あらすじ
日本の宗教研究の第一人者が、宗教という営みの“核心”を明らかにする!
アンデルセンや宮沢賢治の物語をはじめ、文学や芸術における「救い」というテーマは、昔も今も人の心を打つ。この「救い」の教えは、キリスト教、仏教、イスラームなど世界中の宗教において教義の中心となってきた(そのような宗教を「救済宗教」と言う)。なぜ、宗教では「救い」が重要とされ、普遍的な教えとなってきたのか。
一方で、先進国、特に日本では、宗教への信頼が揺らいでいる。しかし、そんな現代社会においても、従来とは形を変えながら求められる“宗教性”があるのではないか。
宗教の起源から現在にまで通じるこのような問いに、救済宗教と文明の歴史をたどることで理解と考えを深め、宗教という営みそのものの核心に迫る。
【内容】
第1章 信仰を求めない「救い」――文芸が表現する救済宗教的なもの
第2章 「救い」に導かれた人類社会――歴史のなかの救済宗教
第3章 なぜ「救い」なのか――文明史に救済宗教を位置づける
第4章 「救い」のゆくえ――「救済宗教以後」を問う
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
宗教のうち、救済的な側面に着目して、なぜ宗教が発展・維持されてきたのか、その根底にある救いとは何なのかを考察した本です。
救済宗教あるいは救いを求める理由は、「人間には限界があるから」ということに尽きると思います。
科学や文明が進んでも、人間は死や苦悩などの限界に直面しなければならない。そのときに、今を生きる人間の精神は、科学や技術でコントロールできるものではないと思います。
そのときに、人間は救いを求め、ある人はより資本主義に邁進し、ある人は科学や技術に希望を見出し、ある人は救済宗教に惹かれていくのだろうと思います。
第1章では、物語や詩・歌詞の中に見られる「救い」のあり方を考察します。人間には、信仰とは直接関係がなくとも、救いを求める本質があることが垣間見えます。
第2章ではキリスト教・イスラム教・仏教のような世界宗教を題材に、共通する「普遍主義」「力の支配に対する代替物」という側面を見ていきます。日本独自の宗教の発展や、神道の変遷についても触れられています。
第3章では、「救済宗教」がなぜ宗教を理解するうえで重要なのかを、宗教学者・知識人たちの論文や著作をベースに述べています。トレルチ(キリスト教の絶対化)、ウェーバー(合理化・脱呪術化への疑問)、ヤスパース(限界状況と軸の時代)、など少し学術的な内容です。
第4章では、宗教をめぐる近代の議論について述べられています。宗教は人間に不可欠とする立場のほか、マルクスやニーチェによる宗教批判、世俗化による影響力の低下、という3つの立場が紹介されます。近年のスピリチュアリティについても言及されています。
全体的に少し難しいですが、わかりやすく解説されています。もしかしたら☆5かも。
Posted by ブクログ
人はなぜ絶対的な存在に祈りを捧げ、「救い」を求めるのだろうか?
世界三大宗教とよばれる仏教・キリスト教・イスラームを救済宗教と位置づけ、その名の通り救済を求める宗教の歩んできた歴史と社会的構造との相関関係を明らかにしている
そもそも救いとはなんなのだろうか。序盤では文学や歌にみられる救いの表現を取り上げつつ、芸術によって形成されてきた救いの意識をひもといている
ウェーバーの提唱した、人の死後はすでに決まっているから現世の行いや宗教の類は全く意味がない、とした予定説が興味深い こんな反宗教的な思想が許されるのか、と思ったけどケーサカンバリンの地水火風の話(たしか唯物論的なの)と似てる気もしておもしろい
宗教の知識あったほうが読みやすいと思う