あらすじ
空き巣に入った家で目を覚ました男。仲間は金と共に姿を消し、住人には顔を見られてしまった! いまや足枷となったその家で男は、不遇な過去を振り払うために包丁を握り――さえない男の煩悶をリアルに描く表題作の他、訳も分からず妻に去られた夫や、海に消えた父を待つ娘など、様々な「隣の人生」を鋭く浮き彫りにする。
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Posted by ブクログ
これが純文学だったことに気づいてびっくりする。帯だけ読んで、てっきりエンタメかと思っていた。
叩く
受験問題とか、国語のテストに出そうな話。
佐藤の心理を答えさせられそう。
闇バイトで強盗をした佐藤。組んだ塚田に殴られ、気付くと被害者の老婆と共に現場に取り残されていた。顔を見られた老婆を助けてやるか、殺すか、人生の折々を思い出しながら佐藤は悩む。
老婆の家の鳥かごには、2羽の小鳥がいた。佐藤は鳥Aと鳥Bと名付ける。鳥Bは片側の風切羽がまだらに抜けていた。
悩んだ佐藤は、50円玉を畳に落とし、表が出たら殺すと決める。しかし落とす前に鳥の悲鳴が。見ると鳥Aが鳥Bの風切羽を毟っているのだった。
佐藤は鳥かごの出入り口を開け、窓の外に出す。鳥Bは夜空へ飛び立った。鳥Aが飛び立つ素振りを見せたとき、佐藤は鳥Aを引きずりだして出刃包丁で頭を切り落とす。
佐藤は老婆を殺すため、階段を降りていく。
アジサイ
田村が夜遅く自宅に戻ると、テーブルに しばらく実家に帰らせていただきます という妻の置き手紙が。
原因もわからず、実家の義両親も妻と仲立ちをしてくれない。
風力発電所
風力発電所の風車を見るために、東北の村の民宿に泊まった作家。インフラも整っており、住みやすそうだと感じるが、夜中に規則的な吐息のような音が。その耳障りな音で眠ることができず、外に出る。
それは風力発電の音だった。そしてどこからか漂う腐臭。臭いのもとを辿ると、風車の下に散らばっているオジロワシの羽と臓物を見つける。
東京に戻った作家は、電気の恩恵にあずかりながら、風車の風景を思い出すのだった。
埋立地
ホラー脳なので、何も起こらなくてびっくり。
こんなん、すごく怖いでしょ。
浩一が、息子の浩太に話した子どもの頃の冒険譚。
浩一たち小学3年生の4人は勝手に埋立予定の工事現場に入り、横穴を見つける。ペンライトの灯りを頼りに入っていくが、ペンライトが点かなくなり、完全な暗闇に。浩一たちは怯えながら入り口に戻ろうとする。
海がふくれて
ジブリが映画にしそう。読後感が爽やか。
災害で父が行方不明になっている琴子は、瓶に父への手紙を入れて海に投げる。
幼馴染のソウタと付き合いはじめ、鍵のかかった灯台に忍びこんだり、犬のキナコを連れて散歩したりする。
雨の日にソウタと連絡がつかず、琴子は海辺に探しに行くが、そこに津波がくる。琴子は波にさらわれつつも逃げ、灯台に逃げ込む。
助かった琴子は、この津波で父の頭骨が流されてきたことを知る。