あらすじ
TYPE-MOON武内崇氏の“推し”!
王弟、奇智彦(クシヒコ)尊殿下。王室の忌み子。弱小王族。足曲がり。サメの王子。
奇智彦は軍の式典で、帝国から祝いの品として送られてきたそれと対面する。
女奴隷、シニストラ。美しき獣。熊の巫女。おそるべき犯罪者。
意志とちからはここに出会い、王国をあらたな争乱が包み込む。
兄が、死んだ。王が、死んだ。ならば――次の王は、誰だ?
奇智湧くがごとく、血煙まとうスペクタクル宮廷陰謀劇!
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
言い回し、構成が素晴らしい。この架空歴史ロマンからしか得られない脳への栄養がある。
恐らく大正〜昭和初期の日本がモチーフだが世界観の説明は多くない。説明は多くないのだが描写が多いので独特な世界観でありながらするりと頭に入ってくる。
登場人物の掛け合いもそのキャラの教養を感じさせる面白さで個性が立っている。
何より前半から中盤まで奇智彦の視点で物語は進み彼の性格や立ち回り、立場を自然に分かる様に読ませる。そして決意してからの終盤までのシーンはそれぞれの登場人物に視点を移動する。これが奇智彦の格や魅力を底上げするとともに、それぞれの魅力も際立たせる。とても上手い構成だ。
何より終章のカタルシスも良い。歴史ロマンにおける知恵者の主人公のお手本の様なシーンだ。
あえて言うなら荒良女の背景や指針がメイン格であるにも関わらず不透明で、元々これが単巻の物語なら不足を感じるが続巻が出るなら魅力的な余白になる。
まだまだ奥行きを秘めた楽しみな作品。
Posted by ブクログ
著者の受賞インタビューで、石川博品さんの耳刈ネルリを読んで面白く感じたので、小説を書こうと思ったという発言があったのが、本書を読むきっかけでした。
読んでみて、確かに「非実在異国」情緒があふれている点では、耳刈ネルリと類似しているように感じます。
お話は全然似てませんが、キャラ的にいえば、ネルリ(異民族出身で非常識かつ強い)のポジションにいるのが熊ですね。
あと、石川博品さんの最新刊のタイトルが「冬にそむく」なのですが、これは偶然の一致なのでしょうか。
優しくもあり非情でもある主人公、奇智彦の暗躍がこれからも見られるのか、続刊を楽しみに待ちたいと思います。
Posted by ブクログ
こりゃまた特徴的なお話だったなと。登場人物だけラノベ風にした、大河ドラマみたいな印象。この作品を出版できるの、ガガガ文庫ぐらいで無かろうか。
一言で言えば、日本からヨーロッパ、はたまた古代ローマまで、世界観がごちゃまぜになった王位継承戦争の物語。
陰謀が渦巻く王位を巡る争い、そしてその結末に向けての策略が主軸に置かれたお話。それぞれの軸の絡まり具合が絶妙で、結末は中々に唸らせてくれるものであった。
ただ、特殊な当て字の漢字が沢山用いた情報量の詰まった文章で話が展開してく事もあり、かなり好みが分かれる作品であろう。
Posted by ブクログ
世界観が独特。でも、さほどとっつきにくくはない。珍しいタイプの作品だなぁと思った。二巻出るみたいなのをどっかで見たから、ちょっと気になる。
Posted by ブクログ
いやあ面白かった。
宮廷陰謀劇とでも言えばいいのだろうか。
和洋ごちゃ混ぜの架空の世界の王国で、身体障害を持つ王弟奇智彦が直面する兄王の死という青天の霹靂。
自分に降り掛かる暗殺の嫌疑。
そこから始まる彼の策略。
なかなか読み応えがあった。
巧みなのはその構成。
前半ずっと奇智彦視点で物語が進むのに、彼が生き残る覚悟を決める、つまりは陰謀の覚悟を決めるや、その後の視点はずっと彼以外の人になり、彼の真の狙いや心の中は読者も分からない状況に追い込まれる。
だからこそ陰謀劇のゆくへに驚きもカタルシスもあるのだ。
ラストのどんでん返し的真相もその展開にゾクゾクして実にこの物語らしかった。
個人的に一つ残念なのは荒良女の扱い。
あれだけ華々しく登場し存在感も抜群で本書のタイトルイラストにもなっているのに肝心なところでほとんど活躍がない事。
陰謀劇と言う性格上、荒事は向かないのはわかるけれどもう少し彼女を活かした展開が欲しかった。
それにしても奇智彦は優しい。
結局彼は誰一人殺していない。
摂政殿下の治世に幸いあれ!