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Posted by ブクログ
先週の大学入学共通テストが開催された、。数多くの受験生が苦しんでいるのが英語。
「入試問題と参考書からみる英語学習史」というこれまでお目にかかったことのないのが今回の本。
読んでいて不思議なのは政財界の要請で文部科学省が「実践的コミュニケーション能力」重視だ。
英会話、英会話という「英会話市場主義」あるいは「英会話カルト教」がはびこることになったが、果たして昔と比べてオーラルコミュニケーションとやらは伸びたのかな。
リーディングやリスニングで、正確に理解できないで何を話したり書いたりできない。
外国語学習に文法を理解するのは、交通ルールを知らずに車を運転するようなものだ。
青木常雄(1886-1978)という戦前から戦後を通じて英語教育会の重鎮の言葉が『新制・英文解釈精義 改訂版』(1956年)の「はしがき」に載っている。
読む書くためにも聞き話すことがたいせつなのである。元来この四つを別々に考えるのがおかしいのであって、もともと一体不可分のものであり、それが生きた言葉なのである。したがってよく読める、よく書けるとは、当然よく聞ける、よく話せることを意味している。
一斉を風靡した駿台予備校の英語講師を長年務めた伊藤和夫は『伊藤和夫の英語学習法』で次のように述べている。
英語の入試は、与えられた英文をいかに読み解くかではなくて、与えられた大量の英文の中から要求され情報をどうやって見つけるか、必要でない所をいかに読まずにすますかという競争に変わった。
学習参考書は、終わったらゴミとして捨てられる運命にあるが、英語学習に必要不可欠で、明治から昭和の英語学習者がどのように学んでいたのか分かる貴重な資料だ。
文科省の「実用的コミュニケーション能力」教は、いつになったら見直すようになるか。
受験生のみならず小学校から高校までの学生と教員がこれからも振り回され続ける。
Posted by ブクログ
西洋の知識を吸収するために英語を学ぼうとした明治時代から、受験地獄が社会問題となる大正、戦前、敵国語とされた戦中を経て、大学全入時代に突入する現代までの、英語の入試問題、参考書、予備校、通信教育の歴史。
帯には「『本音の』英語学習史」、あとがきには「『裏の』現実」と書かれていて、これまで英語教育学でもなかなか習ったことのない、日本人としての英語学習に焦点をあてている点が、まずユニークで面白い。受験勉強を経験し、例えば伊藤和夫の参考書を使って勉強したことのあるおれのような読者にとっては、受験英語に対する色々な「思い」を感じながら読むことができる。
今でこそ、ピンからキリまで参考書が出回っているように感じるが、名著、と言われ、何十年にも渡って版を重ねた、重みのある参考書が多く紹介されている。ぜひとも読んで、勉強したいと思った。戦後のものだけでも、復刊されたという山崎貞の『新々英文解釈研究』や伊藤和夫の『ビジュアル英文解釈』、多田正行の『思考訓練の場としての英文解釈』、佐々木高政の『和文英訳の修行』、古藤晃編『クラウン受験英語辞典』など、手にしてみたい。
随所に、昨今のオーラル重視の学習指導要領批判が展開されている。著者のような先生が、文科省のご意見番になったりすることはないのだろうか、と思う。(12/02/26)