あらすじ
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★受験英語は日本人に何をもたらしたのか
「受験英語」といえば、今までその負の面ばかりクローズアップされてきたが、その正の部分にも光をあて、英語の入試問題、参考書、受験生をキーワードに、日本人の英語学習の歴史の本当の姿を鋭く描き出し、その多様な遺産を検証する。
特に英語参考書に注目し、懐かしの「山貞」シリーズをはじめ、「赤尾の豆単」や森一郎の「でる単」(「しけ単」)、受験の神様・伊藤和夫の数々の参考書など、歴史的な価値の高い参考書の中身を検討し、豊富なエピソードとともに紹介する。
貴重な図版を多数掲載。
■目 次
プロローグ 受験英語の巨星・伊藤和夫
第1章 受験英語の誕生(1873~1918)
1.英語入試のはじまり
2.受験用英語参考書のはじまり
3.予備校と通信教育の世界
4.受験英語の弊害と入試改革
第2章 英語受験参考書の進化(1900~1910年代)
1.英文解釈法の発明
2.英単語・英文法・英作文参考書の進化
第3章 受験英語の過熱と拡大(1919~1936)
1.受験地獄と受験生
2.受験英語雑誌と通信教育の発展
3.英語参考書の発展
第4章 戦時体制と受験英語の受難(1937~1945)
1.戦時体制下の入試
2.通信添削から受験情報産業へ
3.戦時体制下の英語参考書
第5章 戦後の受験英語(1946~2010)
1.戦後の入試風景
2.英語入試問題の変化
3.戦後の定番参考書
第6章 戦後のヴィンテージ英語参考書
1.英文解釈のヴィンテージ参考書
2.英作文のヴィンテージ参考書
エピローグ 受験英語はどこへ行く
【資料ナビ】
1-1. 戦前の学校系統図/1-2. 旧制高等学校・専門学校の制度と沿革 /1-3. 明治期の進学校/5. 戦後における東大合格者数上位10校の変遷
【人物ナビ】
1. 浅田栄次/2-1. 田中菊雄/2-2. 南日恒太郎/2-3. 山崎貞/2-4. 深澤由次郎/2-5. 井上十吉/3-1. 古谷専三/3-2. 小野圭次郎/
3-3. 岡田實麿/3-4. 青木常雄/4. 赤尾好夫/5-1. 多田正行/5-2. 佐々木高政/6-1. 荒牧鉄雄/6-2. 柴田徹士
主要参考文献
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
先週の大学入学共通テストが開催された、。数多くの受験生が苦しんでいるのが英語。
「入試問題と参考書からみる英語学習史」というこれまでお目にかかったことのないのが今回の本。
読んでいて不思議なのは政財界の要請で文部科学省が「実践的コミュニケーション能力」重視だ。
英会話、英会話という「英会話市場主義」あるいは「英会話カルト教」がはびこることになったが、果たして昔と比べてオーラルコミュニケーションとやらは伸びたのかな。
リーディングやリスニングで、正確に理解できないで何を話したり書いたりできない。
外国語学習に文法を理解するのは、交通ルールを知らずに車を運転するようなものだ。
青木常雄(1886-1978)という戦前から戦後を通じて英語教育会の重鎮の言葉が『新制・英文解釈精義 改訂版』(1956年)の「はしがき」に載っている。
読む書くためにも聞き話すことがたいせつなのである。元来この四つを別々に考えるのがおかしいのであって、もともと一体不可分のものであり、それが生きた言葉なのである。したがってよく読める、よく書けるとは、当然よく聞ける、よく話せることを意味している。
一斉を風靡した駿台予備校の英語講師を長年務めた伊藤和夫は『伊藤和夫の英語学習法』で次のように述べている。
英語の入試は、与えられた英文をいかに読み解くかではなくて、与えられた大量の英文の中から要求され情報をどうやって見つけるか、必要でない所をいかに読まずにすますかという競争に変わった。
学習参考書は、終わったらゴミとして捨てられる運命にあるが、英語学習に必要不可欠で、明治から昭和の英語学習者がどのように学んでいたのか分かる貴重な資料だ。
文科省の「実用的コミュニケーション能力」教は、いつになったら見直すようになるか。
受験生のみならず小学校から高校までの学生と教員がこれからも振り回され続ける。
Posted by ブクログ
西洋の知識を吸収するために英語を学ぼうとした明治時代から、受験地獄が社会問題となる大正、戦前、敵国語とされた戦中を経て、大学全入時代に突入する現代までの、英語の入試問題、参考書、予備校、通信教育の歴史。
帯には「『本音の』英語学習史」、あとがきには「『裏の』現実」と書かれていて、これまで英語教育学でもなかなか習ったことのない、日本人としての英語学習に焦点をあてている点が、まずユニークで面白い。受験勉強を経験し、例えば伊藤和夫の参考書を使って勉強したことのあるおれのような読者にとっては、受験英語に対する色々な「思い」を感じながら読むことができる。
今でこそ、ピンからキリまで参考書が出回っているように感じるが、名著、と言われ、何十年にも渡って版を重ねた、重みのある参考書が多く紹介されている。ぜひとも読んで、勉強したいと思った。戦後のものだけでも、復刊されたという山崎貞の『新々英文解釈研究』や伊藤和夫の『ビジュアル英文解釈』、多田正行の『思考訓練の場としての英文解釈』、佐々木高政の『和文英訳の修行』、古藤晃編『クラウン受験英語辞典』など、手にしてみたい。
随所に、昨今のオーラル重視の学習指導要領批判が展開されている。著者のような先生が、文科省のご意見番になったりすることはないのだろうか、と思う。(12/02/26)