あらすじ
すべての物理法則が破綻する「特異点」は、ふつうの宇宙であれば必ず発生する。物理学者にとってショッキングな
この事実を証明したのが、ロジャー・ペンローズの「特異点定理」だった。
しかし彼は、一方ではこんな「仮説」も提唱したーー本当に厄介な「裸の特異点」は、宇宙検閲官がブラックホール
で覆い隠してくれている、だからきっと大丈夫だ!
はたしてこの仮説は、定理となりうるのか、それとも願望にすぎないのか? 物理学の存亡をかけた検証が始まった!
2020年ノーベル物理学賞の対象となった「特異点定理」を一般書で初めて解説し、一般相対性理論はみずから破綻する「宿命」であることを示しながら、宇宙検閲官仮説が本当に成立するか否かをスリリングに検証! そこからは、宇宙創成の謎解きにつながる数々の最先端の理論も「副産物」として生まれてくる! 映画『インターステラー』に描かれたブラックホールと特異点のリアルな姿がここにあります。
(本書の内容)
第1章 一般相対性理論とは
第2章 アインシュタイン方程式の解
第3章 特異点定理
第4章 宇宙検閲官仮説
第5章 特異点定理と宇宙検閲官仮説の副産物
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Posted by ブクログ
宇宙検閲官仮説~「裸の特異点」は隠されるか~
特異点とは、「あらゆる物理法則が破綻をきたしてしまう『無限大』を導く点です。物理的には『あってはならない』不適切な場所」。
その特異点がブラックホールの外に存在することを許すかどうかの議論から、一般相対性理論と量子力学とを統合する理論を待ち望む物理学の世界を紹介するブルーバックス。
本書では、次のような話を展開してきました。
・一般相対性理論にもとづくと、ブラックホールや宇宙膨脹の解が得られること。そしていづれの解も、特異性のある点を含んでいること。
・時空に特異点が存在してしまうのは一般的であることが「特異点定理」として示されていること(時空の対称性や、具体的な解に依存しない証明がされていること)。
・特異点がブラックホールの内部に隠されない「裸の特異点」が出現する可能性を却下するために「宇宙検閲官仮説」が提案されたが、特殊な場合では成立しないことが指摘されていること。
・特異点定理や宇宙検閲官仮説が、新しい研究の扉を開いてきたこと。
はたして、私達は時空特異点に対して、どう考えていけばよいのでしょうか。いろいろな意見があることでしょう。
・特異点の出現問題は、おそらくブラックホールの内部だけの問題だろうから、放置しておいてよい。
・特異点の出現は、理論の不完全さを示しているので、決して現れることがないように理論を修正すべきだ。
・特異点の出現は、次のステップの理論への足がかりとなるから歓迎すべきだ。
どの立場が正しいのかはわかりませんが、現状では「一般相対性理論を超える理論が欲しい」というのが研究者に共通する認識だと思います。
(237~238頁)