【感想・ネタバレ】友のレビュー

あらすじ

北朝鮮の市井の人々が描かれた文学を読む。

北朝鮮の市井の人々を描いた作品。

1988年に北朝鮮で刊行され、後に韓国で出版。さらにフランス、アメリカでも翻訳出版された。
アメリカの「ライブラリー・ジャーナル」で、2020年のBest Books翻訳文学部門の10冊に選出。

離婚を望む歌手である妻と、寡黙な技術者の夫。そして、その離婚の審議に当たる判事と、野菜の研究者として生きる妻。二組の夫婦の姿を軸に、地方都市の情景や、そこに生きる人々の心情を描く。


「北朝鮮の人が読む北朝鮮の文学とは何か?
1988年に出版されたペク・ナムリョンの小説『友』は、“北朝鮮”という言葉から思い浮かべるロケット弾や軍事パレードではなく、日常を呈している。〈中略〉
小説は、投機的なニュースよりも恒久的な事実を提供するかもしれない」
――― New York Times Book Reviewより

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Posted by ブクログ

これはとてもよかった。
1988年に平壌で出版された作品で、80年代の北朝鮮の地方都市が舞台ということなので、それから40年もたった現代、そして北朝鮮でも都市部ではまた状況が違うのかもしれないけれど彼の国の家族の様子とか家庭、職場の様子などを窺い知ることができてとても興味深い。
主人公は市の人民裁判所の判事、彼の慎ましく、生真面目な視点で複数の家族や夫婦の姿が描かれている。

田舎の工場で働いていた摩擦プレス工の女性が歌のうまさを認められて芸術団の花形歌手になり、寡黙な旋盤工の夫に次第に不満を募らせるようになる。彼女からの離婚申立てを受けて主人公も自分たち夫婦の暮らしを振り返り始める。過去の離婚裁判で出会った夫婦のその後の暮らしぶり、その夫の不正疑惑。淡々としているがページをめくる手が止まらなかった。

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2023年08月07日

Posted by ブクログ

友(벗)は北朝鮮の小説。壁の向こうの世界はどんなだろうと興味があった。小説には二組の夫婦が登場する。一組は夫が工場の旋盤工で妻が道芸術団のメゾソプラノ歌手。一組は夫が人民裁判所の判事で妻が野菜の品種改良家である。地方都市に住む判事の所に離婚請求を訴えに女性がやってくる。道芸術団のメゾソプラノ歌手のチェ・スニだ。彼女が訴えるには、彼女の夫のリ・ソクチュンは彼女と生活のリズムがまったく合わないという。チョン・ジヌ判事はスニの主張だけからは離婚の是非が判断できず、夫の方の話も聞いてみなくてはと思い、夫が働いている工場に訪ねて行った。こうして離婚にいたるには何事があったのかと調査をする。判事は自分たち夫婦のことも考える。妻は故郷での野菜の品種改良のためによく家を長く空けて地方に行っている。その間は子供が小さいときは判事が炊事洗濯の家事をしたり、家の中で植えている野菜を枯らさないように気を付け、栽培記録も代わりに取っていた。長い間に妻が居ない家の中に少しづつ不満がたまって来ていた。そんな二組の夫婦を描きながら、北朝鮮特有の人民班などの制度や工場労働者の生活などが出てくる。かといって特別の生活があるわけではなく、地方の素朴な生活が伺われる。また相手を呼ぶ時に○○씨の代わりに○○동무と呼ぶのが北朝鮮らしさだ。

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2024年01月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1988年に書かれた北朝鮮文学。日本で北朝鮮文学が出版されるのはとても珍しく、韓国で出版され、フランス、アメリカで翻訳されたため日本でも出版されることになったそうです。

若い夫婦の離婚相談をきっかけにその夫婦とその相談を担当する判事がそれぞれの恋愛、結婚、家庭生活を顧みるという難しいことはなく、日本はアジア圏ということもあり1980年代ということを考慮すると考え方に一定の理解もできる内容。

優秀な妻、家事の負担、真面目一徹な夫、ちょろまかす小悪党…市井の人々の暮らし、特に夫婦生活の悩みが日本とさほど変わらないんですよね。

1980年代、女性も働く北朝鮮の家庭を維持することはハードだっただろうなぁと思います。洗濯は川でしてるし…。

文章が抜群に綺麗です。党の理念などがなかったら単にハートフルな物語として捉えられたかも。

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2023年10月01日

Posted by ブクログ

80年代の北朝鮮の地方都市に暮らす2つの家庭の何気ない日常の物語。描写がとにかく美しい。

アリランが似合いそうなほのぼのとした小さな町と、私たちと同じような悩みを抱える人たちが、パステルカラーの水彩絵具で描かれている点描画がぱらぱら漫画のような映像で流れていくの。

本に出てくる人たちからは、韓国の友達と話すときに感じるような情の深さも感じた。

北朝鮮の人々が読む本とは、党派の人が書く本とは
どんな本だろう。

その答えが知りたくて、足を踏み入れた「友」という作品は、とても身近で穏やかで美しかった。

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2023年04月11日

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