あらすじ
ひとつでも多くの生命を救いたい。国境なき医師団の小児科医のエボラとの壮絶な戦いや葛藤、かわいい患者のこどもたちの姿を通し、生命とは何か、利他とは何かを問う感動のノンフィクション。2014年12月、西アフリカのシエラレオネ共和国。致死率の高さから「殺人ウイルス」と恐れられるエボラウイルス病の治療センターに、「国境なき医師団」の小児科医として著者は派遣される。あっという間に生命が奪われていく壮絶な現場で出会ったのは、家族をなくしながらも必死に耐えて明るさを失わず、他のこどもの世話を買って出るこどもたちだった。前任地の南スーダンでの活動によるPTSDに苦しみ、生きる意味を見出せなくなっていた著者は、彼らによって次第に再生へと導かれて行く――。第20回開高健ノンフィクション賞最終候補作。
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Posted by ブクログ
私にとってとても重い大切な事が書かれていました。国境なき医師団の名前は知っていても、毎月寄付をしてはいても、その活動実態を知る機会はなかなかありません。この本は一人の医師が人間として実際に活動に参加された時の日記を元にしています。そのことが漠然と名前だけ知っている団体から現実に私達を引き戻してゆきます。そして読み進める中で同じように葛藤し不安を共有してゆくことで、遠い国の出来事から自分自身の問題へと思考を誘います。
人道援助は無意味なのか?無駄なのか?だかといって本当に援助をやめてもよいのか?
繰り返されるこの問の答えが全てとは言いませんが此の本の中にあるように感じます。
以下、抜粋
人は自分の利害を離れて、他者のくるしみや悲しみに寄り添えるのだろうか
私達はどこかを遠いと定義し身勝手な境界線を引くことで、その外で起こっていることに対する責任から逃れようとしているのではないか
「自」と「他」の間に線を引かず、己の損得を離れて、「私たちは決してこんな世界を受け入れることはできない」と声を上げ、行動を起こすことができるだろうか