あらすじ
子どもの夜泣き、核家族の不幸、汚職や賄賂、陰謀論……
すべては進化のせいだ!
斯界の権威が大絶賛!
「洞察に満ちた科学的理論と興味深い逸話の詰まった快作」
――リチャード・ドーキンス(進化生物学者、『利己的な遺伝子』著者)
「協力がいかに大切かについて書かれた、素晴らしい本」
――アリス・ロバーツ(人類学者、『人類20万年 遙かなる旅路』著者)
「私たち人類についての考え方を変える」
――ルイス・ダートネル(宇宙生物学者、『この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた』著者)
「世界をよりよく理解する方法だけでなく、世界をどう変えるかについても示してみせる」
――マシュー・コブ(動物学者)
「人間がそうであるべきほど協力的でないのはなぜかを知りたければ、答えは本書の中にある」
――ロビン・ダンバー(進化生物学者、『友達の数は何人?』著者)
■本書で得られる知見
・多細胞生物が誕生したのは「協力」が利益をもたらすためである
・ミツバチやアリのコロニーは「超個体」のように振る舞う
・母親と胎児は栄養分をめぐって争う
・姑が嫁の子育てを手伝うのにはわけがある
・詐欺やたかり、汚職や賄賂、身内びいきも協力の産物である
・パラノイア(妄想症)や陰謀論の背後にある進化論的な理由
・平等主義だった人類の社会に独裁制が誕生したのはなぜか?
・集団の人数が増えると反乱は起きにくくなる
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
生物学の視点から“協力”行動についてを人類を含む生物全般から研究している一冊です。
単細胞の集合体である我々自身についての説明から始まり、他者への利他的行動、個体とがん細胞の関係、配偶と育児の仕組み、動物界の協力例、善い協力と悪い協力、評判と見栄の関係…などへ展開していきます。
協力とは個体が生き残る確率を上げるための保険であり、人間の社会生活におけるそれも仕事を軌道に乗せるための保険などとして役立っています。
大きな成果を得るためには個体より集団での協力が不可欠であり、集団であることの不利益と比べて協力による利益が勝る場合に問題なく機能します。
しかしこのバランスが崩れれば反乱が起き、悪意に基づく協力が組まれれば多数の犠牲により少数が成功を掴む結果も有り得るのです。
協力とは道具と同じく扱う者次第で過程と結果が大きく異なる諸刃の剣であることが、様々な例を用いて解説されています。
日頃意識せずに行っている“協力”行動ですが、凄まじい力を持っているのだなと考えさせられました。
Posted by ブクログ
まず、読み始めて最初に思ったのは、日本語のタイトルがミスリードかもしれない、ということ。『「協力」の生命全史」』とあるから、社会学や人類学のような視点かと思うと、筆者の専門は進化論や行動学のような生物学寄り。(「生命全史」という箇所からそれを読み取らないといけなかったかも。)
とはいえ、第4部などで社会学や人類学の側面からの記述がされている。
筆者の書き口は学術的な色を強く感じた。研究の設計からそこから分かった関係、しかし、それは相関関係であって、因果関係ではない。など、安易に断定しない点でとても信頼できる。
その一方で、文章がどうしても冗長的になってしまうので、少しメッセージが受け止めにくいこともある。
総じて、「協力」ということを進化論的・遺伝学的に迫る良い本だった。これが気に入れば、ルトガー・ブレグマン氏の『Humankind 希望の歴史』がより多面的に「協力」を論じているように思うので、おすすめ。