【感想・ネタバレ】「社会的うつ病」の治し方―人間関係をどう見直すか―のレビュー

あらすじ

軽症なのに、なかなか治らない。怠けるつもりはないのに、動けない。服薬と休養だけでは回復しない「新しいタイプ」のうつ病への対応法を、精神科臨床医が、具体的かつ詳細に解説する。「自己愛」が発達する過程に着目し、これまで見落とされがちだった〈人間関係〉と〈活動〉の積極的効用を説く、まったく新しい治療論。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 心理学や脳科学の隆盛による「こころの視覚化」とポストモダンという「大きな物語の喪失」の時代背景が相まって、うつ病や統合失調症の症状が軽症化し、一方で操作主義が及ぼす実存的な悩みの増強による「軽症うつ、社会的うつ」が増加しているという考察。
 統合失調症の妄想も、宇宙の支配から隣人の盗聴へと「小さな物語」化しているという指摘が興味深い。

 ジェンダーが多様化した現代社会で、適切なバランスの自己愛の形成が家族や隣人、学校だけでは得られにくくなっているというのは実感としてある。コフートの発達理論=自己心理学、はとてもわかりやすく、今の時代を考える上でのポイントが整理されていた。

 「しつけ」と称する道徳や倫理観の押しつけと、学校に代表される画一化への要請が、周縁にいてズレを感じる人間にとって、結果的に依存先を奪い取っている可能性に大人の側が自覚的にならないと何も解決しないのではないか、と思った。
 ひきこもりの専門である筆者が、軽症うつと共通する精神病理を見出し処方箋を呈示する書であるが、この対処法は不登校の児にもそのまま応用可能だと感じた。しかし、デイケアや就労(就学)支援などのリソースは「不登校」では皆無と言っていい。それは、不登校が「病気」と認定されにくい原因の多様性を孕んでいることと、学校が職場よりも「帰属することを要請される縛りが強い」場所であることが関係あるのではないだろうか? やはり成人になってから表面化する問題ではあっても、根っこは発達過程の教育や育て方(親子関係)にある、そう強く感じさせてくれる書である。

 悲しいかな、親は子に対し、教師は生徒に対し「支配的」になるものなんだろうな。

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2013年11月30日

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