【感想・ネタバレ】言葉はいのちを救えるか?のレビュー

あらすじ

どうして人はいつか死んでしまうのに生きるのだろう?
優生思想、障害、安楽死と緩和ケア、子どもたちの自殺、コロナ対策、終末期医療費、HPVワクチン、ニセ医療薬……最前線で取材を続ける医療記者、渾身のノンフィクション。

難病を患いながら詩や画の創作に打ち込む兄弟、重度の知的障害者で一人暮らしを続ける青年、人を生産性で計ろうとする風潮に抗う研究者、安楽死の議論を広めようとする治りにくいがんの写真家、高齢者医療費についての誤解を糺す学者、HPVワクチン接種後の体調不良の苦しみを語る母娘……医療にかかわる問題の最前線を歩き取材してきた記者が、病いや障害、喪失の悲しみ・苦しみを生きる力に変えるべく綴る医療ノンフィクション。わたしたちが直面するさまざまな医療問題が、この一冊に詰まっている。

【目次】
I部■優生思想に抗う
1 難病と生きる──岩崎航・健一さんの「生きるための芸術」
2 知的障害者が一人暮らしすること──みんなを変えたげんちゃんの生き方
3 なぜ人を生産性で判断すべきではないのか──熊谷晋一郎さんに聞く負の刻印「スティグマ」

II部■死にまつわる話
4 安楽死について考える──幡野広志さんと鎮静・安楽死をめぐる対話
5 死にたくなるほどつらいのはなぜ?──松本俊彦さんに聞く子どものSOSの受け止め方
6 沈黙を強いる力に抗って──入江杏さんが語る世田谷一家殺人事件もうひとつの傷

III■医療と政策
7 「命と経済」ではなく「命と命」の問題──磯野真穂さんに聞くコロナ対策の問題
8 トンデモ数字に振り回されるな──二木立さんに聞く終末期医療費をめぐる誤解

IV部■医療の前線を歩く
9 HPVワクチン接種後の体調不良を振り返る──不安を煽る人たちに翻弄されて
10 怪しい免疫療法になぜ患者は惹かれるのか?──「夢の治療法」「副作用なし」の罠
11 声なき「声」に耳を澄ます──脳死に近い状態の娘と14年間暮らして

終章 言葉は無力なのか?──「家族性大腸ポリポーシス」当事者が遺した問い

「しんどいことばかりで生きる気力を失いそうになる時、命綱のように自分をつなぎ止めてくれる言葉。どんな状態にあっても、そのままの自分を肯定し、それでも生きることを励ましてくれる言葉。 もし、そんな言葉を誰かと分かち合えたなら、ひとりで引き受けなければいけない心の痛みが少しでも軽くはならないだろうか。誰かが心の奥底から発した言葉で自分の人生が照らされるなら、ひとりで生まれて、ひとりで生の苦しさを引き受け、ひとりで死ぬ絶対的な孤独が少しでも和らがないだろうか。
そんなことを夢見て、私は今日も言葉を探しにいく。」(「はじめに」より)

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Posted by ブクログ

ネタバレ


正直最初は色々な苦悩を抱えて生きてる人、障害やがん、うつ病などそんな人生を生きてる人たちの物語だと思った。
結論みんな色々あるけど、その物語に答えなどなく生きてるという事実を書いた本だと。

考えさせられることはあるが、結局前向きに生きていてそれを書いた本だと。

ただ最後、遺伝性のがんを患って、精神的な疾患もある山崎さんとの出会いで一変する。自殺してしまうのだ。

本のタイトルの通り言葉で命を救うことの難しさが描かれていると思った。

最後に後ろ向きでしかいられない物語もあるというのがとても印象的だった。

世間からは苦難を乗り越えた物語。
そこには神様から与えられた試練に乗り越えられないものはないという信条。
こういうことを言ってくれることを人は望んでいる。だけどそうはなれない、必ずしもある必要はないと肯定してくれるのが人を救うこともあると思った。

混沌を生きる、そんな瞬間瞬間が人生にあっても良い。それを乗り越えるとかそういうことを考えずにただそれを受け入れて生きる。そんなことを思えた本だなと思った。

人は他人にわかってもらえないと嘆くが自分の状況や自分の思いを自分が受け入れることも必要なことと思った。

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2024年11月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

