あらすじ
『魔女の息子』で第40回文藝賞を受賞した作家であり、ゲイ・ムーブメントの先駆的役割を果たしてきた著者・伏見憲明が、「人間学アカデミー」(小浜逸郎氏主宰)で語りおろした講義録をもとに大幅に加筆・訂正し書き下ろした渾身の一冊が、この『欲望問題』です。
「痛み」を「正義」とする「差別問題」を、「痛み」も「楽しみ」も等価な「欲望問題」だと読み解き直す<1章──「差別問題」から「欲望問題」へ>。
伏見憲明自身の個人的な体験から生まれた「性別二元制」という捉え方を、15年を経てあらためて自身がその意味を問い、既存のジェンダー論に痛烈な違和を投げかける<2章──ジェンダーフリーの不可解>。
共同性からの自由を目指すのではなく、多様な「欲望問題」を抱える共同性を認め合い、個人の「痛み」を社会に問いかけていくことを不断に繰り返していくという<3章──アイデンティティからの自由 アイデンティティへの自由>。
副題は、「人は差別をなくすためだけに生きるのではない」。「差別がないということ以外にそれを「幸福な状態」と考えうる根拠は何なのか」と著者は問います。実存に根ざした極めて平易な文章でつづられていますが、著者があとがきで書いているようにシンプルな文章で根源的な問いをつきつけた、まさに「パンクロック」な本です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
うーん。若いころだともう少しいろいろ考えたし、言えただろうけれど。どうありたいかを考えること自体がかなり意識的なことだけに今となるとぐるぐる回るばかり。差異をどう受け入れるかが自分ごとになってないと言われたらその通りだし。
特権化と差異の話。生活実感と言上げの行きつ戻りつ。
Posted by ブクログ
平等とか地域開発とか、
掲げている側がやってあげるというスタンスがある気がして、sごく気持ちが悪かったけど、
このほんのいう、みんながしたいっていうことのせめぎあいの調整の問題なんじゃないのかな、って思った。
むずかしい
Posted by ブクログ
命がけで書いたから命がけで読んで欲しい、と帯に書いてある。差別や社会の不公正が気になる人間が、「気持ちよく」読めるような本では、確かにない。読み手の信念を抉りにくる、という意味では確かに読む側も命がけかも。マイノリティは正義とは限らない、というところまではスムーズだったが、あちこちにトラップがあった。少なくともワタシは、現在が彼の言うような「ジェンダーフリーを「過激な思想」とする立場と、ジェンダーの非対称性自体を解消すべしとする立場の、二項対立」であるとは思っていない。…が、まぁ確かにそうなんだよな困ったことに(^^;)
Posted by ブクログ
予想より興味深く読めた。差別問題ではなく欲望問題というところや、正義があると思っていても社会に許容されることとのバランスというか取り組みが必要という点は面白かった
Posted by ブクログ
概要
本書は,「差別問題」を「欲望問題」と捉えることが適切であると至った過程を,著者の経験にもとづいて語る『第1章「差別問題」から「欲望問題」へ』,著者自ら提出した<性別二元制>という図式や,ジェンダーフリー論に対する批判的(再)検討を加えた「第2章 ジェンダーフリーの不可解」,X-MENを題材にある特定の共同性やアイデンティティについて論じた「アイデンティティからの自由 アイデンティティへの自由」の3章構成。
2010年6月11日発行の.book版 Ver.1.1
感想
ジェンダーやセクシュアリティ,差別の問題は,私自身にとって「痛み」を伴うような切実な問題ではないので,著者があとがきで望んでいるように「命がけで読」むことはできなかった。しかし,ジェンダーやセクシュアリティの問題は,やはり興味深く,これからもいろいろと勉強し続けたいと思った。
私は,20代のころから,これらの問題に興味があり,伏見憲明さんの著書をはじめとする内外の専門書などを読んだり,シンポジウムやパレードにも参加したりしていた。もっとも,ここ数年は法律家になるための勉強に専念していたので,その手の勉強はご無沙汰だった。今回久しぶりに,伏見憲明さんの著書を読んで,以前の気持ち―弁護士としてこれらの問題に関わりたい―は失われていないことがわかった。
勇気を出して,著者がママをしている新宿二丁目のバー「エフメゾ」に行くぞ……そのうち。
Posted by ブクログ
問題提起の本なのだと思う。
「いやいやそれは」と語りたくさせることを意図しているような。
だからか、わざと論点をずらされているような具合でイライラした。
「差別」ではなく「欲望」というのはわかるけれど、「欲望したくない/されたくない」という消極的な欲望しか持てないAセクとしてはピンとこない。