あらすじ
死への道はあまりにも近く、生への道はあまりにも遠い……あの太平洋戦争のさなか、ひたすら“立派な軍国少女”になろうと努めた女学生の青春がここにある。激しい空襲をうけ、次々にかけがえのない肉親や友人を失いながら、なお「お国のため、戦争に勝つため」に生きた主人公、大泉節子。彼女の努力の行きつく先は、結局愛をも美をも滅ぼしつくすことでしかない。そのひたむきな純粋さ、無残さが読者の心を深くとらえた芥川賞受賞作。
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Posted by ブクログ
戦時下を必死に生きた女学生の物語。
横浜の空襲が描かれていて、この時代に生まれなければ平和に過ごせたであろう主人公の苦しみと無念を思い絶句した。
懸命に生きる人々が選んだ道はどれも尊重されるべきであり、そういう世の中であって欲しい。どれを取っても正解がなく、途方に暮れる。
お国のため、戦争に勝つために、家族友人そして自分の体の健康から心まで、全てを捧げなければならなかった主人公が不憫でならない。
Posted by ブクログ
とても素直で、とても勤勉で、
だからこそ太平洋戦争の渦中で戦争を全面的に支持して、
戦争の終わりに悲しい結末を選ばざるを得なかった女学生の話。
太平洋戦争を主題とした小説の中では、
これが一番心に残っている。
親や学校に「素直ないい子」として褒められて
その期待に沿うように頑張っている子は、現代でもそうだけれど、
世間の常識とかで、むしろ、ものすごく捻じ曲がらざるを得ないことが多いと思う。
捻じ曲がって、苦しくて、その状態が大人のいう「素直な良い子」となる。
「素直な良い子」だったから、どうしても別の道を選ぶことのできなかった、主人公。
戦争という狂った世界を作り上げた大人たちが、
心の底から憎くなる。