【感想・ネタバレ】日本のリーダー達へ 私の履歴書のレビュー

あらすじ

混迷の時代を迎える日本。日本社会の危機脱却のヒントがここに。
将来を担う日本のリーダー達、必読の一冊。

戦後最大の改革とも言われた国鉄改革。日本が世界に誇る東海道新幹線。そして新たな日本の未来を拓くリニア中央新幹線――。そこには日本の平和と発展のためにその生涯を捧げた稀代のリーダーの存在があった。

本書は、不可能と言われた「国鉄分割民営化」を実現し、28年間にわたりJR東海の代表取締役を務め、2022年5月25日に死去した筆者・葛西敬之氏の生涯を、「私の履歴書」(日本経済新聞朝刊連載)と「あすへの話題」(日本経済新聞夕刊連載)を軸に振り返る。

筆者は経営者でありながら国家公安委員会、教育再生会議、安保法制懇、宇宙政策委員会などで様々な公職も務めた。また常に時代の先を見通し、現在、顕在化している安全保障などの諸問題について、早くから警鐘を鳴らし、対処してきた。

こうした幅広い活動についても、生前に深い親交のあった杉田和博氏(元内閣官房副長官)、櫻井よしこ氏(ジャーナリスト)、屋山太郎氏(政治評論家)、松井孝典氏(千葉工業大学学長)による追悼文を通じて紹介。安倍晋三元総理の“盟友”としても知られる筆者のスケールの大きさと深みが、各界の知識人たちにより明かされる。

加えて、筆者のこれまでの発言をコラム形式で掲載。「真のリーダーに求められるものは何か」について、筆者の功績の裏側にある大局的かつ長期的な思考、そしてそれを実行するための戦略、行動様式まで浮き彫りにする。

既存の枠に捉われず、自らの信念に基づき行動しつづけた筆者から、日本のリーダー達へ贈る最後のメッセージ。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

現代の武士、といっても過言ではあるまい。

去年亡くなった葛西敬之氏は、誰もが不可能だと思っていた国鉄民営化を成し遂げた中心人物であり、その後はJR東海の社長として辣腕を振るい経営を軌道に乗せた。

東大法学部を卒業後、詳しい事情も知らずに国鉄に入社した葛西氏であったが、当時は国鉄は労働組合に乗っ取られた巨額の赤字を垂れ流すゾンビ企業であることをすぐに悟ることになる。

順調に出世して改革の機会をうかがい、仲間を集め国鉄民営化に突き進むのであるが、本書を一読して分かったのは、葛西氏の原動力となったのは読書の力だったということだ。

幼少の頃より漢文を誦んじ、大学在学中そして社会人になってもひたすら読書を続けた。

古今東西の名著、古典や歴史書、伝記、戦記物を中心に読み漁り、それを生かして労働組合と相対時する。

相手に知られぬよう政府や官僚の要職と会い、また国鉄内に仲間を作った。
矢継ぎ早に繰り出される改革案に労働組合に考え対応する隙を与えず、相手が疲弊していく様は戦記物を読んでいる印象だ。

古典読み尽くしたことによって培われた不動の精神がここまで大きな仕事をすることに驚きを禁じ得ないが、現代を生きるサラリーマンにとってブレない軸を作る上で参考になる生き様だと言えよう。

晩年、東京大阪間のリニア開通を企画立案し邁進するが志半ばで逝ってしまったのが大変残念である。

現在、川勝静岡県知事がリニア開通を阻止している状況である。
彼には愛読していると言われる毛沢東選書と並んで葛西敬之の著作集も本棚に置くことをおすすめしたい。

0
2023年07月12日

Posted by ブクログ

不思議な時代に生きている。正解者は増えているのに、本質的な解決や改善は起きない。情報の流れが膨大で早いと、お金持ちになることや、一時の名声で一喜一憂し、肩書きや資格というわかり易いものに安心を求める。しかし、それで何かが良くなっているのだろうか?
私たちは、”「人に課題を出してもらい、そのなかで良い答えを出して高い評価を得たい」という消極的、隷属的な考え方”に陥っていないだろうか?”「与えられた条件は所与のものであって、その中で最適解を求める」”ことばかり注目した結果、ハウツー本が増え、杓子定規なMBAなどの肩書きやコンサル領域にお金が集まり、持て囃される。しかしその結果、何かが大きく変わったのだろうか?VUCAの時代と言われているのに、本末転倒な気がしてならない。
もちろん改善されているケースも多いだろうが、何かを決定的に良く生まれ変わらせるためには、著者の言う、合理性と一貫性に加えた、大義と名分の心に裏打ちされた「学び、現実を直視して考え、決断し、行動し、成果を得るというサイクルを回転させる」ことが必要なのだろう。そのためには、狭い世界を超えた著者の言う「自由な思考」が必要であり、そして自由な思考を得るためには、歴史や哲学、国家観などより広い思考を育む教養と知恵が必要なのだろう。
大義のないお金やサービスはすぐに廃れる。国鉄の労働組合問題から民営化、新幹線の発展に大きく寄与したJRのリーダーが書き残した言葉には、重みがある。、現代の誰でも専門家になって、すぐに某NPのような媒体で何かを知恵を一瞬ひけらかして脚光を浴びることが可能である。彼がそのような姿を見せることが、思い浮かばない。きっとそのようなことはせずに、学びにきた人間のその後の大義と「学びと考えと行動」をフォローして、良き変化にこだわったのではないだろうか?
現代の功利主義と無私の精神を問う、リーダーのあり方とは?多くの人に考えてもらいたいテーマを残した人物の死を悼む。そして彼とJRの鉄道の叡智が、日本を超えて世界に伝わり広がって行くことを期待したい。

個人的には、安倍元首相に関して、考えの立場が違うので、そこだけは相入れなかったので、星4にしようかとも考えたが、この時代に必要としている骨太な行動をともなうリーダーシップに接する人が増えることを期待して、星5にしました。

0
2023年03月05日

Posted by ブクログ

遠い過去の出来事にしたくはない

国のために尽くした人がいる

国鉄がJRとなったときの戦い、一企業だけではなく国のために、特に国防に力を尽くした人がいることをはじめて知った。そして本から得るものが多いことも。

0
2025年03月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

民間企業人でも国家観を持ち、目先の利益だけで捉えきれないコアを持って経営していた方。米国中国戦略は日本人が呑気にしている間にいち早く地政学を捉えていたんだなと思わされる、、。
ロジックと拠り所を持って正しいと信じるもののために力強く戦う。労組の破壊を断行したのも国鉄分断化を決行したのも敵に潰されそうなのに、その戦術もストラテジーを感じる。私がその立場だったらどうするか?という彼が幼少期から鍛えてきた妄想力に支えられているのだろう。
本文と追悼文がよく噛み合っていて理解が深まった。
あと、とても博識。いろんな素養を身につけると底力がとんでもなくなるんだなと。

0
2023年04月27日

「ビジネス・経済」ランキング