あらすじ
ヒマラヤ山中の鉄壁の要塞に隠された最新鋭原子力発電所「アグニ」の秘密をさぐる使命を与えられたのは、日本の商社マン、しかも出世の望みを絶たれた落ちこぼれの小市民的会社員4人。相手はCIA特殊グループに中国情報部という名うてのプロ集団である。鍛えられた技術もなく、ついに追いつめられた主人公たちは、実行不可能な出来事に果敢に挑戦して、“007”ばりの奇想天外な活躍をする。SF界の異才が描く愛と冒険にみちたスーパー・アドベンチャー小説。
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Posted by ブクログ
インドと中国の国境に作られた原子力発電所「アグニ」において、日本から出向した亜紀商事の社員を含む、技術者のほとんどが落盤事故に見せかけた爆発によって殺された。生き残った工藤は、原子力発電所内に、CIAが仕掛けた爆弾が存在していることを知る…。
山田正紀の作品の中でも、冒険小説風の風合いが強くて読みやすい、スパイvsスパイもの。CIAと中国、ソ連のKGBが序盤では複雑に絡み合い、大丈夫か?と思ったところで、工藤たちの行動がスタートする。
工藤たち5人については、あれ?それでいいの?という程度の訓練ぶりに、ほとんど活躍すること無くという感じで、むしろその前のサラリーマン時代に焦点が当てられている。同様の作だと半村良のような、ハードボイルドやSFにおける生活感といったものが、サラリーマンの悲哀とともに描かれている。
終盤の1/4くらいで、ようやくメインの活躍が始まるわけで、ハードボイルドアクションを期待した人たちにとっては、少々消化不良になるかもしれない。しかし、個人的にはこれくらいでいいんじゃないのかという気はする。戦車などの記述が少しだけでてくるが、このあたりは作者の趣味なのであろう。
後半になればなるほど、コメディーや悲喜劇の様相を呈してくる。タイトルからめんどくさそうな話だなあと感じている人は、それほど構えなくていい作品だ。
最後に「ストーリーの都合上、実際の原発の構造とは異なっております」というところもクスっとくる。逆にいうと、機械など色々、よく調べてあるんだよね。最近の作家に足りていないのはそういうところ。
(余談)
落語家の息子で苗字「桂」はないやろ。
文庫書籍版が見つからないbooklog。どうにかならんのかな。