あらすじ
沖縄県・西表島のカマイ(リュウキュウイノシシ)から本州のクマ、シカ、イノシシ、ノウサギ、ハクビシン、カモ、ヤマドリ、北海道・礼文島のトドまで各地の狩猟の現場を長年記録してきた“田中康弘渾身の日本のジビエ紀行”完全版!!
日本各地の狩猟やジビエにまつわるレポートを豊富な写真をまじえて伝えます。
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日本列島へ人類が入ってきたルートは、主に3つあると考えられている。
サハリン経由で北海道、半島経由で九州北部、そして島伝いで九州南部である。
偶然であるが、今回の旅はこれらに重なる部分が多い。
日本人がどこから来て何を食べて日本人になっていったのか。
もちろん、そんな高尚な学問的探求心ではなく、知らない土地を歩き、話を聞き、そして食べて理解したいのである。
“論より証拠”ならぬ“論より食”なのかもしれない。
(「はじめに」より)
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■内容
【はじめに】肉を食べに南へ北へ
1 南の島のカマイ 西表島(沖縄県八重山郡)
2 秘境の村のイノシシ猟 椎葉村(宮崎県東臼杵郡)
3 山中のシカ肉のレストラン 宇目(大分県佐伯市)
4 貉と呼ばれるタヌキ・アナグマ 長湯温泉(大分県竹田市)
5 畑荒らしのハクビシン 穴内(高知県安芸市)
コラム:肉を喰ってきた日本人
6 北陸のカモ撃ち 白山、小松(石川県)
7 シカとイノシシの箱罠猟 大津(滋賀県)/岡崎(愛知県)
8 シカの内ロースにやられる 川上(長野県南佐久郡)
9 肉も喰うけどモツも喰う 丹沢(神奈川県)
10 ツキノワグマの狩りと食 阿仁(秋田県北秋田市)/白山(石川県)/奈良俣(群馬県みなかみ町)
11 ウサギは何処へ行った? 阿仁(秋田県北秋田市)
12 厳寒の礼文島のトド猟 礼文島(北海道礼文郡)
【おわりに】肉食の旅を終えて
【文庫版あとがき】
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
北は礼文島のトド猟から、南は西表島のカマイ(リュウキュウイノシシ)猟まで、日本全国の狩猟人たちは狩った獲物をどのように食してきたのか。
へぇ~西表島にイノシシがいるのか、知らんかった。
日本全国、北から南へ。
地域と獲物によって狩猟の仕方が全然違う。
西表島だたとボートで川を移動してジャングルの奥に向かう。
礼文島のトド猟は小型船から銃でトドを狙う。
(鳥獣保護法でクルマから撃つのは禁止されているが、船はどうなんだろうと調べてみたら5ノット以上の航行中のモーターボートから撃つのはダメなのね)
そしてやたら全国どこでも生肉を食べたがる。
イノシシに、鹿にと解体したその場で「刺身が美味い!」と食べているが、取材先の一つのある村では翌日に筆者含め半数が食当たりしているので、生肉はダメでしょ、やっぱり。
とりあえず、狩猟肉はなんでもすき焼きにすれば美味い、と書かれていたので、参考に昨日はイノシシ肉をすき焼きにして食べました。
取材先のひとつ、丹沢の寄(やどりき)地区のハナシで、内臓も全部洗ってモツ鍋で食べるというので、今度小さいイノシシが獲れたら試してみようと思う。
ちなみにこの寄地区には次の週末にトレイルランナーIと一緒に、まつだハンター塾に参加するので行ってきます。
Posted by ブクログ
阿仁マタギとの長い付き合いをベースに、狩猟と自然をテーマに写真を撮り、文章を綴る筆者による「日本人と食肉文化」について書かれた本です。熊、猪、鹿、狸、ハクビシン、穴熊、鴨、トド…。バラエティ豊かです。
僕は筆者である田中康弘氏の『マタギ 矛盾なき労働と食文化』(エイ出版社)を読んで以来、ずっと追い続けてきたものですが、本書で田中氏が掲げたテーマは「日本人と食肉文化」であり、北は北海道の礼文島から南は西表島に至るまで全国各地を回って写真を撮りながらそれぞれの地域に根付いた食文化と人々を描いたルポルタージュです。
僕も筆者が主張されるように
「日本は元々仏教国で、肉食文化が無かったかのような勘違いをされる方も多い」
といわれる中の一人で、食肉文化が世に広く根付いたのは明治時代以降のことだろうと思っていたのですが、それはあくまでも「表向き話」であって、「殺生禁止」とは裏腹に、肉食は少なからず日本国中で行われ、現在にも日本全国各地に残る食文化や昔話でも明らかであると主張し、写真と文章で綴っていくのです。
本書の中には人によっては目を背けたくなるような捕獲した野生動物に止めをさす、あるいは解体現場の写真が多数掲載されているのですが、本来肉を得る事は自らの手で動物を屠殺し、血と脂にまみれて解体し、食肉に形成して初めておいしく食べることが出来るのだという「当たり前」のことを改めて教えてくれるのです。
出てくる動物もこれまたバラエティー豊かなものでありまして、熊、猪、鹿、狸、ハクビシン、穴熊、鴨、トド…。彼らの命をおいしく「いただく」ためにそれぞれの地域に生きる人々が工夫を凝らして解体、調理し、仲間や家族を囲んで味わう姿はまだまだ自分には知らない世界もあるのだということを再認識してくれるものでした。
自分には出来そうもないだけに、余計に惹かれてしまいます。
※追記
本書は2023年5月17日、山と渓谷社より『ヤマケイ文庫 完全版 日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?』として文庫化されました。
Posted by ブクログ
田中康弘『完全版 日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?』ヤマケイ文庫。
日本列島を南から北に移動し、各地の狩猟現場を巡りながら、実際に狩猟で得た肉を食べながら、日本人が何を食べてきたかを明らかにするノンフィクション。
肉でも野菜でも米でも、何かを食べるということは命を頂くという行為だ。それを念頭に、それぞれの土地に根付いて来た特色のある食肉文化は将来に残すべき大切なものであろう。
元々、マタギ文化に興味を持っていたので、なかなか面白い内容だった。
沖縄県西表島島に生息するカマイと呼ばれるリュウキュウイノシシ。本州のイノシシと比べると小型のようだ。イノシシが生息する北限が秋田県の栗駒山系ならば、南限が西表島らしい。
さらには、宮崎県椎葉村のイノシシ猟、大分県のシカ肉レストラン、タヌキ、アナグマ猟、高知県安芸市のハクビシン、石川県のカモ猟、秋田県のツキノワグマ、ウサギ、最後には北海道礼文島のトド猟が紹介される。
イノシシ肉は何度か食べたことがあるが、あの脂身の美味さ、赤身の濃厚な味わいは忘れられない。シカ肉は一度だけ焼肉で食べたが、ラム肉と牛肉の中間のような淡白な感じで、美味いなと思った。ツキノワグマの肉は秋田でクマ汁を食べたことがあるが、脂がしつこく余り好みではなかった。トド肉は北海道旅行のお土産で缶詰を購入し、食べたことがあるが、クジラ肉の缶詰のようだった。カモ肉はジビエ料理で食べたことがあるが、地鶏や軍鶏などよりも味わい深く、美味いと思った。
ちなみに今、住んでいる福島県の中通りの田舎町にはイノシシが棲息しているが、福島第一原発事故の影響で放射能が高く、未だに食べることが出来ない。それでも、イノシシが畑や田んぼを荒らすため、害獣駆除が行われているが、行政が買い取る価格は僅か2万円ほどと言う。
定価1,155円
★★★★