あらすじ
自分達と母親の元から去っていった理由を確かめるため、
凜音とともに実の父親を訪ねることにした悠斗。
不安の期待の入り混じる中、
二人との再会を喜んでくれた父親だったが…!?
そして同じころ、清子と大宮は奈津美の墓前で結婚と養子縁組の報告を済ませていた。
ところがそのその帰り道、なんと清子の母親と出くわしてしまう!
そのまま二人は、清子の親戚の集いに顔を出すことになってしまい――。
「普通の幸せ」から外れた4人が織り成す
サイコロジカル・ファミリーストーリー、
ついに完結!!
心の奥底の感情を、しっかりと見つめなおしてくれるストーリー。
自殺してしまった友人の子ども達の面倒を見ることになった、心理学者の清子。しかし人の心が分からず、いつも歯に衣着せぬ物言いで人を怒らせてしまう清子は、友人の子ども達への扱いに戸惑うばかり。
清子が、心に傷を負った2人の子ども達にとって母親という役目は果たせずとも、
唯一の頼れる大人として真摯にまっすぐ子ども達と向き合う姿は、読者であり大人の私にとっても、じんわりと心に響きました。
本作は心理学がキーポイントとなって展開していく物語です。
人間の行動にはそんな深層心理があったのかという発見はもちろんですが、
そこから読み解くことのできる人の弱さを、私たちが思っているよりもずっと豊かに捉えることができるのだと教えてくれます。
そして、「母・友人の自殺」という受け止めきれない事実を背負うとはどういうことか。そんな死の淵に近い立場にいて「生き続ける」とはどんな苦しみがあるのか。
決して穏やかではないテーマですが、家族ではなく他人だからこそ補い合うことができる関係もあるのかもしれないと考えさせられました。
「ファミリー・ストーリー」の指す"ファミリー"とは何か、ぜひ本作を読んで感じてほしいです。