あらすじ
小さな幸せが暮らしの糧になる──当代一の売れっ子作家・曲亭(滝沢)馬琴の息子に嫁いだお路。横暴で理不尽な舅、病持ち、癇癪持ちの夫とそんな息子を溺愛する姑。日々の憤懣と心労が積もりに積もって家を飛び出たお路は、迎えに来た夫に「今後は文句があればはっきりと口にします。それでも良いというなら帰ります」と宣言するが……。修羅の家で、子どもを抱えながら懸命に見つけたお路の居場所とは? 直木賞作家の真骨頂、感動の傑作長編。(解説・植松三十里)
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
馬琴の嫁。彼が失明した後、彼の代わりに『南総里見八犬伝』を代筆した人物。
彼女の生涯で一番言われる言葉。
けれど、彼女はそれだけの人物ではなかったという事を知られた事は幸いでした(^^)
癖のある家族の中で最も嫌っていた馬琴の為に代筆をすることによりわかる彼の人柄。
面白かったですし、改めて思うこともありました。
本を読めるという事はなんて贅沢なことなんですね、しみじみ。
楽しかった!
Posted by ブクログ
直木賞受賞後第1作。思っていたよりも新しい作品だった。
朝井まかてさんの馬琴を読んでから読んだのだが、こちらはお路の視線で描かれているので、対比するととても面白かった。
以下ネタバレの内容を含みます。
これは馬琴の長男の嫁となった、お路の目線で描かれた馬琴の家の様子だ。嫁というだけではない、まさにお路のいる場所としての家。夫の宗伯を亡くしてからも、この家に居続ける決心をしたのはなぜなのか。「横暴で理不尽な舅、病持ち、癇癪持ちの夫とそんな息子を溺愛する姑」のいるこの家に。
お路の八犬伝への批評は辛辣だ。女の描き方が大雑把で気に入らない。小難しい言い回しも馴染めない。舅になじられながら口述筆記させられて憔悴するのに、ついに最後までやり遂げ、さらに仮名本まで著すようになる。
お路なしでは成り立たなかった八犬伝の完結。それに至るまでのお路の心根と夫婦の在り方、子供への愛情、舅や姑、夫の介護、お路の「曲亭の家」での人生が、生き方を形作っていくことを、鮮やかに描き出す。