と言えるのは1の五線紙上の殺意だけだ。どの話でも殺人は起こる。思いとどまる、ということはない。私は1と2の作品が好き。3は結末が予想できたし、4も何となく分かった。5もそういう結末になるだろうなあと感じたからかもしれない。
全ての作品に出てくるのが、相談室の中で飲み物を持参する、というくだりだ。何か関係があるのかな、と注意していたけれど、特には分からなかった。私が読み切れてないだけかな。
Posted by ブクログ
相変わらす間突拍子もないもんを書く作家さんだなぁ。一話目を読んで『いや殺すんかーい』とツッコミ、二話目を読んで『いや殺されるんかーい』とツッコミ。で、他にどんなバリエーションが出てくるのかを楽しみに最後まで読んでしまう。飽きさせない本ではある。無理がある、とも思ったけど。
Posted by ブクログ
倒叙ミステリー…でいいのかな?
あらすじを見て、斬新だわ面白そう!と手に取った。
結末もそれぞれで、面白かった。
結構どうでもいい所に引っ掛かって、みんな飲み物お茶なんだなー。私なら午後の紅茶ミルクティー無糖、、とかしょうもないこと考えてたらそのあとブラックコーヒーとか持ってくる人出てきたんで良かった。(何が笑)
相談員の人の日常生活が気になる、頭のいい人だよなぁ。詩的な会話もこなせるし、話してみたい。
世にも奇妙な物語とかで実写化したらすごく良いな!と思った。