あらすじ
アフリカを「援助」する時代は終わった。新興国をはじめ、世界中が凄まじい勢いで食糧、石油やレアアースといった鉱物資源を呑み込んでいく現代。これらの需要に対する供給源として、アフリカの重要性は突出している。いまアフリカとの経済連携は、中国が一頭地を抜く。世界各国がそれを追うなか、さらに大きく遅れている日本に挽回の余地はあるのか――。広大なアフリカ大陸を舞台に、世界の未来と命運とを描き出す。
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Posted by ブクログ
-アフリカ経済の急成長はアフリカを必要とするようになった世界経済の写像
-開発途上国が世界第二位の経済大国になる=中国固有の問題に世界が翻弄される不安定な状態
-中国は過剰生産だが、国内安定のために高度成長を維持せねばならない。これにより、雇用が増えて貧困層が減るとともに財が安くなり、人類が豊かになる。
-外貨準備の投資先としてのアフリカ資源(日本も外貨準備多いのでは)
-南アフリカだけは中国への投資の方が中国からの投資より大きい(なぜ)
-中国企業の海外進出、中小企業に関してはアジアよりアフリカの方が多い
-中国のアフリカ進出の新植民地論は、国家持ち出しで進出されてかなわない欧米が勝手にいっているだけ
-中国が現地人を雇わないのは、給料が高すぎるから
-アフリカで製造業に従事しているのは総人口の1%程度
-中国のアフリカ援助は欧米の開発援助より日本の初期の東南アジア援助に似ている 外交関係の官庁ではなく経済関係の官庁が管轄 これから新興国ドナーが増えると同じようなパターンが増えるのではないか
-中国はレアアース供給の97%を占める独占供給者
-アンゴラのように、中国の援助で力を得て中国に歯向かう例も
-今やアフリカの農産物は輸出品の1割、資源が7割
-外からの投資が生産力を底上げし、増えた収入で外からの財を消費する自立性に欠けた経済成長
-「資源の呪い」資源輸出による貿易黒字の増加で他の輸出品が打撃を受け、資源産業以外が衰退
-「資源のわな」資源収入が多すぎると民主主義から長期的な経済成長のための投資能力が奪われる
-アフリカでは農業の生産性が伸びないまま都市人口が増えたため、農民の所得水準があがらない
-資源と同様に、肥料の確保もこれから日本にとって大事になってくる
-肥料を手に入れるために輸入して内陸に運ばなければならないアフリカでは、肥料がアジアの2倍の値段であり、合理的に貧困が選択される
-モーリシャスはアフリカの優等生 衣料品生産によるアジア型開発
-ODAの起源は日米欧で違う。西欧では、植民地独立後の植民地官吏への給与として。米国では、武器貸与法の続きとしての民主主義を根付かせるための手段としてと、穀物輸出市場の拡大のため。日本では、戦後賠償と同時に輸出市場拡大と資源確保のため。
中国における軍人の地位ってどんなもんなんだろう
Posted by ブクログ
アルジェリアで起きたテロで邦人が犠牲になったという痛ましいニュースは記憶に新しいけれど、多くの日本人にとってアフリカはまだまだ遠い大陸だろう。まして、その経済構造を知る人はビジネスマンでも少ないのではないか。
本書によると、アフリカの賃金水準は、東南アジア諸国よりも割高であり、これが発展を阻害しているのだという。これは、いわゆる「開発なき成長」のためで、資源産出による収入に依存する国々特有の傾向であるという。
詳しくは述べないが、地域毎に異なる経済構造を理解するうえで必要な視点がわかりやすく解説されており、特にアフリカに特別関心がなくても、一読に値すると感じた。
Posted by ブクログ
2013年6月、横浜で開催されたアフリカ開発会議において、安倍首相はアフリカが「援助」から「投資」の対象となることを宣言した。本書は、まさにアフリカがなぜ投資すべき対象であるのか、その要因を様々なデータを引用しながら鋭く考察し、そして今後の日本とアフリカの関係について、著者自身の見解を述べている。
我が国をはじめ、先進国はこれまでアフリカに多額の援助を行ってきた。しかし、アフリカ大陸は、インフラの未整備、ガバナンスの不安定さ、資源依存の産業構造などの要因により、経済成長は軌道に乗らなかった。ターニングポイントは、資源高の時代の到来である。中国やインドの経済成長により、資源安の時代は終わった。そこでスポットが当たったのがアフリカである。既に中国は先行してアフリカに投資を行っており、太いパイプを築いている。
著者は、今後、少子高齢化の進行、労働市場の縮小が続く日本も、アフリカがパートナーとなると考察している。レアメタルを獲得する資源戦略として、官民連携でアフリカへ援助することが求められるが、おもしろかった点は、著者が開発政策と社会政策の2つに分けて論じているところである。開発政策としてインフラ整備を、社会政策として教育や保健衛生の分野をそれぞれ例に挙げ、官民が連携して援助を行うべきとしている。それが、パイの縮小する日本を救う道であり、だからこそアフリカは投資の対象となる。
数々のデータに基づく著者の分析は非常にロジカルであり、ただ分析に終始するのみならず、我が国の進むべき道を示唆している点で、良書と言えるだろう。
Posted by ブクログ
基本アフリカと言うと、サハラ砂漠以南のアフリカ(=サブサハラアフリカ)を指し、本書もサブサハラアフリカを対象にした本です。流し読みで読みましたが、内容的には濃い内容でした。ただ、ちょっと文章がお堅いので、読みづらい所が難点です。著者はアフリカ問題はもちろん、発展途上国全般やODA問題、資源問題にも造詣が深く、他のアフリカ本とはまた違った観点からアフリカを知ることができる興味深い内容です。
特にODAに関する世界各国のスタンスやその経緯や、他の書籍では、中国の対アフリカ政策にネガティブな意見が多い中で、中国にポジティブなスタンスを取っている所が新鮮でした。そしてなぜポジティブなのかは実に説得力のある論調。私も中国ポジティブ論に共鳴しました。