あらすじ
昭和の少女雑誌に掲載された絵物語「王女アンナ」。半世紀前の奇妙な物語の世界に、元子はいつのまにか引き込まれていく。(「王女アンナ」) 女優・紫さぎりは長きにわたり人気女優として活躍しているが、彼女には大きなコンプレックスが……。(「女優さぎり」) 昭和・平成・令和、それぞれの時代の風俗を巧みに取り込みながら容姿への疑問と不安を物語に昇華させた、姫野カオルコの真骨頂となる連作小説集。
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Posted by ブクログ
バービーの映画公開とリンクしてたのか?と思うほどのタイミング。そしていつもながらなかなかに一筋縄ではいかない小説。
四章だての構成だが、章ごとの登場人物や小説内物語の主人公たちが微妙に絡み合いながら、それぞれの葛藤を通してテーマが浮かび上がってくる仕掛けが見事。
当然のように社会が押し付けてくるもの、その押し付けに対して声高に抵抗する力、でも現実にはそれらとは別の世界があって、本書はその豊かさに気づかせてくれる。
Posted by ブクログ
かつて女の子、女子だったすべての人たちが思っていたモヤモヤやら、ジメジメやら、そして今に至るまで抱えてきたウツウツやサバサバ、ドキドキなどちゃんと言葉にしてくれたような、そんな胸のすく、腑に落ちる小説でした。
私はこの通り語彙の非常に少ないただの読者の一人でしかありませんが、カオルコさんの描く女性のようにいろんな思いを日々重ねているので共感出来ること、あります。
『悪口』『幸せ』
肯くほかありません。
Posted by ブクログ
コンプレックスがあったり悪口を言われたりしても、それなりに暮らせますよ。悪口を言われても気付がない人もいれば言われてないのに気にする人もいる。O脚と顔がデカいはなぜか許されている。
チビも
Posted by ブクログ
緩やかに繋がる連作小説。
ここで言われる悪口は、見た目、ルッキズムに特化している。
私にとっては平成から令和に至る回を描いた「女優 さぎり」が一番理解がしやすい(共感できる)物語だった。
「顔が大きい」という悪口は有名人を最も手っ取り早く傷つけられる(117頁)とか、画像加工とか、SNSというメフィストフェレスとか。
容姿が整っていても、金持ちでも、親が超有名人でも、顔がデカいと言われたらそりゃあ傷つくに決まってる。
公開処刑なんて言われた日にはどれだけ傷つくだろう。
それをネタにしている人もいるかもしれないけれど、本当の心はわからない。
でも、小顔が好ましいというのはいったい誰基準?
悪口を言う人の基準でなんでこっちが傷付かなきゃいけないのだ!
本書は勧善懲悪でもないし、読後スッキリでもない。
悪口とはなんだろう、見られる仕事とはなんだろう、コンプレックスとはなんだろうということを考えた。
この気持ちに言葉をつけられないまま読み終えた。
Posted by ブクログ
様々な立場(女優から一般人まで)の4人の人生観が現れたエッセイ集。「彼女は頭が悪いから」を読んですぐに見つけた姫野カオルコさんの作品なので購入。帯にルッキズムと書いていた通り自分の容姿やその受け取り方、容姿によって経験した思いなども書かれていた。4人の人々は絶妙に絡み合っていて、その関係性を把握しきるのが困難で割と読みづらかった。
ここに出てくるメインの女性達は自分の容姿が美しくなくても、多少不満があってもそれでいいのだと考え自分の人生を生きられていた。しかし若い登場人物のaは美容整形を受けるなど現代のルッキズム事情が書かれリアルだと思った。4人のように容姿を受け入れて生きられたらいいが、現代は受け入れたくても受け入れられず精神を止んだり医療に頼る人がかなり多いだろう。現に街中で一重の若い女性など以前と比較して滅多に見かけない。
ルッキズムは現代のように顕著にならずとも昭和時代から存在していたこと、しかし人々のルッキズムの受け取り方は変わったことを認識した。
そして登場人物皆家族に恵まれていることに気づいた。姉妹の扱いの差など多少気になる点があったとしても、家族間での関わりが強く自己肯定感を高めるような教育があったと思う。だからこそ皆自身の容姿を受け入れ自身の人生を歩めていたのだろう。王妃グレースの話であった教育における自信→目標→達成のサイクルの影響は人格を形作ると、私の周囲の人達と照らし合わせても感じた。
2章で出てきた「足入れ婚」はかなり気持ちが悪かった。
Posted by ブクログ
4編から成る小説。それぞれの登場人物が微妙に絡み合っていて文体もあって、なかなか読み込めず。でも妹が可愛くてそれがコンプレックスの私からすると色々な意味で刺さる本であった。はい、そんな私もそれなりに暮らしています。
Posted by ブクログ
先に書いた「王女アンナ」「王妃グレース」に書き下ろしの2篇を加えて昭和〜令和そして近未来にかけての家族の物語に仕立てた連作集。
なんだけど、まあ読みにくいったらありゃしない。以前に読んだこの作家の作品の感想にも文体が合わないと書いていたから、嫌なら読まなきゃよかったんだけど、間違って手に取ってしまった。
それでもルッキズムについての女の子(この表現もポリコレ違反?)の心理を、なんとなくモヤっと感じているところまでしっかりと言葉で言い表しているところはすごい。
一番頷けたのは自己肯定感の部分。
ルックスそのものじゃなくて“籠の中にいるあいだにもらった自信の強度”がその後の人生を左右するということ。これには激しく同意。
余談ですが、冒頭の作中作『王女アンナ』の物語は某宮家の姉妹を、「女優さぎり」の中のニーカイ一家の話は某アイドル夫妻の娘を思い起こさせ笑ってしまいました。
もちろん巻末には“この作品はフィクションであり云々‥‥”の一文がしっかり入っていますが。