あらすじ
就活から逃げ出した言語学徒の青年は、美しい言語を話す少数民族・ムラブリと出会った。文字のないムラブリ語を研究し、自由を愛するムラブリと暮らすうち、日本で培った常識は剥がれ、身体感覚までもが変わっていく……。言葉とはなにか? そして幸福、自由とはなにか? ムラブリ語研究をとおしてたどり着いた答えとは……? 人間と言葉の新たな可能性を拓く、異端の言語学ノンフィクション。
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Posted by ブクログ
言語学者からの言語に関しての視点だけではない、もっと幅ひろい視点での考察が刺激的。
人の行動には何かしらの理由を求められることが社会ではしばしばあると私は感じている。その度に、えっとそれは…って理由を考えることがあるけど、人間の行動は、何かしら考えた上で実施しているのではなく、脳の無意識の深層の範囲で判断されたことが多く、意識下で判断していることは実はそう多くない。そして、何でそういう行動を取ったのかというと、それについてあとから意味づけされている、ということはよく言われている。
筆者も学生時代は失礼ながら、気の赴くままの判断で日々を過ごしていたようにもみえた。でもそこからの学者としてのスタンスがだんだんと形成されていく成長過程を、さらけ出して本にかけているところに物書きとしての才能を感じてしまう。
もともと突き詰めて考えることが筆者の性分からか、学者としての職も手放し、より研究に没頭できる立場を本執筆時期には選択している。このあたりの行動の早さも今後の展開に大いに期待してしまう。
ちなみに私はこの本を知ったきっかけは、筆者自身がとあるゆる言語系のユーチューブチャネルで対談されているのをみて興味を持った。まだ見ていない方は是非視聴頂きたい。
Posted by ブクログ
・円滑な会話:量、質、関係、様態
・感情表現:好/悪、動/静マトリックス
・ぼくらは同じだし、ぼくらは違う。それは両立する。
・武学探求
・自分を生かすために必要なスキルはすべて外注していきていることに、この年齢でようやく気付いたのだった。
・ユニバーサル・エディビリティ・テスト
Posted by ブクログ
ムラブリに明日の予定をきくと、明日のことは明日の自分が決めるから分からないというくだりが印象的だった。
言語の話も、ムラブリの暮らしも興味深い。
Posted by ブクログ
ただの「偶然」だろうが、「いま」わたしが読みたいような本ではなかった。著者はおそらく、運の良さを自覚してはいらっしゃるけれど、ほんとうの意味で「不運ではない」状態には、なってはおられないのだろう(それを言ってしまえばわたし自身、まったく「不運ではない」わけではないけれども)。著者は男性で、奨学金を受けながらも大学に行ける家庭に生まれ、日常生活でなにかしらの襲撃に遭う危険を「現在も」考えずに済んでいる。襲撃という大袈裟なと思われるかもしれないが、日本でも技能実習生や「女性」になにが起きているか考えれば、こんな文章は書けないだろうと思う。
まあつまるところ、言ってしまえば、「カラム ドゥ モイ」なのかもしれない。