安楽死、子どもの自殺、ワクチン接種、遺伝性疾患など生死にかかわる話をそれぞれの当事者に取材し章立てしています。

(p34)「社会全体にも『動けなくなったら、ものを食べられなくなったら、生きていても仕方ない』と考える傾向が無意識のうちにある」第一部の第1章の当事者の方のこの言葉が本全体に通底しているように感じられます。
第2章p58に障害の重いお兄ちゃんより軽いお姉ちゃんの方が心配だという話が出てきます。
これは支援制度あるあるだなと思いました。
障害が軽かったりある程度の社会生活が成り立っている人の方が、そのゆえに支援が薄くなったり得られなかったりして何か問題が起きた時にすぐに福祉に対応してもらえないという状況はかなりあると思います。
また障害程度が軽いとは言えないけれども支援のボーダーくらいの人や支援制度の項目に微妙に合わない人もこぼれ落とされがちです。そのために辛い思いをしている当事者や家族は埋もれていても相当いると思います。
これは第3章の中で語られる「見えやすい困難、見えにくい困難」の話にも繋がるでしょう。

第3章「マイノリティ・ストレス理論」という言葉を初めて知りました。健康格差を説明するためのモデルの一つで国や社会の構造に埋め込まれたスティグマの影響を重視する理論だそうです。
構造的スティグマというのは「世間(の偏見)」にも繋がるものじゃないかなと考えながら読みました。

第4章p143(安楽死が出来ないことで自殺しようとする人に死んでは欲しくないから止めると言う話の中で)死んでほしくはないけども死んでほしくない理由ってなんですか?
(略)自分が悲しみたくないというエゴに辿り着く、当事者のことを考えていない、という言葉にははっと(いや正確にはぎょっとかな)しました。安楽死の問題も含め、そこまで突き詰めてこのことに向き合っている人、向き合える人は多くはないだろうと思いました。(自分も)

安楽死について法で定めることは、助からない人を無駄に苦しめないために今後必要になるだろうと自分は思うけれども、そもそも法で定めていいことなのか、誰が決められるのか判断するのかという話し合いが全然足りていないと思いました。
(p153避けられない死に直面した人にとって)生きることはいいことだという価値観ってすごく苦しい、という言葉がとても重かった。
何をしても根治を望めない病に倒れた自分の父を看取るまでの半年のもろもろの辛さを思い出しました。当事者の父の苦しみは多分親子でも分からなかったと思うし、父もはっきり「俺の気持ちは分からない」そう言いました。
今でもきっと分かっていない。十何年経っても考えさせられています。

第6章入江杏さんの著作は昔読んだことがあります。ここでもスティグマについて語られていますが、以前読んだ「家族が誰かを殺しても(阿部恭子 著)」を思い出しました。
被害者遺族が「被害者遺族らしくない」と世間からバッシングされる話があって、傷ついた人をさらに傷つけるような追い打ちがされるのかと当時衝撃を受けたのですが、本章の入江さんの話の中にも講演会などで「気持ちよく語っている」とか「何事もなかったかのように振る舞っている」と言われたとありました。傷を抱えた人の悲しみを伝えること(受け止めること)の難しさや分かちにくさというものを考えさせられます。

第8章は終末期医療についての医療人類学者の見解ですが、知らないことが多くて驚きました。数字をきちんと読み解かなければ騙されてしまうなと思いつつ、いや一般の人には数字だけ見せられてもよくわからないよねとも。後半のオプジーボの話には先日読んだ「ルポ薬漬け(山岡淳一郎 著)」の製薬会社の話も思い出し。医療と国の関係にやはりもやもやとしたものを感じます。
(p275)健康寿命という概念は健康ではない個人の生存権を侵害する危険がある、という言葉が医師ではなく学者の言葉だなぁと。

第11章近頃映画が公開された、生まれてすぐ脳死になられた女の子と家族の話。…想像を絶する支えの記録でこんなふうに暮らしている家族が日本にはいるんだという衝撃がただただ大きかった。
そして最終章の遺伝性疾患の人の話はもう… ひたすらに辛かった。自分も親もきょうだいも子も、皆同じ病に侵されていくということの辛さや恐ろしさはとても想像できないし、この子が自死したことを誰も責められないしどうやったら引き止められたかも自分にはわかりようもなく…
「あなたの人生においてさけて通れない道なのです」という宣言。
なんて重い。

この子の面倒を見て慕われていた社長の言葉が染みました。(p388)「ああいう子には約束事をしたらいけんのです。約束は縛り付けるのと同じです。」こういう人が世の中にはいるということが本章のものすごい救いになっています。

最終章、神様は乗り越えられる試練しか与えない、とよく聞く言葉について触れられています。
病の子供を失ったお母さんの言葉(p393)「だったらわたしは試練などいらない。神様がそれでも試練をくれるというなら、のしをつけて返してやる。神様なんかくそくらえ!」このお母さんだけでなくそんなふうに怒り悲しんでいる人はたくさんいるのでしょう。
自分には子供はいないけれど、この世で一番悲しいことの一つが自分の子供に先に死なれるということなのではないかと常々感じます。

どうしたって生きられないという人はいる。そういう人たちのことをひたすらに考える一冊でした。
しんどい、けれど私には必要な本でした。読めてよかった。

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2025年12月12日

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