あらすじ
公害という名の恐るべき犯罪、“人間が人間に加えた汚辱”、水俣病。昭和28年一号患者発生来十余年、水俣に育った著者が患者と添寝せんばかりに水俣言葉で、その叫びを、悲しみ怒りを自らの痛みとし書き綴った《わがうちなる水俣病》。凄惨な異相の中に極限状況を超えて光芒を放つ人間の美しさがきらめく。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
匿名
憤りと叫び
こういう表現が適切かは分からないが、作者に神様が乗り移って書かせたような、そういう文学だと思う。被害者たちの壮絶な叫びと、憤りの極限で研ぎ澄まされた作者の言葉が胸をえぐる。
水俣の人々にとって、「会社」は市の発展の象徴であり、心のよりどころであり、問題発覚後もそうであり続けたことを初めて知った。そして、それを守ろうとする市民の感情が、被害者たちと対立・圧迫する形になってしまったことも。どこまでも因果な話だと思った。
Posted by ブクログ
水俣病患者の悲惨さを書き綴った本。内容の悲惨の反面、患者の話す言葉を伝える文章の表現力の美しさに驚かされます。ところが解説を読むと、これは「忠実な聞き書き」の本ではなく、筆者が「話し手の心の中で言っている事を表現する」と、こうなるらしい。
... つまり本書は純粋なルポルタージュではないという事(解説者は「私小説」という表現をしています)。この点の評価は分かれるんでしょうが、私は名著である事は間違いないと思うのですが。
Posted by ブクログ
水俣病レポート。小説。ノンフィクション。
どの分野になるのかよくわからない。
このタイトルと名前ではわからなくても、「もう一ぺん人間に」は国語の教科書に載っていたぐらいだから、記憶にある人も多いだろう。まあ少なくても無夜と同じ教科書を使わされていた人は強制的に読まされたはずだから。
読んで騙されるといい(笑)
石牟礼道子の世界というところに答えがある。
無夜としては「あっそう」という程度のショックだが、これをバイブルにしかけていた人にはこのオチはひどいかも。
この人は人間の作り方がすごくうまい。無夜がこうほめるときは、汚さがよく書けているということだけれど、被害者の憎悪とかがわかりやすい。
「おまえらもみんな水俣病になっちまえ」と自分たちを揶揄する奴らにののしる。
「日窒の偉い人から順に同じ数だけ水俣病になれ。奥さん方も水銀を飲んで、同じ数だけの胎児性が生まれるように」と、憎悪の言葉をしたたらせる。
これがよくわかる。わかりすぎるぐらいわかる。
辛い話なのだけれど、あちらこちらが妙に明るい。それが不思議だ。
人がぼろぼろ死ぬ。苦しむ。治る見込みはない。それでもどこかで何かが作用している。
行き過ぎた絶望による開き直りなのかもしれない。