あらすじ
2003年、イラク戦争が始まった時期に、「希望を擁護する」ために本書は書かれた。あの時代は過ぎ去ったが、あらたな戦争が生じ、破壊的な気候変動が到来している。絶望と冷笑主義が残りつづける現代に、希望をもつことはいかに可能なのか。「希望は光を浴びた舞台の真ん中ではなく、周縁の暗がりにある」(本文より)。2016年に改訂され、直接行動と思想を往還する現代の名著を文庫化。
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Posted by ブクログ
心底今読まれるべき本だなぁと思うし、自分の考えとも通じる部分が多くてふむふむと読んだ。
不確実でともすれば絶望すべき事態に溢れた世界、この世界でそれらに耐えて今を生きろというのは簡単で、同時に酷だ。それを駆動する礎となるべきものが「希望」になる。希望は未来に対する想像力であり、自分の力に対する確かな信頼であり、そしてこの現実に起こる数多の事象をそのまま受け入れて学びとる静かな視座でもある。絶望的で汚い現実も、その奥底で得られたあまりにも小さくしかし確実な勝利を見逃さない目線である。
僕は母親からことあるごとに、僕を身籠っているときにテレビで見た9.11のニュースの話を聞かされてきた。それは確かに危機の時代と大きな破滅を告げてもいたが、同時に多くの平凡な英雄たちが産声を上げた瞬間でもあったのだと、気付かされた。世界は確かに悪に満ちている、けれど善もあったし、あり、これからもあるだろうという希望の燃料たちが、本書の中には満ち溢れている。
Posted by ブクログ
反グローバリズムや反差別や気候変動への対応などの社会運動を行う上での希望とはどう考えるべきか、筆者の考えがまとめられている。
過去の社会変革に目を向けると、発生は往々にして周縁から始まって、予期できない様々なプロセスを経て進んでいる。そして、過去に行われた社会変革の成果は現代の視点では常識になっていることもあり成果自体が忘れられている。だから、今は成果に結びついていないように見えても、過去の先人たちの成果を思い出し、未来の可能性を信じて、目の前の社会運動に当たっていくそのこと自体が希望である、という事が繰り返し細かい章立ての中で、たくさんの参考文献をもとにパワフルに語られている。
この本はブッシュ再選のショックを受けて書かれたエッセイがもとになっているらしいが、2025年の今はトランプが大統領に就任して、この本に書かれている事と逆行していくニュースばかり目にする中で、重要性が増しているのではないかと読みながら感じた。
Posted by ブクログ
希望について書かれている。それが何であるか、何でないか。
本書を読んで、今まで使ってきた「希望」という言葉は、本書が語る意味での「希望」ではなかったことに気がついた。
著者言う。
「希望とは未知や不可知のものを受け容れることであって、確信的な楽観主義や悲観主義とは違う。楽観主義者は、私たちが関与しなくても者とはうまくゆくと考える。悲観主義者はその逆だ。どちらも自分の行動を免除する。」
私が語る「希望」は自分の行動を免除していたと思う。ただ願うだけ。
「希望」はもっと真剣なもの。行動を促すもの。
著者が語る「希望」。再読して、しっかりと吸収したい。