あらすじ
時は明治中期。東京の骨董商の娘ミツコは、駐日オーストリア公使に見初められ、結婚する。夫はハインリッヒ・クーデンホーフ伯爵。夫・子供たちと渡った世紀末の欧州は、まさにハプスブルク帝国の終末期。7人の子を授かり、夫の急死後は、クーデンホーフ・カレルギー伯爵家を宰領し、子供たちを育てあげ、激動の時代を生き抜き、ウィーン社交界の華とうたわれたという。ゲランの名香「ミツコ」の名の由来という説もある華やかな人生。その実像を、壮大なスケールで描く歴史長篇!
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ヨーロッパ史の本質に迫る作品。
主人公であるひとりの執筆家に次の作品を書く構想を語らせながら、複雑な史実を丁寧に紐解いていく。そしてクーデンホーフ光子の本当の人生・生の生活をも浮かび上がらせ、日本人である松本清張ならではの切り口が心地よい。
面白いのだけれど…
杉田省吾という作家が、日本女性初の国際結婚をしたクーデンホーフ・ミツコの本を書くために、オーストリアとチェコに取材するという作りになっているが、なぜ「杉田省吾」なのか。松本清張の名では駄目なのか、その辺りの説明は無い。
ミツコ(青山光子)は、EC構想の理念の先駆けを唱えたリヒャルト・クーデンホーフ=カレルギーの産みの母である。
てっきりミツコ自身がヨーロッパで生活していく間に構築した理念・思想なのかと思っていたが、そうではなく、あくまでも言葉通り「産みの母」なのだと知った。
おそらく、リヒャルトの母親が日本人(東洋人)でなければ、あるいは母親の名前など残らなかったかもしれない。
遠い異国で、若くして夫を失い、七人の子を育て領地を治めた。日本ではおそらく寺子屋レベルの学問しか修めていないだろうが、領地を守るため法律や経済など必要な知識を貪欲に学び、短期間にそれらに精通するようになり、夫亡き後、有能(で、専制君主的)な領主となっていく。
しかし、領主としては有能でも、母としてはどうだったのだろうか。本当のミツコはどんな人だったのか…。
当時の西洋人であれば(失礼ながら)現地妻ですませそうなところを、きちんと籍を入れ、日墺両政府の認めた婚姻を行う。(夫は外交官なので、結婚には政府の許可が要る)よほどの美人なのか?と思う人が多かろう。
なんとなく小柄で童顔の少女然としたイメージを持っていたが、写真ではスラリとしてスタイルも良さそうで、どちらかと言えば奥ゆかしげだが、聡明そうな印象を受けた。
クーデンホーフ家のルーツを調べるためにプラハへ向かう飛行機内でミツコの息子の一人が書いた記録を読む部分から、クーデンホーフ家とミツコの衝撃的な(?)事実が明らかになる。
しかし、本書の後半はハプスブルク家の悲劇になり、ほとんどミツコについては触れられておらず、また、残念なことにミツコ本人についての資料がなさ過ぎて(100年前なら日本人は珍しかっただろうに)、小説でもないし、旅行記のような…ミツコについて知りたいと期待して購入したのだが…。
よく調べたとは思うものの、とにかく全体的に散漫で中途半端な印象が残る。
なお、ミツコが亡き夫のことを家族のために語った本があるのでそちらを読んでみたい。
(大和和紀さんのレディーミツコもおすすめ)