あらすじ
東京・飛鳥山公園の展望台で平凡な主婦・井上典子が、売店のアルバイト学生・矢部富美子に刺殺された。捜査一課の吉敷刑事は捜査に乗り出したが、典子には人に怨まれるところはなく、加害者・富美子との接点もまるでない。だが事件の裏には恐るべき狂気が……。(表題作) 鬼才が全力を傾け、絶対の自信をもって放つ極上の傑作集。
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Posted by ブクログ
珠玉の短編集である。「法月綸太郎の冒険」に匹敵するクオリティを持つ。
まず目次を開いて並んだ諸作の題名を見て感じたのは江戸川乱歩死へのオマージュかという事。実際最後の2編は乱歩作品の本歌取りであった。
最初の1編は「アクロイド殺し」か。
だが何にも増して驚嘆させられたのはその先駆的題材である。
昨今巷間を賑わしているストーカー犯罪、キレる若者による突発的犯行。
“昭和62年”の時点でこの“平成の世”の社会の歪みを予見していたかのようである。
恐るべし、島田氏、流石は島田氏と褒め称えよう!
Posted by ブクログ
そんなに上手くことが進むかなと思ってしまう事件たち。携帯なら着信拒否すればいいけれど、「都市の声」の公衆電話は防ぎようがない。ただしこれも見つからずに上手くやれるかなと疑問が残る。吉敷が出てくるとちゃんと着地してくれそうで安心して読める。「緑色の死」に出てくる日本語のせいで上下関係が生まれ、ひいては軍国主義にまで至ってしまったという考え方にはなるほどと思えた。