あらすじ
母と義父とに連れられて幼い頃行商の旅に暮した体験を明るく牧歌的に描き切った短篇「風琴と魚の町」、つましく生活する一組の夫婦の愛情を謳う「清貧の書」、転機を求めてのパリ旅行を素材とした「屋根裏の椅子」、男と女の後姿に、あるが儘の人生を見る客観小説「牡蠣」等。名作『放浪記』を力に、作家はいかに飛躍をとげたか。〈宿命的放浪の作家〉林芙美子の代表的初期短篇7作。
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Posted by ブクログ
林芙美子氏というと、森光子さんの放浪記の舞台のでんぐり返りというイメージしかなく、これまで避けてきた私が、この本で4冊目。良くも悪くも流行作家と呼ばれてきたであろう氏のことが少しずつ分かってきたような気がする。
この短編集では、主人公や彼女を取り巻く人々の生き様や生活状況(広くは社会の状況-貧困、女性の置かれていた立場など、いろいろな人権上の課題など)が知れ、読み進めるのが辛くなる時が何度かあったが、やめられない自分もあった。
社会が変容していく中で、未来も見えにくくなっている今。昔を知るべく、建物や風景さえもなくなり変化していく中で、文学として当時の有り様を残された氏の業績は大きいと感じた。