【感想・ネタバレ】人を動かすナラティブのレビュー

あらすじ

あなたの「物語(ナラティブ)」が狙われている!
不安や怒りを煽り、社会を分断する「情報兵器」のメカニズム。
新聞協会賞2年連続受賞&ボーン・上田記念国際記者賞受賞の ジャーナリスト、待望の最新刊!

「ナラティブ」という英語の表現がある。
日本語では「物語」「語り」「ストーリー」「言説」などと訳されることが多い。
物語性を示す言葉で、これほど広い意味を持つ単語は日本語にはない。
だが、英語圏では日常的に使われている言葉でもある。

私たちは頭の中で、無意識的にナラティブを語り続けている。
学校や職場に向かう道すがら、「今日はどんな一日にしよう」とか、家路につく電車や車の中で、「明日はどんな一日になるだろう」と思い浮かべながら、いつの間にかストーリーを創っている。ハッピーな物語になる時もあれば、自己嫌悪の物語に終始する時もある。
頭の中に浮かぶナラティブは私たちの感情をかき立て、個人を、そして社会を突き動かす。

私たちはナラティブに囲まれて生きているにもかかわらず、ナラティブがいかなる力を持ち、なぜ人間を虜にするのか、そのメカニズムをほとんど知らない。
本書では、近年国内外で起きたさまざまな事件や現象の背後に潜むナラティブのメカニズムとその影響力を解き明かす。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 昨今、よく耳にする「ナラティブ」。
 前々から気になっていた一冊を、ようやく読めた(買って1年近く手を出せずに置いてた)。
 学びは多岐にわたり、非常に興味ある内容だった。

 主な主張は第一章を読めば分かるかな。
 いや、本書の主旨より、そこでインタビューされる養老孟司さんの言葉、その主旨が重要か。

「ナラティブというのは、我々の脳が持っているほとんど唯一の形式じゃないかと思うんですね」

 そして名著『バカの壁』にある以下の記述も引用されている。

“ 脳内には「一次方程式がある」と説いた。
人間は五感から入力した情報(x)をいったん脳内で回し、運動系で出力(y)して行動に移す。それを方程式に表すと「y(出力)= a(係数)x x(入力)」。「a」は変化する数値、つまり係数で、それぞれの個人が持つ「現実の重み」なのだという。“

 要は、人心を操るナラティブ、それを駆使する集団は、その係数をいかに自分に都合の良いものにしていくかを考えて、テを変えシナを変えて、我々にアプローチしてくるという話を、後段にかけて、縷々と綴っていく。

 古くは、民族につたわる神話や民話。そして、現代はSNSを駆使し、しかも、人の脆弱性につけ込んで、上記の「a」(変数)を、発信者側に都合いいように「下地」を作ることからはじめるという周到さが不気味だ。

「デジタル時代の昨今においては、カルト教団や詐欺師が勧誘対象者にやってきたような「聞き取り」は、SNSに公開されている「いいね」の大量分析で可能だ。あとはそれをもとに、特定の標的に刺さるであろう「だましのナラティブ」を生成してSNSに流し、標的に被爆させるだけだ。」

 その実例が、2016年には英国のEU離脱、ブレグジットだし、先の米大統領選ではトランプ氏の勝利を後押ししたナラティブ戦略があったと本書は分析する(というか、ケンブリッジ・アナリティカという企業が行った所業を暴露した著書の分析を紹介している)。

 本書そのものの分析より、養老さんの著書などのように、あれやこれやの書籍や関係者の証言、意見の引用が多い。新聞記者の記す著書らしいとも言える一冊。

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2024年09月18日

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