【感想・ネタバレ】こんぱるいろ、彼方のレビュー

あらすじ

戦争と難民──今を生きる私たちの物語。

近所のスーパーの総菜売り場で働く真依子は、サラリーマンの夫、大学生の奈月、高校生の賢人の四人家族だ。職場でのいじめに腹を立てたり、思春期の息子・賢人に手を焼いたりしながら、日々を慌ただしく過ごしている。奈月が、夏休みに友人と海外旅行へ行くと言い出した。真依子は、奈月の代わりにパスポート申請に必要な書類を取りに行った。戸籍謄本と戸籍抄本、二つの書類をもらうと、戸籍謄本の真依子の出生地の欄には、カタカナの国と市が書かれていた。子どもたちには伝えていない。奈月には戸籍抄本を渡した。パスポートを手にした奈月に行き先を尋ねると、「ベトナム」と答えが返ってきた。友人たちと旅の準備を進める中で、奈月は真依子から戸籍謄本を見せられる。
「わたしね、ベトナム人なの」
「わたしたちね、ボートピープルだったの」
奈月は自分のルーツを受け入れ、ベトナムに向かった──。家族小説の気鋭が、世界を広げて挑む新境地!

※この作品は単行本版『こんぱるいろ、彼方』として配信されていた作品の文庫本版です。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

大好きな作家のひとり、このお話しもハズレなし。
ベトナム戦争、私が小学校を卒業する頃までやっていたということ、プラトゥーンやディアハンターなどたくさんの映画で描かれているように、ベトナムにとってもアメリカにとっても悲惨な歴史である事は何となくわかっていたが、実は何にも知らないということがわかった。
登場人物ひとりひとりの言葉がとても重い。

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2023年06月10日

Posted by ブクログ

奈月は友人たちとベトナム旅行へ行くことになった。
旅行の行き先を母に話すと、母から自分はボートピープルのベトナム人であること、奈月はベトナム人と日本人のハーフであることを告げられる。
そのことを知った奈月はベトナム旅行で、母の故郷のニャチャンに行くことを決意する。
奈月は旅行を通して、自分のルーツを辿っていく。



店頭で偶然見かけ、タイトルの“こんぱるいろ”に惹かれて手に取った本でした。
旅行記かな?と思って読み始めたら、ベトナム戦争とボートピープルという深い話で驚きました。

戦争の悲惨さや厳しさも出てきますが、ストーリー自体は重苦しくなく、タイトルにあるように“こんぱるいろ”の気分で読めたように思います。

読みながら、ニャチャンの画像を見てみました。海の色がとても綺麗で、奈月のおばあちゃんが好きな金春色を実際に見てみたいと思いました。



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2025年01月29日

Posted by ブクログ

主人公の母親と子供たちはとにかく「ふつう」で、子育てに悩んだり、友人と楽しく過ごしたり、受験勉強が嫌だと文句を言ってみたりする。
筆者はあえて、主人公たちをすごくありふれた人物にすることで、戦争に巻き込まれて命からがら逃げてきた人たちが、連綿と命を紡ぎ、その子や孫たちが「ふつう」に暮らせている、という人間の強さを描きたかったんじゃないか。

「王さんの話を聞きながら、奈月はひそかにはっとしていた。バスのなかが歓声に包まれた、と聞いたときに、ようやく彼らを身近に感じることができたからだった。(中略)こうして人は、自分と他人を区別していき、大事なものをなくしていくのかもしれない。自分の目に映らないものは関係ない。自分のあずかり知らぬところで人が死のうが関係ない。そうやって、殺す側と殺される側に分かれてく。そうやって戦争がはじまっていく。いつ立場が逆になるかもしれないのに、そこに自分は含まれない。」

いま朝ドラの「虎に翼」で、主人公の寅子が戦争孤児の支援に奔走している。
娘が生まれた立場で見ていて、この戦争孤児たちはわたしの娘かもしれないんだ、とちょうど今朝心にグサっと来たのだった。
もし戦争がまた起きて、わたしと夫と、その親類もみんな死んでしまったら、娘はどうするんだろう。どうやって生きてくんだろう。娘が悪い人に騙されそうになっても、死んでしまったら、わたしは娘を守ってあげられないんだ。この戦争孤児の親たちは、どんなに無念だっただろう。
ちょうどそんなふうに思って、本当にありきたりだけど、戦争は二度と起こしてはいけない、と改めて痛感したばかり。
奈月のこの心情はすごーく共感できた。わたしも今朝、全く同じ気持ちになったところ。
そしてもう少し考えてみれば、世界ではまだ戦争が続く地域がある。話す言葉が違ったり、テレビやニュースで見聞きするだけでは、なんとなく遠い出来事に感じでしまうけれど、まさにいまのわたしが、そして夫と娘が、その戦火にいる可能性だってあるのだ。

戦争に巻き込まれてしまうのは「ふつう」の人だし、それを乗り越えていかないといけないのも「ふつう」の人。その過程で亡くなるのも「ふつう」の人。そして連綿と命を紡いでいくのも「ふつう」の人なのだ。

中国が支援する北ベトナムとの戦争で、敗戦を経験した南ベトナム側の華僑であったり、唯一地上戦が行われた沖縄の人たちのベトナム戦争に対する思い、ベトナムでなお見え隠れする戦争の残り香など、さまざまな切り口でベトナム戦争の姿が浮き彫りにされていた。

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2024年06月20日

Posted by ブクログ

ベトナム戦争に負け、共産主義に弾圧され日本へ逃れた3世代親子の物語。戦争の影響が分かりやすく描かれている。

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2024年06月06日

Posted by ブクログ

ベトナム戦争の時に南ベトナムで過ごした家族のこと。ボートピープルとして脱出してきた人々のこと。知らなかった。
民主主義に相反するのが共産主義として描かれていたけど、共産主義は経済体制のこと。民主主義vs独裁君主 共産主義vs資本主義なのでは?そのねじれに違和感を感じてしまった。

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2023年10月24日

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