あらすじ
262文字の中に記述された現代宇宙論のエッセンス。「ゆらぎ」理論の研究などで知られる物理学者が「般若心経」を科学のまなざしで読み解く感動の宇宙講義。この宇宙に存在するすべてのものは、根源において同一であり、互いに浸透しあう相互依存の存在である。私たちの体もまた「自分以外」のもので構成されており、物質としての自分の体は、時々刻々と変化しているのに、なぜ、自分は自分であり続けられるのか――現代科学が明らかにする宇宙の様相を、「般若心経」を通じて考察する、著者のライフワークここに結実!
※こちらの作品は過去に他出版社より配信していた内容と同様となります。重複購入にはお気を付けください
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Posted by ブクログ
般若心経は、仏陀がみつけた四諦、八正道などの方法のすべて否定し、無化してしまった。つまり、仏陀は、原因と結果が結びついている因果と、私たちの行いによって生じる業というこの世の苦しみから逃れるためには、修行によって自分の心の在り方を変えようとしたのに対して、般若心経は、世界全体の見方を変えた。その出発点は宇宙の因果律という大原則を、すべてない、ないの『空』の概念によって夢幻化してしまった。
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知り合いに勧められて購入しましたが、不思議な感じがする本でした。私自身は(僧侶が)般若心経を解説する本は以前読んだことがあるのですが、なにか般若心経が量子物理学に通じるもの、宇宙物理学に通じるもの、という感じがしました。さらに般若心経を超えて、松尾芭蕉、宮沢賢治、(キリスト教の)聖書など、生きとし生けるものすべて宇宙の一部であり、自身が宇宙でもある、という世界観を解説されていました。仏教の本を読んでいるというよりは、宇宙の神秘を科学的に解説しようとしたら般若心経に行きついた、というほうが適当な印象かもしれません。繰り返しになりますが(良い意味で)不思議な気持ちになる本でした。
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タイトルのとおり、物理学者である佐治先生の視点で般若心経を読み解いていくといった内容でした。
佐治先生のものの見方をもっと知りたいなと思い手にした本なので、もちろん星5つです。
仏教の思想と最新科学のたくさんの共通点が語られておりとても興味深かったです。
所々に散りばめてある詩のせいか、語り口なのか、それとも般若心経のおかげなのかわかりませんが、ほんの少し心の中が温かくなる感じがしました。
また時々読み返したいです。
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私は、ちゃんとゆらげているだろうか?
「物理」と「般若心経」。
一見相容れないように思えるこの組み合わせに、自然と期待が募ります。
物理と仏教の接点は「宇宙」。
そう考えると、両者はぐっと近づいて見えてきました。
なかでも印象的だったのが、「ゆらぎ」についての言説。
——ゆらぎとは、半分予測できて、半分予測できないもの。
たしかに、私たちの日常もゆらいでいます。
でも、“確実”と“不確実”がちゃんと半分ずつ、保たれているだろうか?
「確実」に偏りすぎてはいないだろうか?
そんな問いを、ふと投げかけられたような気がしました。
もう少し、不確実な出会いを増やしてもいいのかもしれない。
まさか、物理が背中を押してくれるとは。
読書とは面白いものです
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科学とロマン。
有限の命が永遠の命に還るそのときまで、いかに生きるのか、それは心の持ち様次第、そして、宇宙そのもの、存在することとしないこと、それ自体も心の持ち様次第なのである。
人は考える。故に。
我々はどこから来てどこへいくのか、いつか、それを理解することはできるのでしょうか。
なんとも素晴らしいエッセイの読み物です。
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メモ
般若心経は、生老病死など思い通りにならない苦しみから解放されるために作られた。
仏陀は、修行によって自分の心のあり方を変えようとした。般若心経は、世界全体の見方を変えようとした。
空の概念により夢幻化。
半分予測できて半分予測できない未来。
生きていくために自然界が用意してくれた大事な性質。
人間は本来集団で生活する生き物。
現代では本来のスタイルからかけ離れたものになってる。
適齢期はない。
今更やってみるのさらをからにかえて今からやってみるにする。
満たされない今の境遇や気持ちを過去のせいにしていないか。本当に過去が未来を決めるのだろうか。頭に残ってる過去という記憶の曖昧性。
今頭に残ってる過去は、自分の脳が都合よく変えたもの。
Posted by ブクログ
東急の月刊フリーマガジンにエッセイの連載を持たれていて、そこから佐治先生の事を知りました。
生きていく事がふっと軽くなるお話だったり、宗教や難解な物理を身近な生活に起きかえて感じることが出来ます。
Posted by ブクログ
数日かけて、ゆっくりと再読。
物理学者が「般若心経」の世界観を読み解くと、こういう視点や物語が出てくるんだ、と興味深く読んだ。時間や空間、人間存在をとらえるスケールが大きい。
「私たちの体をつくっている物質の主成分は炭素です。これらの炭素は、例外なく、星が光り輝く過程で合成されたものです。そして、それらの炭素は、バクテリアや植物や動物をつくった後、❝縁あって❞私たちの体に取り込まれたのです」
「宇宙に❝はじまり❞があったとすれば、もとを辿れば、この世界のすべてはお互いにかかわり合っていて、独立存在ではないことになります」
決して文学的な比喩ではなくて、人間はまさに「宇宙のカケラ」であり、私という個人も、❝縁あって❞私の形になっている、私以外のものからできていることが、ストンとわかるような気がする。そしてそれは、深いやすらぎでもある。
Posted by ブクログ
深夜ラジオのように少しずつ読みたい本。
般若心経、美しさのルート2の法則、生命の神秘、音楽、過去は新しく未来は懐かしいこと、素粒子、まどみちお、金子みすゞ、宮沢賢治、など話は多岐にわたり、それらの知識のコンテクストを背景に半ば感覚的にまとめてある印象。
一番印象的だったのは、地球のカケラでできた月のおかげで四季と、一日24時間と、音楽が生まれたということ。
お月さんのおかげで自転速度がゆっくりになり、地球さんも大嵐になることなく、耳が発達し、音がコミュニケーション手段になり、言葉が生まれ、音楽が生まれた。
だから、ジェームズ・リプトンの言う通り、言葉は「もっとも貴重な天然資源」と考えてもいいだろう。