あらすじ
2022年5月に、日本復帰50年を迎えた沖縄。これを節目として、沖縄の歴史とともに生きてきた人々の来し方を聞き取って文章に残そう、という沖縄タイムス社の企画が結実したのが本書である。沖縄タイムス紙上での募集に応えた「聞き手」たちが、それぞれ思い思いの「語り手」を選び、その人生を聞き取って生活史として仕上げた。紙上に、およそ半年以上にわたって連載された85篇に加え、新聞には掲載しなかった15篇を合わせた、計100篇の生活史がここにまとめられている。巻頭と巻末にはそれぞれ、監修者のまえがき、あとがきを収録する。「私は本書のどの語りの、どの部分を読んでも、深い感慨と感動をおぼえます。ここには語り手たちが経験した「沖縄の戦後」が、確かに存在するのです」(岸政彦、まえがきより)「数多くの沖縄の人たちから聞き取りしてきたにもかかわらず、庶民の生活の奥深くに分け入り、心の襞に触れるところまでは、聞き取りはしていなかったか、と思わざるを得ない語りにも出会えました」(石原昌家、あとがきより)
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Posted by ブクログ
2021年12月から「沖縄タイムス」で始まった
「沖縄の生活史」プロジェクト。それは、現代の伝承。
100名の聞き手が100名の語り手から聞いた、生活史の数々。
・はじめに 岸政彦 ・おわりに 石原昌家
100通りの沖縄生活史は、実際に体験した人々の経験と記憶。
一人につき1万字の飾らぬ言葉には20代から99歳の、
戦前・戦中の生活、戦後の沖縄が日本ではなかった時代、
沖縄復帰後と現代の、複雑で様々な思いが込められている。
日本軍の兵士、空襲、手榴弾、身近過ぎる死、捕虜、収容所、
移民と沖縄への帰還、終戦後の本土から沖縄へ帰るまでの苦難、
マラリア、ハンセン病、本土での差別、パスポート、
通貨、米軍関係の仕事、アメリカの文化、ベトナム戦争、
米軍の事故や事件、コザ暴動、復帰運動と復帰反対運動、
730、沖縄本島と離島の違い、標準語と方言、教育、密貿易、
密航、台風、本土から沖縄への結婚、現代での紆余曲折、
「ちむどんどん」、悲喜こもごもの家族や親族との関係など。
当事者と近辺にいた者、どちらも生の声であり、重要な証言。
復帰の日の記憶が覚束ないほどに、生きるのに必死だったこと。
本の重みと同時に、言葉の重みがずしりと伝わってきます。