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Posted by ブクログ 2023年12月19日
第二次大戦後70年を越え、その当時を生きた人々の生の声を聞く機会がいよいよ失われてきていますが、書籍であれば(多少の脚色は覚悟しつつも)それらに触れることができます。
この本の著者は大正の生まれ、戦前・戦中を学生として関東、そして疎開地の新潟で過ごし、山形で終戦の報を迎え、戦後は編集者、そして紀行作...続きを読む家として活躍された宮脇俊三さんです。
戦争関連の本といえばその悲惨さを伝えるためのものが多いですが、宮脇さんはひたすら電車に乗ること(時刻表を読むこと)に熱中しており、作中の東京大空襲の様子など臨場感にあふれながらも淡々と、そして時にはユーモアを交えながら語られるさまに悲壮感といったものはあまりありません。一方で、食料が不足していた日常など、当時の様子をまざまざと読者に知らしめる筆致は、さすが元編集者だと感じました。
戦争に巻き込まれる市井の人々の様子について、気負わずに知ることのできる良い本だと思います。ただし、鉄道に興味がないと読むのはしんどいかもしれません。