あらすじ
桐野夏生が描く「バブル」
欲、たぎる地で迎える圧巻のクライマックス
時代はバブル全盛に。東京本社に栄転が決まった望月と結婚した佳那(かな)は、ヤクザの山鼻の愛人・美蘭(みらん)のてほどきで瞬く間に贅沢な暮らしに染まっていく。一方の水矢子(みやこ)は不首尾に終わった受験の余波で、思いがけない流転の生活がスタートする。そして、バブルに陰りが見え始めた頃、若者たちの運命が狂い出す……。
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Posted by ブクログ
時代の流れから展開はある程度予想してたけど、あまりに救いがなくショックが大きい。長編で登場人物達に感情移入してしまっていたから余計辛い。
望月が嫌いだったけど、最期まで自分よりかなを心配する姿には胸が熱くなった。死に際で望月が本当に一番大切なのは仕事ではなくかなだと確信した。望月は自分が成功することが、かなの幸せと信じてたと思うとすれ違いが悲しい。
本のタイトルが「一生輝かないダイヤモンドに薄汚れた真珠」だったことに驚いた。素敵な意味が含まれていると思い、最後まで希望を捨てずに読んでしまった。あのプロローグにもすっかり騙された。作者が容赦なくメンタルを潰しにくる。
下巻は夢中になってスラスラと読むことができた。面白かったけど、この作者は他の作品も重そうなので、回復するまでしばらくは読まないでおこうかな。
次は優しい内容の本を読んで、気持ちを中和させたいと思います笑
Posted by ブクログ
野心金金酒金金暴力。
ヤクザ屋さんがおしまいあたりは持っていきました。
大ラストは3人の主人公のうち生き残ったみやこが(失われた)30年後井の頭公園で疲れたよパトラッシュでも会えたから、ってまだ53歳じゃないかあの頭を使って自分一人で生き抜こうとしていたみやこはどこへ?!というか死んだ親の借金って引き継がなくていいんじゃなかった?!それだけ故郷と上京を共にした2人の悲惨な最期がダメージだったということか。
私は個人的に川村の存在がショッキングでしたねそんな複雑な生き死にあるのかと。
読み応え読みやすさの見事な両立があり上下巻4時間くらいで読めた。すごい速さで複数の誰かの人生を体感するというフィクション小説の娯楽はやはりいい。音楽と一緒で35歳以下までに気に入った作家しかもう読む気がなくて桐野夏生は私にとってその一人。
「ダーク」で感化されて私も自分の力で生きたいと家出したクチなので、今作では何もここまで不幸にしなくていいんじゃないか命だけは助けて欲しかったとも思うがあんな狂騒の中ではこうなるしかなかったのだという説得力はあった。
「ダーク」のように私は子孫は残せませんでしたが公園のみやこが私の数年後、とならないように気を引き締めていきたいものだとリアルにまた感化をされた。
Posted by ブクログ
終わり方が結構好きだった。
なるほど、上巻の冒頭はそうゆうことだったのかと、メリーバッドエンド。
完全なバッドではない気がする。
騒ぐだけ騒いで散るのだから、人生を謳歌したともいえて、そういう意味ではハッピー?
上巻は読み始めたら先が気になるドラマ感覚だったが、下巻ではヤクザやホストも登場してブランド品を豪遊するなど派手になってきて、展開が目まぐるしく面白かった。
終わり方もハッピーではないがきっちり終わったので、まぁこんな終わり方もいいじゃない、という割とすっきりした読後感だった。
↓ネタバレ
上巻では須藤の存在が強かったが、下巻になると忘れた頃にチラッと出たくらいだった。(それも、姉の住所を望月が教えた件の暴露)
下巻ではヤクザ・山鼻の存在が強く、さらにその愛人・美蘭が佳那の新しい友人として絡んでくる。
水矢子は志望校に落ち、第三志望の女子大に通うも、周りは自分より若いし金持ちのお嬢様が多く馴染めず。第三志望に通うというのが妙にリアルでその惨めさは共感するのだが、周りが自分より若かったりお嬢様が多いのは入学前から分かっていたことだしな、と突っ込みたくなる。
そして占い師と出会い、名前に水があるから駄目なのだと平仮名のみやこに改名し、住まいにしていた安アパート住民の男子大学生に付き纏われて嫌になり、占い師のアシスタントとして住み込む。これも極端なことしてるなと突っ込みたい。
望月と佳那は豪遊するも、バブルの終わりで大損失を出した客に追われ、中でも山鼻に殺されかねないと奔走。美蘭も(佳那もたまに一緒に行っていたが)隠れてホストで豪遊しており、始末されていた。ここらで須藤も久々に登場し、佳那に望月が姉の住所を教えた旨を暴露。(姉の住所や、姉の職場である病院に脅迫をするヤクザを送り付けた)望月にあんたのせいで仲が良かった姉との関係が壊れたと訴える。(嫌がらせの後、母と佳那にしか住所を教えていなかったので佳那が漏らしたのではと怪しみ、以来引越ししたらしいが連絡を一切断つ。母とは連絡しているものの、佳那には電話番号を教えるなと事情を話しているらしい。姉はレントゲン技師と不倫をしていたことあり、潔癖な望月は不倫女が嫌いなので須藤に教えた。)
亀田という株のカリスマも失敗。その秘書的役割だった川村は望月を通してみやこと繋がっていたが、みやこは男に興味が持てず、川村は占い師と付き合っていた。亀田の失敗で尻拭いにまわる川村だったが、占い師も亀田に掛けていたので大損し、川村に酔った勢いもあり死んで償えと言い放つと、そうですね、と、その夜電車に轢かれて死んだ。
望月と佳那も山鼻に見つかり、ビルから飛び降り心中。
そんな3人の死を知ったみなこはショックを受けるが、間もなく母も亡くなり、実は800万の借金があり、勝手に保証人として兄と自分の名が使われていたことを知る。兄と折半して返済することになる。兄は兄で家庭があり、相当苦しかったはずだが葬式でその話をして以来、連絡はしない。みなこはバブル後の不景気で3年やそこらで首を切られることが増え、50を過ぎると事務職も採用自体難しくなり、スーパーの試食や居酒屋で働くも、コロナ禍で解雇。家賃も払えずアパートを追い出される。侘しくビスケットをかじって水道水を飲みながら、寒空の下、死んだはずの佳那の証券会社の頃の姿を見て、どうしてこうなったのか経緯を語り、佳那のすすめで、佳那の元に行くのだった。
一生輝かないダイヤモンドの水矢子と、
濁った真珠の佳那。
Posted by ブクログ
本当の意味で弾けてしまうとは…。
お金の魔力って本当に怖い。煌びやかで派手な遊び、美味しい食べ物、持ち上げてくる周囲の大人、見たことのない世界はそりゃあ楽しい。望月と佳那が根性出して頑張っていたのは虚構じゃないし、若くして死んでしまったのはやるせなかった。清廉潔白ではないけれど、あんな最期を迎える程のことをしたのかな、と思ってしまうよ。分相応ってなんか嫌な言葉でもある。須藤とか山鼻みたいな傲慢な奴が生き残るのかあ。時代に乗って駆け上がりすぎた分、お金=それ以外は無価値、という単純な価値観に浸かりすぎて、思考停止してしまって、札束に酔っていた。
水矢子に関しては、可哀想としか…最後に求めていた佳那の幻を見て誘われたのか、ベンチで夢から醒めるのか。借金ダメ絶対、と強く戒めてくれる本。面白かった。